ヨシハルおとうさん、
かえってきました。
サンフランシスコから。
2ウィークぶりに。
おかえりなさい。
きのうの夜は、
おわかれパーティ。
レストランは、
スウィス・ルイス。
クラムチャウダーとダンジネスクラブ。
うつくしい海岸線。
坂東太郎。
そしてうつくしい日本の水田。
ナリタ・エアポートについて、
リムジンバス。
〈『ジジの気分』(未刊)より〉
結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。
あっという間に土曜日。
5月12日の火曜日に日本を発って、
ラスベガス、ダラス、
そしてサンフランシスコ。
今日、23日は、
壽里茂ゼミ稲門会総会。
私は欠席。
恩師・壽里先生の御健勝を、
アメリカから祈念したい。
さて日経新聞最終面の『私の履歴書』
今月の川村隆さん。
元日立製作所社長・会長。
60歳を超えて、子会社社長から、
突然、全日立を統率する立場に立つ。
日立は「沈みゆく巨艦」となっていた。
川村さんは、「英国軍艦の話」を思い出す。
「軍艦は特に手を打たなければ
毎年1センチずつ喫水が下がり、
速度が遅くなって、
使いものにならなくなる」
なぜか。
「船体の経年変化や
貝殻の付着のせいではなく、
原因は人だ」
「乗組員が自室にこっそり
本や服など私物を持ち込み、
それが積もり積もって船が重くなり、
水中に沈み込むのだ」
このたとえ話は、
恐ろしい。
川村さんは「100日プラン」を作って、
無駄を省き、収益・財務体質の改善に勤しむ。
平和堂2015アメリカ研修。
42名の参加者。
最後のまとめの講義は、
商品問題を中心にした、
私の持論。
だからウォルマートのPB、
「プライスファースト」を手に取って、
そのイノベーションを語る。
商品部からも多くの参加があって、
真剣そのもの。
それが語り手にビンビン伝わる。
ABC分析手法の弱点、
それを補うノンコモディティの方法。
白板を使って解説し、
問題意識を投げかける。
ほんとうによく聞いてくれた。
あとは実行に移すのみ。
講義終了後、最後の視察へ。
北に向かって、
ナパバレーの手前を曲がる。
サクラメント市の手前のバカビル市。
有名なナゲット・マーケット。
FORTUNE「働きがいのある企業」で、
2015年は26位。
7位のウェグマンズに次いで、
小売業では二番目。
伝説のサービスで有名なノードストロームは、
このランキングで93位。
ホールフーズが今年は55位。
それだけにナゲットの26位の、
意味は大きいし、価値は高い。
入口を入って右手に一丁目一番地。
左手のプロモーションは、
アウトドア。
そしてメイン売り場。
全米随一の青果売り場。
まさにファンタスティック。
息を呑む美しさ。
デリ、シーフードからミートへ。
ワイン売り場も美しい。
そしてとりわけ、
チェックスタンドが素晴らしい。
全メンバーが躍動している。
自分の顧客とごく自然な会話をする。
手は素早く動かしつつ、
脳はフル回転。
この店はリーマンショック以降、
落ち込んだ。
イギリスの古い軍艦のようになってしまった。
そこに最有力店の店長が赴任。
「フェニックスのように蘇ろう」
そう呼びかけて、自ら率先し、
店は変わった。
この店でランチ。
楽しそう、美味しそう。
次にナゲットが展開するフード4レス。
クローガーのフォーマットの一つ、
それがスーパーウェアハウスのこのタイプ。
ナゲットは、フランチャイジーとして、
このフォーマットを3店、営業している。
入口のウォール。
そして青果部門。
オーガニック。
ディスカウントストアとは思えない美しさ。
奥主通路も床がピカピカ。
精肉売り場で顧客とコミュニケーション。
こんな商品も置いている。
乳製品部門の壁面には、
「Great Prices Superior Quality」
エンド陳列も迫力があって、
なおかつ美しい。
ラックアイルもピカピカ。
これをウェットルックという。
「濡れたように見える」床。
クレンリネスの極地。
ディスプレーも見事。
レジでは珍しくノーサッカー。
しかし1番レジのこの女性、
見事な接客をする。
安く売るから汚い、
安く売るから悪い、
安く売るから不親切。
それが日本のディスカウンターのほとんど。
ナゲットのフード4レスにはそれがない。
安くて綺麗、
安くて良い、
安くて親切。
同じ趣旨で、さらに、
ディープ・ディスカウンティング、
それがウィンコフーズ。
ファサードには、
「従業員が所有する会社」と、
誇らしげに掲げられている。
