いつもこの時期に思い出す句。
去年(こぞ)今年貫く棒の如きもの
〈高浜虚子〉
虚子につられて、正岡子規。
子規は虚子の師匠。
天は晴れ地は湿ふや鍬始(くわはじめ)
〈正岡子規〉
「湿ふ」は現代語では「うるおう」。
「鍬始」は、新年の仕事初めのひとつ。
農民が田畑に出て、初めて鍬を入れる行事。
昨今は元旦から初荷、初売りが盛んだが、
今日4日は商業にとっても、
本来、仕事始めの日。
今日の一日の新鮮さを忘れずに、
一年を貫きたい。
コンビニは1年365日、
24時間で店を開く。
私の自宅のそばのセブン-イレブン。
そしてローソン。
24時間営業のコンビニであっても、
年の初めの「鍬始」はある。
年の初めの区切りはある。
30年ほど前、
アメリカ・ロサンゼルスで、
一昼夜の取材を敢行し、
レポートを書いた。
タイトルは、
「ラルフの24時間」。
大好評の36ページ・ルポだった。
今は全米1位クローガーの傘下に入っているが、
当時はカリフォルニアでトップを争う企業。
それがスーパーマーケットのラルフ。
その最大の繁盛店。
サウス・バーモントの店。
店舗の裏のモーテルに部屋をとり、
24時間ウォッチングをした。
当時、このエリアは物騒な地区で、
外国人は特に夜には、
絶対に歩いてはいけないと警告されていた。
しかし私たちが予約した部屋は、
ドアの鍵が壊れていた。
仕方がないので、
部屋には荷物を置いて、
朝までずっと店にいた。
お陰でナイトクルーなどとも、
極めて親しくなった。
800坪ほどの店で、
年間70億円も売っていた。
夜の11時くらいから、
トラックで商品が搬入されてくる。
まず大量のグロサリー、
それからデアリー、
深夜過ぎると生鮮食品。
明け方にパン。
ナイトクルーが必死のスピードで、
売場の清掃をし、
見事に陳列替えをしていく。
そして朝7時。
売場は完成。
24時間営業の店舗でも、
「100%の品揃え」の、
時間帯が決まっていた。
それが午前7時。
完全な陳列量は、
1日の販売量とほぼ一致していて、
日中は一切の補充作業をしない。
だからデイタイムはそれぞれの部門に、
ひとりずつくらいの人員だった。
昼間の接客はチェックスタンド・スタッフと、
ストア・ディレクター。
当時の私にはこれこそが、
極限まで生産性を高める方法だと感じられた。
そして30年前は、
それが高い成果を上げた。
印象的なことは、
24時間営業店舗にあった、
「開店時100%品揃え」の基準。
どんな店にも、
どんな仕事にも、
もちろん人生にも、
連綿と続くその中に、
大切な区切りが必ずある。
だから、
どんな店も、
どんな仕事も、
どんな人も、
その区切りを大切にして、
一方で、
「貫く棒の如きもの」を、
持っている必要がある。
正月4日に思い出したこと。
去年今年貫く棒の如きもの
〈結城義晴〉