結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年01月29日(木曜日)

民事再生法適用申請スカイマークとLCC雛形サウスウェスト航空

スカイマークの民事再生法適用申請。

日経新聞は一面トップ。
朝日、毎日は一面の左サイド。

朝日・毎日のトップは、
イスラム国人質事件。

スカイマークは国内航空会社3位で、
東証1部上場企業。

この業界は、
JALとANAの複占+アルファ。

マーケット・リーダーとチャレンジャー、
そして数々のマーケット・ニッチャー。

そのニッチャーのスカイマークが、
フォロワーになろうとして挫折した。

2010年に日本航空が、
会社更生法適用申請。

5年ぶりに今度は、
3位のスカイマーク倒産だから、
航空業界はある意味で、
成熟衰退産業だ。

規制の強い業界は、初めから、
寡占、三占、複占であることが多い。

日本航空、全日本空輸、
そして東亜国内航空改め日本エアシステム。

JAL、ANA、JAS。
これが長らく続いた。

しかし三番手JASがJALに吸収され、
その代わり規制緩和で新規参入した、
スカイマークが三番手に。

それ以外には、
AIRDO、スカイネットアジア航空、
さらにスターフライヤーなどなど。

年商規模は、
ANAホールディングスが1兆6010億円、
日本航空が1兆3093億円で、
スカイマークが859億円
だから、
ほとんど複占。

世界の航空連合も三占。
スターアライアンス、
ワンワールド、
スカイチーム。

年商859億円のスカイマークの、
負債総額は710億円。

これでは民事再生法も仕方ない。

1996年、
HIS澤田秀雄社長らの出資で、
新規参入航空会社の第1号として、
鳴り物入りで設立。

機内サービスを始めコストを削減し、
普通運賃を半額程度にディスカウント。
平均搭乗率80%以上を記録。

しかしどんな商売も、
単なるディスカウントは、
長続きしない。

すぐに効果が出ることは、
すぐに真似されて、
その効果は逆転する。

大手2社はその規模に物を言わせて、
割引運賃をスカイマーク並みに値下げ。

スカイマークの平均搭乗率は、
60%を切って、赤字転落。

そこに登場したのが、
IT企業ゼロ㈱西久保愼一会長。

スカイマークに出資し、
やがて社長就任。

ここからが面白い。

航空機を店舗と置き換えて、
読んでもらいたい。

まず、それまでの中型機767を順次、
燃費効率の高い小型機737に転換し、
それで効率化を果たす。

客室乗務員の制服はポロシャツにして、
地上勤務と兼任させる。
マルチ・タスクだ。

パイロットの制服も、
ポロシャツとウィンドブレーカーに。

業界の常識を破った。

さらに運航管理システムの自社開発などで、
低価格運賃を実現。

以前の単なるディスカウントから脱して、
2012年3月期には、年商802億円。
営業利益は152億円。

ローコスト・キャリアー(LCC)として、
脚光を浴びることになる。

しかし好事魔多し。

今度は国際線参入のために、
エアバスの超大型機A380を、
一挙に6機購入する契約を結ぶ。

総額1915億円。

結局、この契約は解約され、
その損害賠償などを巡って、
資金繰りが悪化。

まったく皮肉なことに、
無借金経営であったために、
メインバンクもなく、
あえなく民事再生法申請。

スカイマークは、昨年、
グリーンシートを全席導入した中型機A330を開発。
座席が2割も広いサービスを誇示した。

さらにミニスカートの制服を採用したりして、
瞬間的な話題をさらった。
20150129225837.jpg
〈出典:flightliner.jp〉
これはもう、末期症状。

西久保氏は社長を退任、会社を去る。
59歳。

LCCの雛形を作ったのは、
アメリカのサウスウェスト航空。

杉山純子著『LCCが拓く航空市場』に、
詳細に紹介分析されている。
20150129224715.jpg
杉山さんは、立教大学ビジネスデザイン研究科出身。
修士論文でこの研究をし、
それがすぐに単行本になった。

そのLCCの特徴は、
第1に単一機材の採用。
これは小売業に置き換えると、
シングルフォーマット戦略。

第2は主として小型ジェット機の採用。
これは小型店政策。

第3は、ポイント・トゥ・ポイントによる、
2地点間の直行運行。

これは小商圏主義。

第4は、セカンダリー空港の活用。
これは脱大都市圏出店。

第5は、サービスの簡素化と、
必要なサービスの有料化。

そして第6は、インターネットによる直販。

その上、第7に、家族的な社風。
「顧客第二主義」を標榜する。
つまり顧客よりも従業員を優先する。

アメリカの小売業で言えば、
トレーダー・ジョーとアルディを、
足して2で割ったようなビジネスモデル。

それに対してスカイマークは、
古い中型総合スーパーから、
スーパーマーケット経営に切り替えて、
業績を回復させるも、
今度は大型総合スーパーを志向し、
そのために資金繰りが苦しくなって倒産。

そんな小売業と似ている。

無謀な店舗投資などはしなくとも、
派手な販促や無駄なセールを連発して、
ジリジリと経営を悪化させる。

こんなことも、
小売業ではよく見受けられる。

LCCのサウスウェスト航空と、
民事再生のスカイマーク。

小売サービス業に、
よく当てはまる。

ただし、小売業は、
トレーダー・ジョーとアルディに、
分化している。

それだけ競争が激しく、
参入障壁が低い世界だと考えることができる。

LCCの考え方の本質は、
大いに学べるが、
もう少し競争レベルが先行しているのが、
米国リテーリングの世界だ。

〈結城義晴〉

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