入口にはウォール・オブ・バリュー。
そこに他社との価格比較POP。
HUNTSのスパゲティソース。
ウォルマート、セーフウェイ、レイリーズと、
価格比較され、ウィンコのほうが、
これだけ安いと訴求されている。
Red Lobsterのビスケットミックス。
クラフトのディナー・デラックス。
オスカー・マイヤーのベーコン。
ウォールを抜けると青果部門が広がる。
バナナは1ポンド58セント、
1SKU。
広大な売り場に、
絞り込まれたDeep Discounting。
乳製品部門も広々。
冷凍食品部門も、
平ケースとリーチインケースが、
ずらりと並ぶ。
水は天井まで届くかというラック陳列。
売り場のアクセントになっている。
ハンバーガーバンズは、
8個入りで88セント。
そしてレジもフレンドリー。
最後の最後に、
最もアメリカらしいポジショニングの店を、
堪能してもらった。
安くて綺麗、
安くて親切、
安くて良質。
日本のディープディスカウンティング・フォーマットも、
やがて必ずこうなる。
それができない安売り屋は、
どんどん淘汰されるに違いない。
その前に、
イギリスの軍艦のように、
人災で沈んでゆく企業の方が、
実は多い。
〈結城義晴〉
テキサス州ダラス・フォートワース地区。
ここに来て4日目。
アメリカの男子ゴルフ「クラウンプラザ招待」が、
ここフォートワースのコロニアルCCで開催中。
第1ラウンドでは、石川遼が首位に立った。
6バーディー・ノーボギーで64。
テキサス大学出身のジョーダン・スピースも、
石川と並んでトップ。
スピースは4月のマスターズで優勝した21歳。
楽しみだが、観戦には行けない。
松山英樹に先を越された石川。
「ベストを尽くすのみ」と謙虚。
心中で応援しつつ、
2015平和堂アメリカ研修は続く。
昨日の夜は、大試食会。
夕方の6時に視察と買物からホテルに戻り、
1時間半、各自、自室のキッチンで、
料理の腕をふるい、
会議室に7時半に集合。
それぞれ工夫と技術を施した料理を持ち寄る。
そして開始をじっと待つ。
全員集合したら、
それぞれに自分の料理の趣旨を説明。
ホールフーズ、トレーダー・ジョー、
セントラルマーケット、HEBなどで、
原材料や冷凍食品を購買し、
料理を作った。
メニューの組み合わせ、
彩り、盛りつけ。
アイデアのあとが見える。
予算はあらかじめ決められており、
それに添って経済合理性も問われる。
私はトレーダー・ジョーの冷食を、
是非とも試して欲しいと要望を出した。
そんな料理も出てきた。
つまりいかに簡便に美味しさを、
アメリカ小売業が提供しているか。
それを知ってもらいたいからだ。
ロテサリーチキン。
牛肉がレタスの上に乗っている。
シュリンプカクテル。
メニューを見ていただこう。
トレーダー・ジョーのコーンスープ。
同じくチリビーンズ。
なんとおにぎり。
チャーハンも出た。
綺麗な盛りつけのサラダ。
これはうまかった。
すき焼き。
カレーとナン。
全員の説明が終わったら、
いよいよ全員で試食開始。
人気メニューは、
あっという間になくなる。
その後、1時間半ほどして、
審査発表と表彰式。
まず副団長の黒川信一さん、
団長の田淵寿さんから、
それぞれ1品ずつ発表。
それから私が、アイデア賞1品、
プレゼンテーション賞1品。
そして大賞を2品選んだ。
受賞者たちには、賞品。
トレーダー・ジョーのワイン。
グランドリザーブやプレミアムリザーブ。
全員で写真。
おめでとう。
さらに大賞の2組。
こちらに来て10日目、
日本食が実に良く出来ていて、
それを選んでしまった。
すき焼きとカレー&ナン。
おめでとう。
しかし全員の料理、
全て良かった。
なによりも、
料理をつくろうと意図して、
買物をする。
よく見て考える。
それを写真で記録する。
そんな勉強も有意義だ。
それに実際の買物体験を組み込む。
それが数段、理解を進める。
全員が大満足。
後片付けも速いし、完璧。
それが平和堂の社風。
ご苦労さま。
一夜明けて今日は、
雷が鳴り、土砂降り。
朝7時20分集合で、
ダラス・フォートワース空港へ。
そこからアメリカン航空に乗り込む。
雨雲に覆われたダラス。
北アメリカ大陸は厚い雲に、
すっぽりと包まれていた。
機中、私はずっとブログ書き。
Gogo Flightを活用して、実に便利。
そして3時間、サンフランシスコ湾が現れた。
海を見るとほっとする。
サンマテオブリッジ。
微かにベイブリッジとサンフランシスコ市街。
霞んでいるけれど、美しい。
カメラをズーム。
