台風16号が低気圧に変わった。
それでも雨模様。
午後から、東京・虎ノ門。
日本チェーンストア協会へ。
会議室には歴代会長の写真。
初代会長は中内功さん
(当時、主婦の店ダイエー社長)、
二代会長は岡田卓也さん
(同ジャスコ社長)、
三代会長は伊藤雅俊さん
(同イトーヨーカ堂社長)。
私の言葉でいえば、
皆さん「化け物級」。
中内さんと故渥美俊一先生が中心となって、
日本チェーンストア協会をつくって、
中内さんは最初の年の1967年に会長に就任。
それから9年間、この産業をリードした。
その間、1972年に、
ダイエーが三越の売上高を追い抜き、
日本最大の小売業となって、
チェーンストアの時代がやってくる。
次の岡田さんから、
2年ごとに会長職が交替する。
つまり協会が世間に認知され、
さらに発展するという時期に入る。
岡田さんの会長任期は1976年~1978年。
そして伊藤さんは、1978年~1980年。
中内さんはその後も、
1993年~1994年と、
1998年~1999年に、
都合三度、会長に就任して、
商業の産業化、近代化に、
多大な貢献を果たした。
二度目の会長就任の前の1991年、
日本経済団体連合会の副会長に就任。
それまで経団連の会長副会長は、
製造業や金融業などによって占められていた。
初めて小売流通業・サービス業から、
副会長が誕生した。
その中内さんのダイエーが、
イオンの完全子会社となる。
夕方からその記者会見が開かれた。
イオンの2014年2月期営業収益は、
6兆3951億円。
イオングループの中で、
総合スーパー事業のイオンリテールは、
年商2兆1401億円。
ダイエーは8136億円。
合わせると単純計算で、
7兆2071億円。
1995年2月期に、
ダイエーが3兆2000億円を記録して、
当時の最大規模になったが、
それがこのたび2.25倍になる。
そんな化け物級の皆さんの視線を感じつつ、
日本チェーンストア協会の会議室を借りて、
私の特別講義。
テーマは、
「マネジメントの現代化」。
内容は「愛の渥美俊一論」だが、
基本ストーリーは、
テーゼ・アンチテーゼ、
そしてジンテーゼの話。
こういった小さな研究会でも、
つい力が入って、
数百人の前での講演のようになる。
講義しながら、どうしても、
左手の歴代会長の写真が目に入る。
この場に来るだけでいつも、
敬虔な気持ちになるが、
それも手伝って、
「数百人の前での講演」になってしまう。
ご清聴を感謝したい。
最後に、
商業経営問題研究会メンバーと写真。
この会の英語名は、
リテール・マネジメント・ラーニング・サークル。
Retail Management Learning Circle。
RMLCと略す。
故杉山昭次郎先生を囲む杉山ゼミから始まった。
その後、故磯見精祐さんが代表となって、
研究会は充実しつつ継続された。
お二人が亡くなられて、
高木和成さん(左)が代表世話人、
結城義晴が座長となって、
研究会は続けられている。
この間、2011年10月には、
商業経営問題研究会が著者となって、
『小売業界ハンドブック』が発刊された。
結城義晴編著。
さて、日経Web刊の『経営者ブログ』。
丹羽宇一郎さんが、
隔週水曜日に書く。
伊藤忠商事前会長にして、前中国大使。
タイトルは、
「経団連の政治献金再開には
賛成できない」。
9月11日、経団連は、
「政治との連携強化に関する見解」を発表。
政治献金への関与を再開する方針を、
5年ぶりに正式決定。
丹羽さんは言う。
「私としては、
経団連の呼びかけによる企業献金の再開には、
一般国民の立場に立てば
素直に賛成はできません」。
「そもそも経済界は
あまり政治に頼るべきではありません。
基本はあくまで経済合理性であり、
企業おのおのの力で競争力をつけるべきです」。
勇気ある発言、
まったく同感。
「すでに政党交付金という制度の下で
政党は透明度の高い政治資金を
まかなっているのだから、
支持する政党に献金したいなら、
別に企業献金という形ではなく
個人献金すればいいだけの話です」。
1993年、ゼネコンがらみの政財癒着が発覚。
「ゼネコン汚職」と呼ばれた。
この事件がきっかけとなって、
業界ごとに献金額を割り当てる
「あっせん」が廃止された。
翌年の1994年、
企業や労組などからの政治献金を制限し、
その代わりに政党交付金を税金から割り当て、
透明性の高い政治体制を目指した。
政党交付金制度は今も続いている。
この税金負担の交付金を残したまま、
経団連が企業献金を再開する。
政党は「二重取り」。
国民は「二重支払い」。
丹羽さんは手厳しい。
「今の経団連の動きには
国民視点というものが欠けているように映ります」
丹羽さんの視点は変わらない。
「政治に近づきすぎると
企業は競争力を失う」。
「激しくなるグローバル競争のなかで、
献金よりやるべきこと、カネを使うべきことは
いくらでもあるはずです」
中内さんが経団連副会長だったら、
どう判断し、どんな発言をしただろう。
正義感の塊のような中内さん、
きっと国民視点、消費者視点を強く訴えて、
「二重取り・二重支払い」の企業政治献金に、
反論したに違いない。
〈結城義晴〉