アメリカ合衆国には、
間接税としての国税はない。
しかし州や一部の地方自治体ごとに、
間接税がある。
ニューヨーク州は8.48%、
テキサス州は8.14%、
カリフォルニア州は8.13%。
カリフォルニアの北側に隣接するのは、
オレゴン州。
ここは無税。
だから州境でオレゴン州側の店、
例えばコストコなど、大大繁盛。
隣の州の住民が、
州境を越えて買い物にやってくるからだ。
しかもこの間接税は、
売上税。
エンドユーザーの支払う金額に、
税がかけられる。
日本の消費税は、
製造業にも卸売業にも、
小売業、サービス業にも、
それぞれ売価に税が課される。
そのアメリカの州税に対して、
小売業店頭ではすべて、
本体価格のみ表示している。
これは業界挙げて。
レシートに、
買い物金額の総額が、
SUBTOTALと示される。
次に間接税が、
STATE TAX。
最後に、顧客が支払う総額が、
TOTALと示される。
ウォルマートがそれだし、
ホールフーズや、
トレーダー・ジョーがそれ。
クローガーやセーフウェイは、
TOTALの代わりに、
BALANCEと記す。
「残高」といった意味。
私はホールフーズのレシートが、
実にシンプルで好きだ。
ウォルマートも悪くない。
もちろんトレーダージョーも。
どこの店に行っても、
店頭は本体価格一本。
レシートにtaxが示され、
最後に支払総額が書かれている。
日経新聞『企業総合』欄に、
消費増税の際の表示対応の記事。
サミットは、
来年2月から早仕掛け。
これはいい。
全店頭の値札を原則的に、
「税抜き表示」に切り替える。
ただし特売品などの店頭販促物は、
税抜き・税込み総額併記を検討中。
カスミはすでに6月から、
フードスクエアつくばスタイル店などで、
新値札切り替え実験をスタート。
これもいい。
まずは、税抜き・税込み価格併記の、
数字の大きさをそろえて様子を見る。
フジは、
11月オープンの安城寺店など新店で、
実験的に税抜きと税込み価格を併記。
尾﨑英雄社長のコメント。
「新しい表示方法で
消費者の反応を確認したい」。
これもいい姿勢だ。
2004年に
総額表示が義務化された。
だから10年間、
顧客は総額に慣れてしまった。
だから実験をする。
この姿勢。
日本チェーンストア協会、
日本スーパーマーケット協会は、
税抜き表示を基本とする方針を打ち出した。
セブン&アイ・ホールディングスは、
税抜き価格を大きく、
税込み価格を小さく、
表記する方針。
イオンは、
税抜き価格・税込み併記だが、
どちらを大きく表記するかは検討中。
私はアメリカのように、
業界挙げて、
店頭は本体価格に統一するのが、
いちばんいいと思う。
そしてレシートで、
TAXを明記し、
支払トータル額を表示して、
勘定してもらう。
顧客がそれに慣れたら、
何の問題もない。
アメリカを旅行している我々でさえ、
1日でそれに慣れる。
「業界挙げて」ができるか。
それが問題だ。
さて、ワシントンDC滞在2日目。
朝8時前から、
結城義晴の第3回セミナー。
全員集まったら、いつも、
すぐに始める。
今回の視察の肝になるロジック。
業態からフォーマットへの分化、
STPマーケティング論と、
ポジショニング戦略を解説。
テキサス州ダラスでは、
ウォルマートを核に繰り広げられる競争。
ワシントンDCでは、
ウェグマンズとホールフーズの
際立ったポジショニング戦略。
伝統的スーパーマーケットはそのはざまで、
特徴をなくし、同質化する。
あるいは微差の競争に明け暮れる。
その実態をあらためて整理した。
3回の講義のご清聴を感謝。
研修会も後半戦に入る。
座学はこの日が最後。
2時間ほど一気に語った。
講義後の視察は、
2店目となるウェグマンズ。
ワシントンDCの東側フェアファックスにある。
コミュニティ型ショッピングセンターの核店舗。
左翼のマーケットカフェ。
昼時ということもあって、
大繁盛。
フードサービス部門で購入し、
カフェで食事する。
ウェグマンズや、
ホールフーズの集客力の鍵は、
ここにある。
対面の鮮魚売場。
アメリカのスーパーマーケットでは、
対面販売とセルフサービス販売の、
両方の売場を設けるのが常道。
コンシスタント・ロー・プライスで、
EDLPを掲げるウェグマンズ。
大きなプライスカードでお客を引きつける。
ショッピングセンターには、
コストコ、JCペニー、
ベストバイが入る。
日本でGMSと呼ばれた業態。
実質的には大衆安売り百貨店。
ディスカウント・デパートメントストア。
そのJCペニー。
米国チェーンストアランキング23位。
171億4600万ドル、昨対マイナス2.9%。
1105店を展開するも、
いまや田舎百貨店の感あり。
店内はガラガラ。
いるのはわずかな黒人客と店員ばかり。
GMSはシアーズもJCペニーも、
ウォルマートやターゲットに低価格ラインを、
メーシーズに高価格帯を、
ごっそりともっていかれた。
伝統型スーパーマーケットが、
ウォルマートとポジショニング戦略企業とに、
サンドイッチされているのと、
まったく同じ競争の構図。
情ないほどのJCペニー。
もはや復活の道はない、と見た。
一方、ダウンタウンにあるセーフウェイ。
青果売場の導入部は
いつも見事な花売場。
フードサービス部門。
ニューライフスタイルストアを標榜する同社、
その核部門。
ワイン売場も最重要部門。
都市型立地のセーフウェイは、
繁盛している。
郊外ショッピングセンター立地の店は、
からきし弱い。
つまりニューライフスタイルは、
都市型生活者のライフスタイルということになる。
ワシントンDC最後の視察店は
ホールフーズ。
ジョージワシントン大学そばの繁盛店。
14時過ぎだというのに、
レジはごらんの混雑。
カフェも満員。
店舗は地下1階に
スーパーマーケットの売場、
地上1階がフードサービス。
野菜の見事なプレゼンテーション。
プラスティック板を斜めに差し込み陳列する。
ナゲットマーケットをほうふつとさせる。
屋外でインタビュー。
ローレンさんは、
マーケティング・チームリーダー。
地域とのコミュニケーションを図り、
企画を立案・実現するのが彼女の仕事。
日差しから目を守るために、
サングラスをかけた彼女と握手。
いい店にいいアソシエート。
ホールフーズも都市型生活者の、
健康志向の顧客をターゲットにする。
だからホールフーズは、
大都市に出店して355店。
セーフウェイは全米に展開して、
1678店。
この展開方法は、
マスマーケティング発想だ。
そのために、
ニューライフスタイルストアの、
新フォーマット一点張りでの戦略には、
無理が来る。
ホールフーズは、
STPマーケティング発想。
アウトスタンディングなポジショニング戦略。
立地と戦略とが一致している。
現象の鍵を握るものは、
企業トップのマーケティング理解度である。
これが決定的な差異を生み出している。
(つづきます)
〈結城義晴〉