サンフランシスコ国際空港に到着すると、
すぐにリムジンバスで、
市街を抜けて、ベイブリッジを渡る。
アルカトラズ島がくっきり。
そして向かいました。
ホールフーズ・ギルマン店。
ため息が出るほど、美しい。
一丁目一番地はとうもろこし。
この店は全ての商品の顔が、
顧客動線を向いている。
それが徹底されている。
そしてイートインスペースと、
バリスタのいるコーヒーショップ。
ホールフーズは常に、
新しいテーマにチャレンジしている。
ライバルのトレーダー・ジョー。
一丁目一番地のエンドは、
ポテトチップス。
プロバスケットボールの、
ウォリアーズをデザインしている。
「テレビで見ながら、ポテチ族になろう!」
相変わらずの親しみやすさと、
ここにしかない商品群。
サラさんにインタビュー。
積極的に質問し、熱心にメモを取る。
トレーダー・ジョーのプロパーで、
13年キャリアのサラさん。
「隣のセーフウェイは
視野に入っていません」
強気の発言。
田淵団長と三人で記念写真。
その視野に入っていないセーフウェイ。
サーベラスに買収されて苦境にあるが、
この店だけはいつも別格。
美しい。
売れている。
いつも、花売り場は見事。
店長とスタッフの、
マネジメントとオペレーションで、
会社は不調だが店は好調。
それが小売業、サービス業の、
実にいいところ、おもしろいところ。
このショッピングセンターのコールズ。
私はシアーズとJCペニーから、
顧客を奪って成長してきたと見ている。
しかし、この3年ほどは、
かつての勢いがなくなってきた。
とんがりがない。
その理由は、
月刊『商人舎』9月号に書いてある。
そしてDAISO。
こちらは米国ダラーストア業界のニッチャー。
1ドル50セント均一で、
ポジショニングが確立されている。
矢野博丈さん、お見事。
最後にバークレーボウル・ウェスト。
青果売り場は、この言葉しかない。
「圧巻」
品揃えの豊富さは、世界一。
この店もニッチャーだが、
圧倒的なアウトスタンディングなポジショニング。
もちろんスーパーマーケットだから、
他の部門も充実。
しかし青果が3割の売上げシェア。
ニッチャーは1店あたり売上高が大きい。
これは小売業のニッチャーにとって、
必須の要件だ。
今日も疲れた。
ベイブリッジを渡ると、
サンフランシスコの街が迎えてくれた。
満足の一日。
夕に感謝。
(つづきます)
〈結城義晴〉
商人舎magazineの、
今日のDaily商人舎。
4月の日本チェーンストア協会の販売統計も、
フランチャイズチェーン協会のコンビニ統計も、
13カ月ぶりに前年同月を上回った。
これは目出度い。
「売上げは全てを癒す」
故中内功さんの言葉だと記憶する。
私はテキサス州ダラス。
平和堂2015アメリカ研修。
佳境に入ってきた。
今日は9店舗駆け巡り。
そしてポジショニング戦略を学ぶ。
『小売業・サービス業のポジショニング戦略』は、
結城義晴のオリジナル理論。
といっても様々な先行理論を整理し、
それを小売サービス業に当てはめて、
戦略立案に適用できるレベルまで、
落とし込んで、わかりやすくした実務理論。
その戦略の有無、
その戦略の差異。
まずはテキサスの雄HEBへ。
リニューアルオープンしたばかりの、
HEBプラス。
非食品強化型で、なおかつ、
ウォルマート対策型フォーマット。
右手に強力で広大な青果部門。
それからシーフード・ミート部門へ。
左手が乳製品部門。
このあたりのペリシャブルスが、
ウォルマートを圧倒する。
エブリデーロープライスが基本。
その牛乳売り場。
常時1ガロン1ドル47セント。
1ガロンは3.8リットルだから、
1リットル38.7円。
非食品強化の目玉は、
このエンターテインメント。
これもウォルマートを凌ぐ。
ウォルマートにかなわない部門は、
非食品強化といえども、扱わない。
そしてレジサービスが秀逸。
若い男女のパートタイマーを動員して、
キビキビと対応する。
HEB、やはりすごい。
フーディーズのマルチーナさんに、
店内ツアーをしてもらった。
44人なので二手に分かれて、
二度のツアー。
ワンウェイコントロールの店舗なので、
それが一番いい。
そして改装でお目見えした、
新しいカテゴリー、新しいアイテム。
「Meals in Minutes」
日本語にすれば流行りの「即食」か。
グロサリーでも、
世界中から珍しい商品を集めてくる。
新しいアイテムを探すには、
多数の腕利きが、
その仕事に専念して、
集中的に継続しなければいけない。
それこそバイヤーの仕事だ。
