日経新聞『私の履歴書』は、
歌舞伎の市川猿翁。
昨年12月のフィリップ・コトラー、
新年1月の指揮者の小澤征爾。
そして今月がスーパー歌舞伎の猿翁。
第7回目の今日は、
「大学生活」。
猿翁は歌舞伎界では珍しく、
大学を卒業している。
慶応義塾大学文学部国文学科。
キャンパスライフを満喫。
しかし大学へ行き、
テレビを収録し、
舞台に出て、
映画を朝に撮る。
そんな「4本立ての生活」だった。
そして卒業論文のテーマは、
「演劇史における近松の位置と
その世話物作品の変遷」。
この中で良い新作の条件を三つあげる。
(1)人間性(不変なるもの)の描写の的確。
(2)人間をとりまく時代的環境の描写の的確。
(3)そしてこの両者の葛藤の描写の的確。
「これはやがて時が過つと立派な古典になる」
そして結論づける。
「守ることのみが伝統ではないのである。
守ると共に常に
新しいものを生み出さなければならない」
猿翁は、「温故知新」を言っている。
そしてInnovationを語ってもいる。
近松文学を研究して、
Innovationに至る。
おそらく、まとめて「書く」行為は、
初めてだったに違いない。
その処女作に、
すべてが込められている。
コトラーの最初の著書は、
『マーケティング・マネジメント』で、
それにすべてが凝縮されていた。
コトラーの時にも思ったが、
最初の作品は個人にとって、
極めて重大な意味を持つ。
恐ろしいほどだ。
さて、ちょっとした海外旅行?
そんな感じになってしまった東北視察。
その4日目は、
宮城県石巻地区。
津波で沿岸部はほとんど荒廃してしまった。
旧市街地でも、
閉店している店が多い。
壊れた建物もそのままだ。
こちらのショッピングセンターも、
撤去されずに残されたままだ。
それでも復興の兆しはある。
大打撃を受けた日本製紙の工場は、
いまやモクモクと煙を吐く。
石ノ森萬画館も復旧された。
でもこの冬一番の冷え込みで、
風が沁みる。
何事もなかったように、
空は澄み、雲が行く。
早朝のヨークベニマル中浦店。
ここまで、津波が押し寄せた。
今は改装がなされて、
何事もなかったように、甦る。
そして目的地は、
ヨークベニマル湊鹿妻店。
大津波に襲われ壊滅的な被害を受けた。
付近の住民500人は、
この店の屋上駐車場に避難し、
数日にわたって、救援を待った。
そのときの店長が物江信弘さん。
私は震災後の4月6日に訪れ、
物江店長の活躍をブログに書いた。
二人でそのブログを見ながら、
語り合った。
物江さんとの久しぶりの対面は、
うれしかった。
物江さんは新しい辞令を貰ったばかり。
仙北ゾーンマネジャー。
15店舗の統括。
もちろん湊鹿妻店も担当する。
私自身のことのようにうれしかった。
石巻ではもう一つ、
イオンモール石巻店を取材。
当時、仙台で勤務し、
震災対応をした鈴木茂伸さん。
現在はイオン本社の、
広報担当シニアマネジャー。
鈴木さんは石巻店の状況だけでなく、
宮城県や岩手県全体の被災について、
詳細に語ってくれた。
4日間の東北の取材旅行。
考えさせられることばかりだった。
自分の目で見る、
自分の耳で聞く。
ピーター・ドラッカーのポストモダンの七つの心得、
その第1条。
この大切さを、
あらためてしみじみと実感した。
そのすべてを、
月刊『商人舎』3月号で報告する。
Innovationが見えてくるはずだ。
ご期待いただきたい。
〈結城義晴〉