日経新聞の巻頭コラム『春秋』。
「そして『戦後』が終わり
『災後』が始まる――」。
政治学者・御厨貴氏の東日本大震災直後の言葉。
「戦後」を「災後」とひっかけた。
「この国難は新時代の出発点になる」
私もそう思う。
「巨大地震と原子力災害。
強烈な共通体験を持った日本は転換期を迎え、
新しい価値観の社会が生まれる」
つまりパラダイムが変わる。
「思えば3.11からまだ2年8カ月」。
「もっと激しく、もっと熱く
意見をたたかわせて
見える道もあるだろう」。
意見だけでなく、
行動も必須だ。
昨夜はシルク・ド・ソレイユの、
「O」を体験した。
ラスベガスのべラージオ・ホテル。
私は2度目だが、
ひどく感動した。
その感動がおさまらぬまま、
ホテルに戻って、
㈱マルト社長の安島浩さんの部屋で、
団員とともにワインを楽しんだ。
そして最後に、
あの3・11の話になった。
福島県いわき市のマルトは、
あの震災と津波を体験し、
その後の数々の苦難を自ら経験した。
不幸なこともあった。
辛いこともあった。
嬉しいこともまた、あった。
しかしそれが、
マルトの「新時代の出発点」。
みなで、そう、語り合った。
夜が明けて、
ホテル・モンテカルロのまえで、
全員写真。
その後、2時間のセミナー。
今日のまとめは、
アウトスタンディングなポジショニング戦略。
私の持論。
ご清聴、感謝。
すぐに視察研修へ。
まずはウォルマート・スーパーセンター。
左の入り口がMarket、
真ん中がHome&pharmacy、
右がOutdoor。
真ん中を入ると、
もう、一丁目一番地に、
クリスマス・プレゼンテーション。
そして店舗右翼にクリスマスコーナー。
ゴンドラ内ももう、
クリスマス本番並み。
そしてアウトドア売場も、
クリスマス全面展開。
早仕掛け・早仕舞い・際の勝負。
ウォルマートが群を抜く。
つまりアウトすタンディング。
そのアシスタントマネジャーにインタビュー。
イエールさん、
通訳は五十嵐ゆう子さん。
食品売場をまわりながら、
丁寧に説明してくれた。
冷凍食品売場でも話しながら移動。
「このアクションアレー(島陳列)は、
サンクスギビング週間向けです」。
アクションアレーには、
超お買い得品がずらり並ぶ。
ブライト・アイデアのコーナー。
派遣のマネキンさん。
ここには書かないが、
また新しい試みをしている。
それは極めて日本的なアクション。
いつもいつも現場問題の解決に、
挑戦するのがウォルマートだ。
店内ツアーをやってから、
ラスベガスの陽射しを浴びながら、
質疑応答。
Dataを見ながら、
実に細かいことまで答えてくれた。
イエールさんの言葉通り、
ウォルマート、ちょっと苦戦。
第3四半期の決算が発表され、
Daily商人舎に掲載・公開中。
「Walmart第3四半期 米国既存店▲0.3%」
この数値と合致する。
イエールさんに感謝。
そして全員写真。
ターゲットも、
ウォルマートに負けていない。
クリスマスの早仕掛けは、
洗練されている。
しかしアルバートソンは、
悲惨だ。
この店は最新フォーマット。
デリから鮮魚・精肉への対面売場。
リカーも最新の流行を取り入れたゾーニング。
もちろんpharmacyも完備。
しかし冷凍食品売場にも、
人っ子一人いない。
グロサリー売場にも、
ひんやりした空気しかない。
クリスマスの早仕掛けも、
目立たない。
スーパーバリューからサーベラスに、
またまた転売されたアルバートソン。
極めてオーソドックスだが、
特徴がない。
ポジショニングがない。
10年前のエクセレントカンパニーは、
どこに行くんだろう。
一方、スプラウツ・ファーマーズマーケット。
8月1日、ナスダックに上場したばかりで、
極めて元気がいい。
一丁目一番地。
レジのうしろはすぐにバルク売場。
いわゆる穀類の売場といってよい。
その奥の一帯が青果部門。
奥の壁面まで、
店舗中央を青果部門が占める。
そして壁面のボリューム陳列。
両サイドにベーカリー、
デリカテッセン、鮮魚・精肉、
そして乳製品、加工食品、
バイタミン、リカー。
おおきな大きな八百屋。
それを疑似ベジタリアンも含めた、
健康志向の顧客が支持をする。
大繁盛。
青果を中央に持ってくる異端児が、
オーソドックスの権化のアルバートソンよりも、
はるかに高い評価を受ける。
レース型競争から、
コンテスト型競争へ。
時代は完全に変わってしまった。
たった1店舗のグレイザーズ。
この店はラスベガスの地方紙が選ぶ賞を、
2010年、2011年、2013年と獲得している。
「ベスト・グロサーズ賞」。
オーナーのグレイザーさんは、
東海岸でスーパーマーケットを、
10数店経営していた。
それを売却して、
ラスベガスで悠々自適の生活を送っていた。
しかし、引退生活のつもりが、
いてもたってもいられず、
このグレーザーズをオープンさせた。
たった1店の会社だが、
店は小さくはない。
1800坪の店舗面積。
青果部門が入り口にある。
店は東海岸のウェグマンズを模している。
惣菜はニューヨーク・デリ。
日本的な個食惣菜も、
丁寧につくる。
孤軍奮闘ではないが、
個店奮闘。
今日もダブルのスーツを着たグレイザーさんの姿が、
店内で見受けられた。
そのイートイン・スペースには、
グランドピアノが設えられている。
このスーパーマーケット同士の闘いに、
ニューフェースが割って入った。
ダラー・ゼネラル・マーケット。
店数1万0506、年商160億ドル。
1兆6000万円の世界最大のダラーストア。
そのダラー・ゼネラルが、
1ドルストアにスーパーマーケットを併設した。
まだ実験段階だが、
これが成功したら、
スーパーマーケットには、
ドラッグストアに次ぐ強敵の出現となる。
精肉チームが、
ここでも調査。
ドライグロサリー・メンバーも調査。
この調査の成果は、
帰国してから花開くに違いない。
今日の視察研修の最後は、
アウトレットモール。
ラスベガス・プレミアム・アウトレット・ノース。
買い物もして、勉強もしたら、
もう暗くなっていた。
そのまま、ストリップに戻り、
あのロウリーズへ。
シェフ、ウェイトレス、
そしてマネジャーが迎えてくれた。
早速、ディナー。
ビールで乾杯のあと、
今夜のワインの説明・解説。
ナパのカベルネ・ソーヴィニヨン。
そしてロウリーズ名物のサラダ。
二人のウェイトレスが、
ドレッシングをかけながら、
和えてくれる。
これがおいしい。
そして出ました。
プライムリブのローストビーフ。
最高級のプライム・グレード、
そのリブ部位を、
ロースト(蒸し焼き)して食べる。
シェフ自らカットして、
提供してくれる。
すぐに食べ始めて、
写真を撮り忘れた。
食事をしながら、
全員が一言コメント。
全員が全員、
素晴らしい決意表明だった。
安島さんも、五十嵐さんも、
そして最後に私も語った。
食事の後は、
ホテルへ。
「素晴らしき日曜日」という黒澤映画があったが、
「素晴らしき金曜日」だった。
いったい何に、
感謝したらいいのだろう。
朝に希望、
昼に努力、
夕にも努力、
夜に感謝。
(つづきます)
〈結城義晴〉