都合よく、ネットなどで探してきても、
それは実は万人の知るものなのだ。
それは我が社のロットに、
合うかどうかわからない。
我が店のコンセプトに、
合うかどうかわからない。
チーズ売り場、ベーカリー、
サービスデリと回って、最後は花売り場。
マルチーナさんに感謝。
HEBは、
基本フォーマットのフード&ドラッグを中心に、
HEBプラスとセントラルマーケットで、
マルチフォーマット戦略を採用する。
それがドミナントエリアで、
高占拠率を獲得する手段である。
言わずと知れた世界最高峰の、
オーガニック&ナチュラルスーパーマーケット。
一丁目一番地には、旬のチェリー。
チラシトップに掲げられている。
カットフルーツは、
これまた最高峰。
この値付けにノウハウがある。
商人舎ベーシックコースの調査班が、
鮮明に示してくれた。
そしてこの夏を告げるエンドの美しさ。
来週月曜日がメモリアルデー。
それはアメリカの夏の到来を意味する。
ミートのチームメンバーが、
丁寧に丁寧にスライスしてくれた。
そして計量。
夜の大試食会で、
五十嵐ゆう子さんの手によるメニューが登場。
大人気だった。
ホールフーズの売れ筋だけ、
プライベートブランドで開発し、
低価格絞込み戦略で売りまくる。
そしてホールフーズマーケット、
トレーダー・ジョーとくれば、今では、
次はスプラウツファーマーズマーケット。
ホールフーズよりも、
カジュアルで低価格。
トレーダー・ジョーよりも、
圧倒的に生鮮食品、とくに青果が強い。
そこにポジションを得た。
バルク売り場もホールフーズより、
カジュアルで低価。
一昨年の株式上場以来、
客層も広がって、絶好調。
ポジショニング戦略を理解するときに、
カギを握る企業だ。
セントラルマーケット、
ホールフーズ、
トレーダー・ジョー、
そしてスプラウツ。
この一群と対極をなすポジション。
1万平方フィート(281坪)の小型店。
ハードなディスカウント。
つまりウォルマートよりも安い。
ドイツ生まれのこのフォーマットは、
ヨーロッパを荒らし回り、
今、アメリカでもウォルマートの、
目の上のたんこぶ。
ウォルマートは、
目の上に、ずいぶん、
たくさんのたんこぶをこしらえている。
アマゾン・ドット・コム、
ダラーゼネラル、
ウィンコフーズ、
そしてアルディ。
そのアルディに、
イノベーション。
主通路沿いにも登場してきた。
つまり売り切れ御免のハードライン。
しかしたんこぶをつくりつつも、
ウォルマートは、
ネイバーフッドマーケットで対抗。
鮮度は格段に良くなり、
惣菜が進化し、
コモディティ・ディスカウントでは、
アメリカの王者。
品揃え、コンビニエンス性で、
アルディとは異なるポジション。
いかがだろう。
ポジショニングの差異。
相変わらず「バイ1・ゲット1フリー」、
さらに「ゲット2フリー」。
1個買ったら1個タダ、
それが2個タダにエスカレート。
昔風のディスプレイは、
相変わらず続けている。
いい立地のショッピングセンター出店で、
適正規模の店、
商品構成もかつての適正、
床はピカピカ。
しかし顧客は来ない。
ポジショニング戦略、皆無。
セーフウェイと統合して、
全米第2位のスーパーマーケット企業となった。
しかしそれは明らかな「膨張」だ。
FORTUNE「働きたい企業ランキング」、
2015年度は54位のコンビニ。
ホールフーズが55位。
アメリカのセブン-イレブンが、
ずっとベンチマークしてきた。
何よりもフレンドリー、
新しい提案に満ち溢れ、
クランリネス、欠品なし。
レジの横にはセブンの5倍くらいのグリル。
熱々のホットドックを顧客が自分でつくる。
以上9店舗を巡って、
ポジショニング戦略を学んだ。
私も語り通して満足。
ご清聴、感謝。
(つづきます)
〈結城義晴〉
アメリカにやってきてから、9日が経つ。
今日、ウォルマート・ストアーズ・インクは、
2015年度第1四半期決算を発表した。
ウォルマートは1月末決算。
だから第1四半期は2月から4月まで。
営業収益は1148億2600万ドル、
1ドル100円換算で11兆4826億円で
前年同月比マイナス0.1%。
営業利益は56億8000万ドルでマイナス8.3%、
純利益は33億4100万ドルでマイナス7%。
衝撃が走った。
しかし四半期でこれだけ稼げば、
年間通期では営業利益が、
2兆3000億円くらいか。
すごい会社です。
我々が見ているアメリカの営業状態は、
悪くない。
Eコマースやオムニチャネルへの投資がかさんだ。
