あっという間に土曜日。
5月12日の火曜日に日本を発って、
ラスベガス、ダラス、
そしてサンフランシスコ。
今日、23日は、
壽里茂ゼミ稲門会総会。
私は欠席。
恩師・壽里先生の御健勝を、
アメリカから祈念したい。
さて日経新聞最終面の『私の履歴書』
今月の川村隆さん。
元日立製作所社長・会長。
60歳を超えて、子会社社長から、
突然、全日立を統率する立場に立つ。
日立は「沈みゆく巨艦」となっていた。
川村さんは、「英国軍艦の話」を思い出す。
「軍艦は特に手を打たなければ
毎年1センチずつ喫水が下がり、
速度が遅くなって、
使いものにならなくなる」
なぜか。
「船体の経年変化や
貝殻の付着のせいではなく、
原因は人だ」
「乗組員が自室にこっそり
本や服など私物を持ち込み、
それが積もり積もって船が重くなり、
水中に沈み込むのだ」
このたとえ話は、
恐ろしい。
川村さんは「100日プラン」を作って、
無駄を省き、収益・財務体質の改善に勤しむ。
平和堂2015アメリカ研修。
42名の参加者。
最後のまとめの講義は、
商品問題を中心にした、
私の持論。
だからウォルマートのPB、
「プライスファースト」を手に取って、
そのイノベーションを語る。
商品部からも多くの参加があって、
真剣そのもの。
それが語り手にビンビン伝わる。
ABC分析手法の弱点、
それを補うノンコモディティの方法。
白板を使って解説し、
問題意識を投げかける。
ほんとうによく聞いてくれた。
あとは実行に移すのみ。
講義終了後、最後の視察へ。
北に向かって、
ナパバレーの手前を曲がる。
サクラメント市の手前のバカビル市。
有名なナゲット・マーケット。
FORTUNE「働きがいのある企業」で、
2015年は26位。
7位のウェグマンズに次いで、
小売業では二番目。
伝説のサービスで有名なノードストロームは、
このランキングで93位。
ホールフーズが今年は55位。
それだけにナゲットの26位の、
意味は大きいし、価値は高い。
入口を入って右手に一丁目一番地。
左手のプロモーションは、
アウトドア。
そしてメイン売り場。
全米随一の青果売り場。
まさにファンタスティック。
息を呑む美しさ。
デリ、シーフードからミートへ。
ワイン売り場も美しい。
そしてとりわけ、
チェックスタンドが素晴らしい。
全メンバーが躍動している。
自分の顧客とごく自然な会話をする。
手は素早く動かしつつ、
脳はフル回転。
この店はリーマンショック以降、
落ち込んだ。
イギリスの古い軍艦のようになってしまった。
そこに最有力店の店長が赴任。
「フェニックスのように蘇ろう」
そう呼びかけて、自ら率先し、
店は変わった。
この店でランチ。
楽しそう、美味しそう。
次にナゲットが展開するフード4レス。
クローガーのフォーマットの一つ、
それがスーパーウェアハウスのこのタイプ。
ナゲットは、フランチャイジーとして、
このフォーマットを3店、営業している。
入口のウォール。
そして青果部門。
オーガニック。
ディスカウントストアとは思えない美しさ。
奥主通路も床がピカピカ。
精肉売り場で顧客とコミュニケーション。
こんな商品も置いている。
乳製品部門の壁面には、
「Great Prices Superior Quality」
エンド陳列も迫力があって、
なおかつ美しい。
ラックアイルもピカピカ。
これをウェットルックという。
「濡れたように見える」床。
クレンリネスの極地。
ディスプレーも見事。
レジでは珍しくノーサッカー。
しかし1番レジのこの女性、
見事な接客をする。
安く売るから汚い、
安く売るから悪い、
安く売るから不親切。
それが日本のディスカウンターのほとんど。
ナゲットのフード4レスにはそれがない。
安くて綺麗、
安くて良い、
安くて親切。
同じ趣旨で、さらに、
ディープ・ディスカウンティング、
それがウィンコフーズ。
ファサードには、
「従業員が所有する会社」と、
誇らしげに掲げられている。
入口にはウォール・オブ・バリュー。
そこに他社との価格比較POP。
HUNTSのスパゲティソース。
ウォルマート、セーフウェイ、レイリーズと、
価格比較され、ウィンコのほうが、
これだけ安いと訴求されている。
Red Lobsterのビスケットミックス。
クラフトのディナー・デラックス。
オスカー・マイヤーのベーコン。
ウォールを抜けると青果部門が広がる。
バナナは1ポンド58セント、
1SKU。
広大な売り場に、
絞り込まれたDeep Discounting。
乳製品部門も広々。
冷凍食品部門も、
平ケースとリーチインケースが、
ずらりと並ぶ。
水は天井まで届くかというラック陳列。
売り場のアクセントになっている。
ハンバーガーバンズは、
8個入りで88セント。
そしてレジもフレンドリー。
最後の最後に、
最もアメリカらしいポジショニングの店を、
堪能してもらった。
安くて綺麗、
安くて親切、
安くて良質。
日本のディープディスカウンティング・フォーマットも、
やがて必ずこうなる。
それができない安売り屋は、
どんどん淘汰されるに違いない。
その前に、
イギリスの軍艦のように、
人災で沈んでゆく企業の方が、
実は多い。
〈結城義晴〉