2013年11月最後の日。
私は東京・池袋の立教大学。
校門にはボードが掲げられた。
「St.Paul’s Christmas」
銀杏の木は、黄金色の葉が、
はちきれんばかり。
本館の蔦は赤く染まった。
名物の中庭の銀杏は、
今年、少し葉が少ない。
それでも3号館の蔦には、
趣がある。
社会人大学院ビジネスデザイン研究科。
その結城ゼミ。
ゼミ生は修士論文に挑んでいる。
その締め切りがもう、
1カ月余りとなってきた。
まさに佳境。
みんな「尻に火がついた」。
それでも夕焼けの富士。
日本は美しい。
一方、アメリカはいま、
サンクスギビング週間。
昨日はブラック・フライデー。
「黒字の金曜日」。
1年で最大の書き入れ時。
明後日の月曜日が、
サイバー・マンデー。
インターネット販売が、
最高潮に達する日。
日経新聞の記事。
「米歳末安売り前倒し」。
私が言い続けているは、
「早仕掛け・早仕舞い・際の勝負」
「今年は暦の関係で商戦の期間が短く、
小売り各社が値引きの前倒しを急ぐ。
個人消費は粘り腰をみせているが、
中低所得者の消費動向には
先行き不安も漂う」
しかしウォルマートをはじめとして、
米国小売業の「早仕掛け」は、
今年始ったわけではない。
今年は暦の関係で、
第4木曜日が28日となった。
去年はそれが22日だった。
しかし昨年もウォルマートは、
「早仕掛け・早仕舞い」
私はそれを指摘した。
毎年毎年、早まる。
「キリがないじゃないか」
そのとおり。
それが競争。
この中でいかに、
自分らしさを出すか。
それが小売業のポジショニング戦略。
アメリカ商務省。
10月の小売売上高は前月比0.4%増。
7カ月連続増加。
全米小売業協会(NRF)の予測。
11~12月の小売売上高は
前年同期比3.9%増。
これは、
前年の伸び率をさらに3.5%上回って、
好感触。
ただし、それを引っ張るのは、
Eコマースだ。
調査会社のIHSグローバル・インサイトの予測。
11~12月のネット通販は、
前年同期比12.5~13.5%増。
だからブラック・フライデーも大切だが、
サイバー・マンデーも重要。
一つの方法に頼りたいという誘惑は、
これを退けねばならない。
さて今日の朝日新聞『天声人語』。
11月13日の朝日新聞『オピニオン欄』の再掲。
タイトルは「言葉も食べている」。
コラムニストのブルボン小林の主張。
41歳の小説家・俳人でもある。
小説家としては長嶋有の名で2002年、
『猛スピードで母は』によって、
第126回芥川賞受賞。
2007年には『夕子ちゃんの近道』で、
第1回大江健三郎賞受賞。
俳人としては長嶋肩甲の名で、
俳誌『恒信風』所属。
1998年から、ウェブサイトを立ち上げ。
「ブルボン小林のインテリ大作戦」。
多彩な才能を持ち、
自ら世界を切り開いてきた。
そのブルボン小林。
食材の偽装に関してコメント。
「以前、コーラと言われて渡された麦茶を
飲んで『うぇっ』と驚いた」
「事前にコーラという『言葉』を
与えられていたからだ」
ここから導き出した結論
「我々は物を食すとき、
言語も食べている」
偽装表示は、
だから許されない。
私は思う。
これは、食べるものだけに、
適用されることではない。
形のないものにも。
無形財、つまりサービスにも。
その「サービスの特性」は4つ。
第一に「無形性」。
形がない。
第二に「非分離性」。
生産と消費が同時に行われ、
分離することができない。
第三に「変動性」。
提供者、時間、場所によって変動する。
そして第四に「即時性」。
つまり「消滅性」。
だからサービスは在庫できない。
この無形財としてのサービスに関しても私たちは、
「言葉を消費している」
結城義晴著『メッセージ』より、
「言葉」
瞬間、言葉を失う。
言語シンドロームか。
会話イップスか。
言いたいことが言えない。
私にもある。
だからこれは許そう。
しかし、商売に言葉は欠かせない。
仕事に専門用語は不可欠だ。
取り引き・取り組みに会話の手はぬけない。
難しいけれど、それでしか表わせない深い意味。
そのまま英語だが、新しい魅力的な概念を込めた用語。
記号だけれど、何度も使うに便利なもの。
商品という単語。
売場という文章。
店という思想。
半面、疲れ果てた古い言葉。
心のこもらない接客七大用語。
口先だけのマニュアル常套句。
独り善がりのひけらかし修飾語。
売り言葉に買い言葉。
体系のない借りもののカタカナ羅列語。
はじめに言葉あり
言葉は神とともにあり
言葉はすなわち神なりき(ヨハネ福音書)
言葉で仕事し、
言葉で思索し、
言葉で成長する。
新人諸君、先輩諸氏。
社長も部長も店長も。
モノ言わぬ者は、去れ。
評論家も、コンサルタントも。
識者も、学者も、編集者も。
考えぬ者は滅びることを知れ。
堤清二さんも、
言葉の人だった。
私ももちろん、
言葉の人でありたい。
みなさん、よい週末を。
〈結城義晴〉