さらにこれまで好調だった国際部門だが、
ブラジルやイギリスのアズダなどが、
足を引っ張って、売上高マイナス6.6%。
ウォルマートといっても、
すべてが好調なわけではない。
一方、アメリカのセブン-イレブン。
8269店舗の大チェーンだが、
テデシーフードショップから、
182店舗を買収する。
この会社の本拠地は、
マサチューセッツ州ボストン。
日本国内では、
セブン-イレブンは買収に消極的だ。
しかし海外では、どんどんM&Aをして、
店舗数を増やす。
とくにアメリカでは、
今回のような買収を頻繁に行って、
とくに都市型コンビニの地位を確立しようと、
積極的に動いている。
アメリカを訪れているだけで、
そういったニュースに、
リアリティが増してくるから不思議。
さて、平和堂2015アメリカ研修。
二日目の朝は、私の講義。
朝8時から10時半までみっちり、
フォーマット戦略とポジショニング戦略の、
重要点を丁寧に語って、
とことん理解してもらった。
講義が終わるとすぐに、
リムジンバスに乗って、
クローガーへ。
バナーは「フレッシュ・フェア」。
もちろんチーズも、
スーパーマーケットにしては、
多過ぎるくらいの品揃え。
31歳の若いエリック店長に、
要点を話してもらってから、
質疑応答。
エリック店長は、
18歳でクローガーに入社。
アルバイトからスタートして13年、
5年前に店長になった。
一番重視しているのは、
「カスタマーサービス」
顧客から様々な声が、
メールで寄せられる。
それを必ず、毎日、読む。
それが店長の仕事だ。
62%の声は「お褒め」。
ありがたい。
38%が「お叱り」。
クローガーではこのお叱りのクレームを、
「opportunity」と呼んでいる。
つまり、絶好の機会だ。
お叱りに対応することで、
その顧客をロイヤルカスタマーに、
変えることができる。
クローガーは45四半期連続、
既存店が増収。
それを支えるのが、
カスタマーサービス最優先主義である。
グロサリーはコモディティ・ディスカウント。
ウォルマートにも負けない。
そしてカスタマー・サービス。
入口脇のデリ売り場から始まって、
青果部門、ワイン売り場、精肉部門、
そしてグロサリー、乳製品部門を、
丁寧に説明しながら歩いた。
それからHBCとファーマシー、
アパレルファッション、
そしてノンフードへ。
精力的に歩きつつ、
事細かに説明してくれる。
タイヤ売り場では、
デパートメントマネジャーのアリエルさんが、
顔を出してくれた。
在庫のこと、搬入のこと、
保管と補充のこと。
歩きながら、精力的なレクチャーを聞く。
タンポポマーク の背中の後について、
くまなくバックヤードを巡った。
ロレッタさんも、
厳しい顔つきで、
時折アソシエーツに対して、
指示を与えながら、説明する。
500人ほどのアソシエーツがいるが、
その休憩所。
卓球台が置いてあった。
最後に生鮮食品のバックヤードと、
冷蔵冷凍庫の視察。
フロント(売り場)では、
ウォルマートが実に丁寧な、
カテゴリーフォローをしていることが判明した。
日本の総合スーパーが、
捨ててきてしまった部門やカテゴリーを、
ウォルマートは丁寧に、全て、
網羅してアソートメントしている。
そしてバックヤードは、
その10万品目をこれまた丁寧に、
サポートしている。
Retail is Detail。
小売りの神は細部に宿る。
最後にロレッタさん。
「今日は全部見せました」
悉皆(しっかい)調査という方法がある。
全数調査ともいう。
つまり全部、調査すること。
今日はウォルマートの悉皆視察。
それでしかわからないことが、
わかった。
ロレッタさんに感謝。
団長の田淵寿さんとともに、
感謝の意を評した。
田淵さんは平和堂商品本部本部長。
そのあとはついでに、
同じウォルマートの、
ネイバーフッドマーケット・ファーマシー。
一番奥が調剤薬局。
ウォルマートのマルチフォーマット戦略、
細かく細かく進化している。
そこへ続々と入っていく。
全員で写真。
アメリカの小売業を学ぶには、
アメリカ人の生活を知らねばならない。
その際、モデルルームは、
絶好の研修舞台となる。
44人分を滞りなく、
あっという間に製造したバックヤード。
そのパフォーマンスに、
一同感動。
ちょっとだけの観光は、
ケネディ暗殺のテキサス教科書倉庫。
その暗殺地点。
そしてディナーは、
伝統のイタリアンレストラン「Buca」。
ビールとワイン、
そしてサラダからパスタ、魚料理まで。
最後はケーキ。
ハッピー・バースデー?
