帰国した。
サンフランシスコ国際空港を、
20日夕方の18時に発って、
東京羽田空港に、
21日22時過ぎに到着。
時差17時間。
フライト時間12時間。
飛び立ってすぐに、
機長がアナウンス。
「夜間飛行をお楽しみください」
サン・テグジュペリの小説。
『夜間飛行』。
パイロットでもあったテグジュペリ。
第二次世界大戦中の1944年7月31日、
フランス内陸部を写真偵察のため、
ボルゴ飛行場から単機で出撃。
地中海上空で行方不明となって、
44歳で死んだ。
私は「ジェット・ストリーム」を思い浮かべた。
城達也さんのナレーション。
夜間飛行の、
ジェット機の翼に点滅するランプは、
遠ざかるにつれ、
次第に星のまたたきと
区別がつかなくなります。
しばらくすると、ディナー。
日本航空は、
ボジョレー・ヌーボーを用意してくれた。
私は和食とヌーボーを、
ひとりで楽しんだ。
11月2日の日曜日に出国して、
11月21日の土曜日に帰国。
20日間の旅。
その20日目の夜間飛行。
これまでで最長期間の、
三つのツアーの連続だった。
これも初めての経験。
体力的にも、
精神的にも、
自信がついた。
羽田空港に降り立つと、
スーツケースが壊れていた。
それを手当し、
インターネットのルーターを返却。
リムジンバスに乗って、
羽田空港国際線から、
第一ターミナル、
第二ターミナルを経由し、
終点は横浜エアーターミナル。
そこからタクシーで、
実家に寄って、
父の位牌に線香をあげ、
合掌。
父の死に目にも会えず、
通夜や告別式にも出られず。
申し訳ないことは確かだが、
自分も仕事に生きた父だから、
許してもくれるだろうと思いつつ、
手を合わせた。
午前零時を回っていた。
日本では帰国した21日に衆議院解散、
12月2日公示、14日投開票の総選挙。
自民党の小泉進次郎内閣府政務官。
国会内で記者団に発言。
「国民にはなぜ衆院解散なのか、
何が争点か分からない」。
率直な解散批判。
安倍晋三首相は、
「アベノミクス解散だ」
自分で言うなよ。
他人が言ってくれるから、
アベノミクスも価値が出る。
若い小泉のほうが、
発言自体、妥当だろう。
内閣府政務官として言い切るのは、
安倍からすると腹が立つかもしれないが、
どちらが国民を惹きつけるか。
一夜明けて、
横浜の銀杏は今、
いちばん美しい。
予約してあった歯医者に行って、
左の奥歯を削って、荒療治。
控え室の椅子に、
小さな女の子が
アンパンマンと仲間たちを、
仰向けに並べて遊んでいた。
その後、再び実家へ。
母と妹に会って、
葬儀のことなど聞いた。
そして四十九日法要と納骨の段取りを決めた。
今度こそ、私が主体となって行おう。
実家から臨む横浜の街は、
これも美しかった。
虚脱感はあるが、
充実感にも満たされている。
昨日の夜間飛行が私に、
蘇生の力を与えてくれたのだと思った。
〈結城義晴〉
【追伸】
20日間のアメリカ旅日記。
ご愛読、ありがとうございました。
これにて閉幕。