昨日の川野幸夫さんのコメントを、
商人舎magazineに掲載。
日本スーパーマーケット協会会長、
㈱ヤオコー会長。
ページは週刊特別企画。
タイトルは、
「川野幸夫の2013年総括」
写真が面白かったので再掲。
こんな感じ。
川野さんのマスコミ人気がうかがわれる。
さて年の瀬の12月26日、
貴重なものが終わる。
日経新聞のコラム『チェンジアップ』。
元西鉄ライオンズの侍豊田泰光が、
1998年の夕刊から始めて、
その後、朝刊に掲載し、
足かけ16年。
辛口評論の最終回。
私は〈博多生まれの横浜育ち〉を、
看板の一つにしているので、
当然ながら西鉄ライオンズ・フリーク。
ということはアンチ巨人。
すみません。
豊田は最終回の冒頭でかます。
「巨人軍は不滅かもしれないが、
プロ野球界は永遠ではない」
「まだ親会社の宣伝道具の面があり、
景気次第でいいようにされる恐れがある」
「選手を操り人形のように
サインと懲罰交代で縛る監督、
不自由にあらがいもせず、
バントを決めてハイタッチする選手たち。
この野球のどこが面白いのか」
メジャーリーグの球場の雰囲気。
「騒がず、選手の一投一打に集中するスタンド、
土のにおいがする天然芝のグラウンド……」
「海を渡ったイチローが、
子どものように跳ね回っているのも
わかる気がする」
そして辛口。
「一番の老舗である巨人が
そうした本式の球場を持っていないところに、
日本球界の貧しさがある」
「私は野球しか知らないから、
なんでも野球を通してみる」
結城義晴が小売サービス業を通して、
世界や社会を見続けているのと同じ。
「このごろの食品偽装問題をみても
『とにかく売れればいい』という風潮が
『とにかく勝ちゃいい』という野球と重なってみえる」
そうそう。
「本来は個人の良心に委ねられるものだ。
食品の問題も最後は
人と人の信頼関係になるはずだ」
「形はどうあれ、
手っ取り早く打ちたい、
勝ちたいという軽さは
『中身より売り文句で勝負』という
一部のレストランと同じ」
「こらえ性がなくなり、
楽な道に走る社会が
映し出されている」
手っ取り早く真似る。
食品業界にも蔓延しているが、
豊田泰光の言うことは、
いちいちもっともだ。
16年間、ご苦労様でした。
78歳の元野球職人は、
コラムニストとしても一流のプロだった。
一方、『ほぼ日』の糸井重里。
巻頭言「今日のダーリン」。
「やりなおせると思うなよ」
脅迫染みた台詞をテーマにする。
「なかなか緊張感のあるセリフだ。
劇的な状況を表現するには、
実にいいことばだ」
そしてまずは肯定。
「実際に、
そういう場面を経験した人は
いくらでもいる。
また、それくらいの覚悟で
やらなきゃできないことも、
生きている間には、
何度もある」
こう言っておいて、今度は否定。
「このごろ思うのだ。
『やりなおせると思うなよ』
というような状況が、
そんなにしょっちゅうあっては
困るだろうよ」
そうそう。
「人間って、そういうふうには
できていないのだ」
「起きて、食って、働いて、遊んで、寝る」
そんなシンプルな生活の繰り返しが、
私たちの暮らしのベースには、ある。
そしてときに、
「厳しい決意の状況に立たされる」
私たちが生きるリアリティは、
ドラマとは全く違う。
「なんどでもやりなおしている」
それが人生だと糸井さんは言う。。
「明日死ぬかのように
生きなさい。
永遠に生きるかのように
学びなさい」
名言。
しかし、
「とても比喩的なことばであって、
それこそ、そんなことができるように
人間はできてない」
「ぼくらが実用に使うには無理がある」
糸井さんに賛成。
たとえて言えば、
「F1のクルマで公道をぶっとばすような」
正月の箱根駅伝、
ラグビー大学選手権、
その後の高校ラグビーや高校サッカー。
この前、終った高校駅伝。
一生に一度、
1年に一度の晴れ舞台。
この時は、
「やりなおせると思うなよ」で、
いいかもしれない。
しかし日常的には、
「社会は、
失敗はありうるという前提で
設計されていくし、
実に、人間はいつでも
失敗をするはずの生きものだ」
そうなんだ。
失敗を恐れることはない。
失敗をとがめるばかりでもいけない。
「毎日のように、何度でも
トライできると思ったほうが、
のびのびと、じぶんのなかの
新しい能力を発見できる」
私もそう思う。
特に商売は、
そう言うたぐいの仕事だ。
だからみなで、そう言い合いつつ、
安心して仕事するのがいい。
いつもいつも脅しのように、
最高レベルを求め続けるのは、
毎日の商売にはふさわしくはない。
さて、今日のフィリップ・コトラー。
日経新聞最終面の『私の履歴書』。
今日のタイトルは、
「コンサルティング」。
それもほんものの。
バンク・オブ・アメリカ、
フォード、ゼネラル・モーターズ、
ユニ・リーバ、アップル、IBMなどなど、
超一流企業ばかり。
「私が経験した最高の取締役会は、
1990年前後のIBM」
社長のジョン・エイカーズの相談。
「どうやって顧客中心主義を
植え付けることができるのか」
そこでコトラー先生は、
13人の取締役が参加する
2日間の会議を傍聴。
会議は3部構成。
第1部は主要顧客3社の幹部を招き、
IBMへの満足度を聞いた。
第2部は社内の支店長から
本社の指示をどう思っているかを聞いた。
そして第3部はIBMの社員を
主要な競合相手に見立てて、
どのような戦略でIBMを攻撃してくるのかを
語らせた。
第1部、第2部は、
現場の実情がトップまで伝わってこないことが
よくわかった。
「とりわけすばらしかったのが第3部だ」
「競合相手を急成長中の
サン・マイクロシステムズとした」
「サンからIBMへ転職してきた社員に
サンのスコット・G・マクネリーCEOの役をさせた」
「この疑似マクネリーはなかなかの役者で
取締役会の面々に厳しいまなざしを向け、
開口一番、こう言い放った」
「サンの目標はIBMを潰すことだ!」
疑似CEOはIBMの弱みを畳み掛ける。
「コンピューターの未来は
ネットワークにあるにもかかわらず、
IBMは製品を改良することしか考えていない」
取締役会メンバーも反論。
「IBMに最大の利益をもたらすのは
ネットワークではなく製品だ」。
「疑似とはいえ、真剣勝負だった」。
ロール・プレイイングと呼ばれるが、
これはコンサルティング手法として、
教育手法として、
実に有効だ。
数年後、IBMは、
ルイス・ガースナーが新CEOとなって、
「IBMの未来はネットワークにある」と宣言。
疑似CEOの指摘の通りとなった。
コトラーはゼネラル・モーターズが、
IBMと反対だったと述懐する。
「ロス・ペローが取締役会に加わり、
経営陣を厳しく叱責した。
モノを言おうものなら辞任を求めた」
このペローのやり方を、
「巨像に踊り方を教えること」と表現。
「謙虚に聞く耳を持たない組織は
衰退する」
そして最後に、一言。
「IBMの3つの議論は
今でも立派に通用するはずだ」
しかしコトラー先生のコンサルティングは、
ドラッカー組織マネジメントそのものだ。
マーケティング・マネジメントを、
コトラーが標榜するのもうなづける。
コンサルタントこそ、
マネジメントに精通しなければならないことを、
如実に示している。
〈結城義晴〉