今年の桜の季節は早かった。
昨日は横浜商人舎オフィスを、
井坂康志さんが訪ねてくれた。
東洋経済新報社のプロデューサーで、
ドラッカー学会理事・事務局長。
ものつくり大学客員教授など歴任。
ドラッカー学会は、
「ピーター・ドラッカーの
思想全般と経営理論に関して、
学界、ジャーナリズムおよび産業界等の
連絡と協力に基づいて
学術的、実務的交流を推進し、
その深化、継続、啓蒙、
発展をはかることを目的とする」
上田惇生先生を中心に、
元ダイヤモンド社編集者の藤島秀記さんと、
この井坂康志さんの三人で、
2005年11月に設立された。
現在の代表は立命館大学三浦一郎教授、
顧問は多摩大学野田一夫名誉学長。
会員は実務界・学界を中心に800名超。
流通業界からは、
伊藤雅俊さん、柳井正さんが、
名を連ねるし、
もちろん私も会員の一人。
そのドラッカー学会を支える事務局長。
井坂さんは上田先生の信頼が厚く、
その上田先生が、
私に紹介してくださった。
著書は上田先生との共著。
「ドラッカー入門新版」
「ドラッカー:人・思想・実践」
井坂さんはいま、
ドラッカーの実践法を考察・執筆中。
詳細は語れないが、
近いうちに世に出るだろう。
二人してドラッカーのこと、
上田惇生先生のこと、
じっくりと語り合った。
今日の『ほぼ日』の巻頭言。
糸井重里が予言について書く。
「5年前に、これほど
『パンケーキが流行する』と、
予言していた人はいたのでしょうか。
粉と卵と牛乳を混ぜて焼いたものは、
もともとあったはずなんですよね。
そして、けっこうたくさんの人が
食べていたと思います。
でも、流行はしてなかったと思うんです。
行列をつくるほど人が並んでも
食べたがるとはねぇ」
糸井流の切り口。
事例は続く。
「そういえば、ジンギスカンが
流行したことがありました」
「ジンギスカンが流行することも、
誰かが予言していたとも思えません。
また、その流行が
あれほどはやく終るということも」
さらに。
「『博多もつ鍋』の流行も
あったっけなぁ」
「プロ野球の順位予想とかも
そうなんですけど、
予言って、当たったか外れたか
どうでもいいのかもね。
『予言をする』ってことが、
ひとつの遊びで、
それ以上のことは
期待されてないのかもしれない」
そして言い切る。
「世の中で目立っていること、
ある時期に起こっていることは、ほとんど、
予言されてないことばかりなんじゃないかなぁ。
そのわりには、予言好きな人たちは、
よくまぁ、予言しますよね、
それが仕事だからか‥‥?」
そして最後に落ち。
「あ、予言より意志のほうが、
なにかを変えるということか」
ピーター・ドラッカーは、
「すでに起こった未来」と表現する。
それを観察し、考察する。
すると未来が見えてくる。
『創造する経営者』でドラッカーは語る。
「すでに起こった未来は、
体系的に見つけることができる」
そこで調べるべき領域は五つある。
「第1に調べるべき領域が、
人口構造である。
人口の変化は、
労働力、市場、社会、経済にとって
最も基本となる動きである。
すでに起こった人口の変化は逆転しない。
しかも、その変化は速くその影響を現す」
「第2が知識の領域である。
企業は、その卓越性の基盤とすべき
知識の領域においてこそ、
違うものにならなければならないからである。
影響がまだ現れていない知識の変化を
見つけなければならない」
「第3の領域は、当然のことながら、
他の産業、他の国、他の市場である。
これらのものに目を配り、
われわれの産業、国、市場を変えることは
起こっていないかを考えなければならない」
いつも講義するけれど、
商人舎のUSA研修会は、
「すでに起こった未来」を調べることを、
目的としている。
「第4の領域は産業構造の変化である」
これも私は、、
業種から業態へ、そしてフォーマットへと、
流通産業構造の変化を解析している。
そして「第5の領域が、
それぞれの組織の内部の変化である。
そこにも、すでに起こった未来がある。
基本的な大変化であって、
まだ影響の現れていない事象を
見つけることができる」
実は経営において、
これが一番、大切なことかも知れない。
自分の組織の内部の変化から、
見つけることができるもの。
そこにイノベーションがある。
「すでに起こった未来は機会である。
潜在的な機会である。
一つの傾向における変化ではなく、
傾向の変化そのものである。
パターンにおける変化ではなく、
パターンそのものの断絶である」
糸井重里のいう予言と、
「すでに起こった未来」は異なる。
五つの領域を調べ尽くして、
体系的に探索するものが、
すでに起こった未来だ。
だから、それこそが、
明日をつくるために
今日なすべきことなのだ。
そしてそれは自分の目で見、
自分の耳で聞くところから始まる。
他人の予言を盲信してはならない。
〈結城義晴〉