商人舎刊『マス★カスタマイゼ―ション』。
第2刷が届きました。
11月22日第1刷発行、
12月10日第2刷発行。
故杉山昭次郎先生も、
お喜びのことと思います。
この本は遺稿でもあり、
本来、非売品のつもりで制作しました。
従って、まことに申し訳ないのですが、
書店・アマゾンなどには出していません。
商人舎に直接、
お申し込みください。
今年11月、
お亡くなりになった堤清二さん。
セゾングループ創始者。
堤さんも昭和2年生まれ。
杉山先生と同年。
その著『変革の透視図』は、
1979年に刊行されていますが、
杉山先生の「現代化」と、
相通じるものがあります。
これも不思議なことです。
さて、訃報です。
今年はなぜか多い。
三好正也さん。85歳。
元経団連事務総長、
その後、エフエムジャパン会長兼社長。
同社は現在のJ-WAVE。
私はPTB有識者懇談会メンバーとして、
座長の三好先生と2005年からご一緒した。
経団連初公募のプロパー職員第1期生。
だからドラッカー翻訳の上田惇生先生の先輩。
1954年、経団連に入り、
1988~97年、事務総長。
細川内閣成立時には、
経団連の献金斡旋廃止を主導した。
謹んでご冥福を祈ります。
さて日経新聞の夕刊。
「紙離れ、日米で生産減」の記事。
多分、アメリカのRISIの調査。
国別の紙・板紙の生産量順位。
2012年は第1位中国で、
第2位アメリカ、
日本は第3位。
2000年には、
アメリカ1位、日本2位だった。
2000年と2012年の生産量比較。
中国は3090万トンから1億トンに3倍増。
アメリカは1割強減少の約7400万トン。
そして日本は2000年から2割減の2600万トン。
記事は「紙離れが顕著」と締めくくる。
理由は「電子媒体向け広告の増加などが影響」。
商人舎は、
『マス★カスタマイゼ―ション』など、
紙も使うし、webもつくる。
さてさて、
『私の履歴書』のコトラー先生。
昨日一昨日は、
ピーター・ドラッカー先生との思い出。
1989年のこと。
突然、ドイツ語なまりの英語の電話を受ける。
「ピーター・ドラッカーです」
「仰天し、必死に平静を保とうした。
彼と知り合う以前から
その洞察力に富む著作を熟読し、
尊敬の念を抱いていたからだ」
コトラーは、述懐する。
「米大統領から電話をもらうより
遥かにうれしかった」
翌日、コトラーは、
朝一番の飛行機に飛び乗る。
カリフォルニアのクレアモントへ。
初対面の席で話し合われたこと。
それは「NPO」についてだった。
「Nonprofit Organization」。
非営利組織。
ドラッカーの造語。
その後、1990年に設立されるのが、
「非営利組織のための
ピーター・F・ドラッカー財団」
コトラーはアドバイザリー・ボードとして、
招聘される。
ドラッカーは、
「自分の名前を冠した財団の
設立を嫌がった」。
しかし、
「いずれ彼の名前を外すことを条件に譲歩」、
現在の名称は、
「リーダー・トゥ・リーダー研究所」。
これをきっかけに、
二人の交流は深まっていく。
コトラーのドラッカー礼賛がつづく。
「ピーターは
近代的マネジメントの父として
知られているだけなく、
マーケティングの分野でも先駆者だった」
「40年以上も前から経営者に対し、
経営の中心は顧客であること、
そして企業における価値創造の重要性を
説いていた」
「私たち、マーケティング学者を
顧客中心主義に
目覚めさせてくれた功労者を
一人挙げるとすれば、
それは彼だろう」
企業に投げかける4つの質問。
ドラッカーお得意のフレーズ。
1「あなたの会社の本業は何か」
2「顧客は誰か」
3「顧客にとっての価値は」
4「本業はどうあるべきか」
「私自身もコンサルティングをした企業には
同じように問いかけた」
この後にも、
ドラッカーの著作や発言への賛辞が続く。
マーケティング学者はもしかしたら、
お世辞のチャンピオンかと思うくらい。
例えば、最も有名な言葉。
「企業の目的は顧客の創造である」。
当時の大方の経営者の考え方は、
「企業の目的は利益の創造」。
ドラッカーは真っ向から対立した。
「ピーターにとって経営者の考えは空論」で、
「どうやって利益を創るかという
大切な部分が抜け落ちていた」
それがドラッカーの「顧客創造」。
「顧客創造のためには
他社よりも優れた価値を提供し、
顧客を満足させるしかない。
唯一無二の利益の源泉は顧客なのだ」
「企業の基本機能は
イノベーションとマーケティングの
2つしかない。
それ以外はコストだ」
これも有名な言葉。
「彼は企業のあらゆる機能が
重要であることを重々承知の上で
2つの機能を選んだ」
この選択と集中が、
ドラッカー先生の真骨頂でもある。
マーケティングとセールスの違い。
「マーケティングの目的は
セールスの必要をなくすことだ」
経営者を唖然とさせた。
「顧客ニーズを深く理解し、
それを完璧に満たす製品を生み出す」
「ただ製品をつくり、
闇雲に売ることや
後講釈で商品について語ろうとすることを
非難したのだった」
ここで使われた「製品」は、
英語では「Product」。
「企業が創り出すもの」といったニュアンスで、
商品とサービスとを含む。
つまり有形財と無形財の両方を指す。
さらにコトラーは言う。
「私は目的、目標、業績評価の方法を
設定することの重要性も彼から学び、
自分の仕事にも生かしている」
これは「目標管理と自己管理」の手法。
「彼と会うたびに、
歴史についての圧倒的な知識と
未来に対する深い洞察に
刺激を受けた」
同じユダヤ人としての共感も、
少なからずあったに違いない。
最後に、
「ピーターはまさに
ルネサンス的な万能型教養人で、
私が出会った中で
最もすばらしい人物の一人だ」
まったく同感。
コトラー先生はこういうが、
ドラッカーは『ポスト資本主義社会』で書く。
「夕食に招く客には教養のある人がよい。
だが、砂漠では教養のある人はいらない。
何かのやり方を知っている人がよい」
それがナレッジワーカー。
私はこの考え方に感動して、
「知識商人」という概念をつくった。
コトラーとドラッカーの交流。
いいなあ、
うらやましいなあ。
それが率直な感想。
しかしコトラー先生に引用された
ドラッカー先生の選りすぐりの言葉。
僭越ながら、ほとんどすべて、
私の著書『店ドラ』で
使わせてもらったフレーズと同じだった。
ありがとうございました。
〈結城義晴〉