台風8号。
千葉県の南をすり抜けて、
太平洋に消えた。
今日は、
その後のフェーン現象で、
ひどく蒸し暑い一日。
横浜の商人舎オフィスに出社して、
昼過ぎまで執務。
㈱商人舎代表取締役社長だから、
日本にいるときにはできる限り、
出社したい。
社長の腰が落ちつかない会社は、
絶対にうまくいかない。
自戒を込めて。
午後、蒸し暑い中を、
東京・日暮里へ。
㈱ダイナム本社。
6月の16日に続いて、
二度目の社内講演会。
サブタイトルは、
21世紀チェーンストアのための
〈続純粋渥美俊一批判〉。
幹部がずらり、全員そろって、
今回はマーケティングの講義。
㈱ダイナムジャパンホールディングスが、
一昨年の8月に、
香港証券取引所に株式上場。
パチンコホールとしては、
日本初のことだった。
そしていま、ダイナムは、
さらなる成長のための、
重要な時期に来ている。
最新のマーケティング戦略に関して、
2時間15分ほどに延長して、講義。
かつて渥美俊一先生は、
マーケティングを否定した。
それはそれで、
有効な時代と有効な産業が、
あった。
チェーンストア産業化の初期には、
それも必要だった。
いま、マーケティングを、
否定する者はいない。
しかしそれでもその呪縛から、
逃れられない産業や企業がある。
だから私がそれを指摘する。
「マーケティング3.0」の考え方も含めて、
サービス業のチェーンストアにとって、
必須の考え方をレクチャーした。
ちょっと難しかっただろうか。
ちょっと情報量が多かっただろうか。
しかしそれが今、
絶対に必要で、
有効な時代に入った。
講義を聞いた後、
自分たちで考え、
自分たちで議論して、
ダイナムらしいマーケティングを、
展開してもらいたい。
講義終了後、
代表取締役社長の佐藤公平さんと、
意見交換。
純粋渥美俊一批判と言っても、
その功績は少しも、
減じられるものではない。
渥美先生の二段階革命論は、
秀逸のロジックだった。
ダイナムにも、
少しだけそのことは、
指摘し、提案した。
公平さんのリーダーシップに、
あらためて期待したい。
さて、一昨日までのアメリカ視察研修。
ワシントンDCでの最終日。
食品分野では、ウェグマンズを中心に、
ジャイアント・フードと、
韓国系のフレッシュワールドを、
比較した。
それ以外にもセブン-イレブンの新しい試み、
ドラッグストアやダラーストア。
非食品分野でも、
ゼネラルマーチャンダイズストアを、
丁寧に検証した。
業態として整理すると、
これがちょっと込み入っている。
アメリカの商業センサスでは、
ゼネラルマーチャンダイズストアが、
452番の大分類。
その中にデパートメントストアがある。
そしてさらにそのデパートメントストアにも、
その中に二つの分類があって、
ディスカウントしないデパートメントストアと、
ディスカウントするデパートメントストア。
前者が日本で言う「百貨店」で、
後者が日本で言う「GMS」。
この前者の百貨店のトップが、
メイシーズ。
年商279億3100万ドル(2兆7931億円)、
伸び率は0.8%。
純利益は14億8600万ドル(1486億円)、
こちらは11.3%伸長している。
現在、840店舗。
メイシーズは活発なM&Aを展開して、
840店舗の大チェーンストアになっている。
二番手は、
コールズ。
こちらはジュニアデパート。
2013年度年商190億3100万ドル。
これは1兆9031億円。
ずっと好調で成長を続けてきたが、
伸長率はマイナス2.3%。
純利益も8億8900万ドル、889億円。
こちらはマイナス9.9%。
とは言っても1158店の4桁チェーン。
デュスカウント・デパートメントストアではないが、
コールズがGMSの地位を奪って、
成長してきた。
つまりシアーズとJCペニーから、
特に服飾衣料分野で、
顧客と売上げを奪取してきた。
しかしその勢いにも、
陰りが見えてきた。
なぜか。
シアーズとペニーから、
奪いつくしたというのが、
その第一の理由。
さらにメイシーズやノードストロームが、
コールズの価格帯に降りてきた。
同時にディスカウントストアのターゲットが、
やや価格帯を上げてきた。
つまりコールズのマーケットが、
狙い撃ちされている。
だから顧客数が減った。
その途端、現場が乱れた。
一番の問題は、
内側にある。
苦しくとも、店頭が乱れては、
すぐに競争の餌食にされる。
それがアメリカチェーンストアの競争だ。
三番手がノードストローム。
しかしノードストロームの中で、
一番伸びているフォーマットは、
ノードストローム・ラック。
年商は121億6600万ドル、
1兆2166億円。
これは3.4%の伸び。
純利益は7億3400万ドル。
734億円で前年と変わらず。
総店舗数は260店だが、
百貨店が117店、ラックが143店。
店舗数は今や、
ラックの方が多い。
このフォーマットは通常、
アウトレットモールに出店する。
しかし最近は、
パワーセンターなどの、
新しいショッピングセンターにも、
店を出す。
四番手がディラード。
これはローコスト型百貨店だが、
最近の経費率は、
普通の百貨店並みになってきた。
年商は64億8900万ドル、
6489億円で4.8%の伸び。
店舗数は302で、2店舗閉鎖した。
そして五番手が、
超高級百貨店のニーマンマーカス。
この店、ため息が出るほど素晴らしい。
年商は43億4500万ドル、4345億円。
8.6%伸びていて、百貨店業界随一。
店舗数は78で、1年間に1店だけ閉鎖した。
店数が減っても、
売上げは8.6%伸びた。
既存店が成長している証拠だ。
六番手が、
サックスフィフスアベニュー。
これも素晴らしい。
それぞれ、
とてもいい売場写真があって、
素晴らしいが、
それはWeekly商人舎で、
特別企画を組んでお届けしよう。
日本の総合スーパーの改革には、
アメリカの商業統計の、
ゼネラルマーチャンダイズストアの解明が、
必須だ。
全体像を明らかにし、
その互いの力関係を、
鳥の目と魚の目で分析する。
結城義晴の独自の世界。
楽しみにしていてほしい。
アメリカのチェーンストアを語るとき、
エブリデーグッズとエブリバディグッズだけでは、
まったく片手落ちであることは、
このデパートメントストアの動向を、
垣間見るだけで明白だ。
20世紀の近代化チェーンストア理論は、
十二分に役目を果たして、
21世紀の現代化チェーンストア論に、
その座を譲りつつある。
〈結城義晴〉