ゼネラル・モーターズのリコール問題。
GMは小型車コバルトなどで、
エアバッグ不作動の欠陥の事実を、
なんと10年以上も放置。
調査ではこの間、
少なくとも13人が事故死している。
GMは今年2月に、
やっと無償回収・修理を始めたが、
この放置問題に対して、
アメリカ運輸省の高速道路交通安全局が、
3500万ドルの民事制裁金を課した。
100円で換算すると35億円。
これは一度に課された制裁金としては、
過去最高。
2010年の大規模リコールでは、
日本のトヨタが都合3回、
合計約6600万ドルの制裁金を課された。
「企業の目的は顧客の創造である」
ピーター・ドラッカー。
「店は客のためにあり、
店員とともに栄える」
倉本長治。
リコール隠しは、
従業員の良心を痛める。
すなわち、
エンプロイー・サティスファクションからは、
ほど遠い行為だ。
もちろん、
カスタマー・サティスファクションとは、
正反対の行為である。
大いに制裁を受けるべきだ。
さて、ラスベガス滞在、
3日目の金曜日の朝。
フラミンゴホテル3階には、
会議室が並ぶ。
その一部屋RINOⅡで、
結城義晴のセミナー。
8時半から11時半までの3時間、
朝から集中して講義する。
この日のテーマは経営戦略。
私の持論であるフォーマットとポジショニング戦略、
コモディティとノンコモディティの商品整理を、
わかりやすく語る。
従来のチェーンストア論では整理できない
アメリカの現象を、いかに、紐解くか。
チェーンストアの現代化に必要な考え方を
丁寧に解説した。
その後、専用バスで視察。
まずウィンコ・フード。
ファサードに掲げられているのは、
「従業員が所有する会社です」
こんな小売業には、
リコール隠しなど起こらない。
だからウィンコは、
ウォルマートの100分の1の規模ながら、
ウォルマート以上に低価格を出して、
大健闘。
アメリカのスーパーマーケット業態の、
フォーマット化現象の典型企業の一つ。
さらにスプラウツ・ファーマーズ・マーケット。
昨年8月に株式上場し、
意気上がる同社が、
今年4月30日にオープンさせたばかりの新店。
ずいぶんと営業臭くなったが、
それだけ商売の面では勉強になる。
隣はリカーショップのトータルワイン。
すばらしい!
イオン・リカーの諸君は、
もう眼をつけているのだろうか。
二つの注目店舗、
近々に、商人舎magazineの、
Weekly商人舎・週刊特別企画で報告しよう。
昼には、商業施設がズラリ並ぶサンセット地区へ。
昼食はその中のIN-N-OUTバーガー。
45個の注文を淡々とこなす。
実に美しいオペレーション。
炭水化物ダイエット続行中の私は、
裏メニューのプロテインバーガーを注文。
ハンバーグをバンズの代わりに
レタスで巻いたヘルシーバーガー。
これがジューシーで美味しい。
この集積の中心は、
ギャラリア・アット・サンセット。
超大型のショッピングセンター。
いわゆるスーパーリージョナルセンター。
メイシーズ、JCペニー、
そしてコールズとディラードが、
核店舗として入る。
これにノードストロームでも揃えば、
全米百貨店総出演ということになる。
ファサードの前で恒例の記念写真。
いつものようにポーズを指揮。
完璧なポージング。
ラスベガスは今日、
なんと華氏99度。
摂氏37度。
体温より高い。
バスを待つのも日陰を選ぶほど。
そしてウォールマート・スーパーセンター。
青果売場はウィーターメロンのプロモーション。
青果部門の入口にまずプレゼン。
その奥のメイン売場にもメロンの平台が見える。
メイン売場では、
まずネット系メロン1ドル88セント、
ハニデューメロン2ドル48セント、
ウォーターメロン小3ドル48セント。
続いて、
左の種無し4ドル98セント、
右の種ありの6ドル48セント。
一番売りたいのが、
そして一番お買い得なのが、
入口の4ドル98セントもの。
実によく考えられた売場展開だ。
次は、コストコ。
メンバーシップホールセールクラブの雄。
相変わらず絶好調で、
どこよりもお客が入っている。
コストコのウォーターメロンは、
種なしで1個4ドル29セント。
そしてこの単品大量・大迫力売場。
全部、スイカの1アイテム。
ウォルマートとは業態が異なり、
フォーマットが異なる。
それが異なれば、
売り方も変わるし、
価格も違ってくる。
しかし顧客は、
どちらの店も評価し、
納得している。
だから一人の顧客がどちらにも行く。
それがコンテスト型競争だ。
とにかく「価格が安ければいい」では、
ないのだ。
売り方はフォーマットに、
深く関連している。
なぜならフォーマットとは、
新しい売り方だから。
それがわからない人間は、
フォーマットなど学ぶ必要がないという。
商売を学べばいい、と。
しかしフォーマットこそ、
商売の方法の有力なセオリーの一つだ。
セオリーを理解しようとせず、
とにかく学ぶことを我流という。
ここには科学的態度が欠落している。
商売はサイエンスである。
同時にアートでもある。
故ジョー・アルバートソンの言葉。
我流も悪くはないが、
自分の仲間や上司、部下に、
どう、コミュニケーションするのだろう。
大抵は、
「わかるやつはわかる」の悪しき職人方式か、
「とにかく真似ろ」の体育会系根性方式になる。
つまり、ノン・マネジメントになる。
コストコでは店外入口で、
ホンダ・アコードを販売。
これでもかと、
商売を展開するコストコ。
3日目最後の締めの視察店は、
トレーダー・ジョー。
3店目のトレーダー・ジョーでは
ワインやソルト、トマトケチャップなど基礎商品、
さらにナッツ類、シェアバターのクリーム、
思いだせないくらい土産を購入。
でも値段はまったく気にならない。
それがトレーダー・ジョーの魅力だ。
トレーダー・ジョーは、
トレーダー・ジョーのポジショニングを確立し、
その戦略行動が反映された、
トレーダー・ジョーのフォーマットとなっている。
ホテルに引き返してから、
夕食は事務局だけの打ち合わせ。
タクシーを飛ばして
日本料理店「稲葉」へ。
これが実にいい店で、
すばらしい料理だった。
大満足でおなかいっぱい。
現地コーディネーターの五十嵐ゆう子さんと
トッパントラベルサービスの鈴木敏さん。
今日も充実した一日だった。
しかし朝の3時間講義は疲れた。
華氏99度にも参った。
それでも、
フォーマットとポジショニング。
理解してもらえただろうか。
明日の朝は、
理解度テストが待っている。
科学的態度を期待し、
健闘を祈る。
(つづきます)
〈結城義晴〉