天皇誕生日。
平成元年から12月23日だから、
今回で26度目。
今上天皇は81歳になられた。
その前は昭和天皇の天皇誕生日で、
4月29日のゴールデンウィーク。
現在は昭和の日。
はからずも今日は、
クリスマスのイブイブ。
天皇誕生日にクリスマスパーティなど、
盛んに催されるから、
国民の祝日の一つという印象が強くなった。
あまり語られることはないが、
今日は東條英機が処刑され没した日でもある。
戦前の陸軍大将で内閣総理大臣。
敗戦後、東京裁判でA級戦犯として起訴され、
巣鴨拘置所で死刑執行された。
64歳だった。
今上天皇が誕生してから81年、
東條が処刑されてから66年。
ジングルベルのメロディーを聴きながらも、
そんなことを思ってみたい。
日経新聞『大機小機』。
私の好きなコラムニスト隅田川さんが、
「経済改革は言葉から」と題して書く。
日本経済社会の構造改革で、
重要な2点を上げる。
第1が「働き方の改革」、
第2が「市場開放」。
私も同じ意見。
「両方とも難しい課題で、
なかなか改革が進まない」
その理由を、言葉に求める。
「我々が何気なく使っている言葉の中に
現状維持的な価値判断が含まれており、
これが改革を阻んでいる」
これも同感。
「働き方については、
『正社員』という言葉」
「正という字には『正当な』という意味があるから、
正社員という言い方をしているうちに、
正社員でない働き方は、
本来望ましくないものだという気になってしまう」
「正社員が望ましく見えるのは
雇用が守られており、
非正規社員の待遇と大きな差があるからだ」
コラムニストは、
差別のことを言っている。
労働組合の世界にも、
古くから本工と臨時工という差別があった。
「この差をなくし、
同じ仕事なら同じ処遇を
受けるように変えていけば、
働く人全員を正社員にする必要はなくなり、
より多様な働き方が選択できるようになる」
もうひとつ、
「TPPに関しては、
『聖域』という言葉」。
「聖域なき」というのは、
単に例外なきという意味にすぎない。
しかし米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、
そしてサトウキビなど甘味資源作物の5分野が、
「聖域だ・聖域だ」と繰り返されているうちに、
それが国益のように受け止めれられてしまった。
コラムニストの主張。
「まずは出発点として、
現状維持的なバイアスをもたらしやすい言葉遣いを
中立なものに改めていくことが必要だ」
これは我々の仕事にも通じる。
特殊な用語や言葉遣いは、
それに慣れきってしまうと、
改革を阻む。
「標準化」然り、
「チェーンオペレーション」然り、
「適正規模」然り。
最近出てきた不可思議な言葉や用語。
それでも私は、
標準化やチェーンオペレーションを、
否定しているわけではない。
その言葉が、
現状維持的なニュアンスを含んできたら、
それは危険だということ。
かといって過激なばかりの言葉も、
いただけない。
言葉の本来の意味を共有し、
認識を正確にすれば、
これほど便利なものはない。
しかしなによりもこの言葉の概念を、
他人任せにしていると、
言葉が改革を阻む。
「言葉」
瞬間、言葉を失う。
言語シンドロームか。
会話イップスか。
言いたいことが言えない。
私にもある。
だからこれは許そう。
しかし、商売に言葉は欠かせない。
仕事に専門用語は不可欠だ。
取り引き・取り組みに会話の手はぬけない。
難しいけれど、
それでしか表わせない
深い意味。
そのまま英語だが、
新しい魅力的な
概念を込めた用語。
記号だけれど、
何度も使うに
便利なもの。
商品という単語。
売場という文章。
店という思想。
半面、疲れ果てた古い言葉。
心のこもらない接客七大用語。
口先だけのマニュアル常套句。
独り善がりのひけらかし修飾語。
売り言葉に買い言葉。
体系のない借りもののカタカナ羅列語。
はじめに言葉あり
言葉は神とともにあり
言葉はすなわち神なりき(ヨハネ福音書)
言葉で仕事し、
言葉で思索し、
言葉で成長する。
新人諸君、先輩諸氏。
社長も部長も店長も。
モノ言わぬ者は、去れ。
評論家も、コンサルタントも。
識者も、学者も、編集者も。
考えぬ者は滅びることを知れ。
〈『メッセージ』(結城義晴著・商業界刊〉
一昨日、本を買ってきた。
そうしたら偶然にも、
言葉を大切にした人のムックが三冊、
含まれていた。
井上ひさし、
坂口安吾、
そして古今亭志ん朝。
井上ひさしの本には、
原稿用紙の直筆の写真が載っている。
原稿用紙には、
専用のネーミングが入れてある。
「遅筆堂用箋」。
井上ひさしは遅筆で、
編集者泣かせだった。
だから言い訳のように、
原稿用紙に「遅筆堂」と入れてある。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに
書くこと
言葉は大切だ。
その言葉が、
改革を阻んではならない。
〈結城義晴〉