満開の桜。
今年はなぜか
あっけない。
東京・横浜では、
もうハラハラと、
散り始めた。
第86回選抜高校野球も、
いつの間にか決勝。
京都の龍谷大学付属平安高校と、
大阪の履正社高校。
勝ち残ったチームやその地元では、
熱狂しているのだろうし、
そのことに水を差すつもりはまったくないが、
まあ関西対決で、
関東では今一歩、
盛り上がらない気がする。
しかしこれまた、
平安がすんなりと優勝。
おめでとう。
「おめでとう」といえば、
昨日はイオンの入社式を取材。
ほかにも日本中に、
新入社員が誕生した。
みんな、みんな、
おめでとう。
海浜幕張の駅前には、
案内係が立っていた。
ご苦労様。
会場は幕張メッセ。
フーデックスなどを開催する、
日本最大級の展示会場。
すぐそばに、
イオン本社のイオンタワーと、
イオンモール幕張新都心がある。
受付入り口そばには、
記念写真を撮るグループ。
イオンの入社式のタイトルは、
「Meet The New AEON People 2014」。
今年の採用は国内外で、
過去最高の4500名。
そのうち、
グループ企業55社の新入社員2600名が
幕張メッセ8ホールに参集した。
テレビ中継でアジア各国をつなぎ、
現地採用の680名も参加。
マレーシア、インドネシア、ベトナム、
カンボジア、ミャンマー、ラオス、
フィリピン、インド、中国など10カ国の
フレッシュマン・先輩社員たちが、
イベントに参加した。
式典に先立ち、
全員で挨拶の練習。
全員起立。
「お願いします」
「ありがとうございました」
そして、礼。
着席。
私は新妻健治さんと握手。
イオングループ労働組合連合会会長。
あとで、スピーチをする。
会式の前に、
いろいろな資料の説明。
まず、夢ノート。
サッカーの本田圭佑がプロデュースしたノート。
本田の映像が流れる。
それから、
「レッツ・ドゥ・イオン」の練習。
司会者が「Let’s!」とリードする。
全員が「Do AEON!」と続く。
出来栄えは、
まあ、まあ。
二度、三度練習すると、
次第に上手になった。
それから式典。
冒頭に、二人の女性トップが、
テレビを通して、
ウェルカムメッセージ。
メリー・チューさん。
イオンマレーシア社長。
中国からは羽生有希さん。
中国事業最高経営責任者。
羽生さんの中国語、
見事。
そして社員を代表して、
先ほどの新妻健治さん。
タイトルは、
「これからのイオンを支えるイオンPeopleへ」
新妻さんは先輩社員として、
三つの視点からメッセージを贈った。
第1に、時代認識の上に立って、
あるべき未来を創造する志を
持ち続けてほしい。
第2に、イオンの原点である商いの本質を、
自ら追求し、体現してほしい。
そして第3に、
自分らしさを持ち続けてほしい。
新妻さん自身は、
「素直さとこだわり」を持ち続けている、
と自分の意見を言った。
へんな言い方だが、
立派過ぎるくらいのメッセージだった。
そして最後は岡田元也さん。
イオン㈱グループCEO兼社長。
実にわかりやすく、
イオンという小売りグループの本質と、
将来のビジョンを語った。
テーマは、
「新入社員に期待する」
「若いイオン・ピープルを迎えて、
うれしく、何より頼もしく思います。
イオンは、
アジアナンバー1のリテーラーを目指して、
発展している途上にあります。
その発展のなかでも、
常にお客様第一を信じている
人間の集まりであります」
1時間ほどの講義。
この後の記者会見の質疑とともに、
一言一句もらさず、
商人舎Magazineの週刊特別企画に、
掲載予定。
それくらい価値のあるスピーチだった。
最後に日本とアジアの新入社員たちから、
実に率直な質問が寄せられ、
それに岡田さんが答えた。
一番最後は、
マックスバリュ東海の新入社員の質問。
「イオンPeopleとして
最優先すべきことは何ですか」
岡田さんは、
じっと考えながら、
たどたどしくも、
ゆっくりと言った。
「最優先すべきこととは、
厳しい質問ですが・・・・、
どれが一番かと考えると・・・・
私たちは何をするにしても、
お客様が私たちを信じて、
私たちを信用して買ってくださる。
それを裏切ってはならない・・・・・。
だから最も重要なことを、
ひとつだけ上げるとすると
正直であることです。
少なくとも正直であることは、
忘れないでほしい」
私も正直に言おう。
この言葉が発せられるまでのわずかの間、
何かこみ上げるものがあって、
最後の一言の瞬間。
私は泣いていた。
無性にうれしかった。
日本最大の小売業のトップが、
淡々と、「正直であれ」と語る。
「それを忘れないでほしい」と説く。
私はうれしかった。
そして全員が、
「ありがとうございました」
今度はぴたりと揃っていた。
岡田さんは壇から降りて、
全員が唱和する「Let’s Do AEON!」を、
聞いていた。
それから記者会見。
4月1日の入社式後の記者会見。
質問は消費増税に関するものばかりだったが、
それに丁寧に答えていた。
私は「正直であろう」と説く経営者を、
見ていた。
今日の新入社員たちは、
一生、その言葉を、
忘れないだろうと思った。
〈結城義晴〉