長い長い1日。
日が暮れて終わった。
ウォルマートとクローガー。
全米の第1位と第2位。
今日はじっくりとチェーンストアを学んだ。
(つづきます)
〈結城義晴〉
ダラスの暑い日。
こちらはラスベガスより暑い。
摂氏29度、華氏89度。
一人、ホテルの部屋で、
新聞に目を通したり、
本を読んだり、
原稿を書いたり、
ブログをまとめたり。
ときどき、ゴルフ・スィングしたり。
日本では、
「大阪都構想」賛否を問う住民投票。
結果は橋下徹・大阪市長と維新の会の惜敗。
惜敗ではあっても
負けは負け。
大新聞が揃って、
巻頭コラムで取り上げた。
朝日新聞の『天声人語』
いきなり、「びっくりした」。
橋下徹の発言に。
「民主主義は素晴らしい」
「口にした言葉そのものには賛意」
しかし「民主主義は確かに
優れた仕組みだが、
やりようによっては大いに危なっかしい」
「民主主義の取り扱いには注意が要る。
そのことを橋下氏の政治手法は
如実に示した」
「氏にアクセルはあっても、
ブレーキを 欠いていたというべきか。
スピード感も大切だろうが、
時に減速して時間をかける知恵も
政治には必要だ」
結論はつまらない。
日経新聞の『春秋』
「引退を即決した姿勢は潔い。
戦ってきた経歴への誇りも保てよう」
こちらも、但し書き付き。
「『政治は僕の人生からは終了』との
笑顔での物言いは、
賛否を考え抜き投票した人たちに
寄り添ってはいない」
笑顔での物言いは、
橋下特有の悔しさの表現だと、
私は見ている。
「残る半年余の任期、
市民と市政の現状に関し
対話を重ねてはどうか。
住民投票で培われた土壌に
きっと何かが芽生える」
それはないだろう。
私の予測。
毎日新聞『余録』
「劇場国家ならぬ選挙劇場というべきか」
「主役兼エキストラ兼観客だった大阪市民は
結局のところこの興行に見切りをつけた。
市民に残されたのは大阪再生という
当初から変わらない課題である」
これがつまらないけれど、
妥当な見方だろう。
糸井重里の『ほぼ日』巻頭言。
ある村に一人の旅人がやってきた。
○「やぁやぁ、初めまして。
わたしはあっちの村から
やってきたんですけどね、
この村は暮らしやすい村だと聞きまして‥‥」
△「あっちの村は暮らしやすかったかね?」
○「はい。とても。
みんなやさしかったですし」
△「そうかそうか。
だったら、この村も暮らしやすいよ。
しかも、村人はみんなやさしいと思うよ」
しばらくして別の旅人がやってきた。
●「あっちの村からきたんだが、
この村は暮らしやすい村だろうかね?」
△「あっちの村は暮らしやすかったかね?」
●「最悪でしたよ。
みんなツンケンして不親切で、
ろくなことがないから
逃げてきたようなもんだ」
△「ああ、そうかね。
だったら、この村も最悪だよ」
民主主義とは、
こんな共同体と人々との、
あり方をベースにしている。
独裁者や多数派の専横は、
長く続けるものではない。
ダラスの暑い日。
夕方、ちょっと涼しくなってから、
出かけた。
ホールフーズ。
1500坪ほどの中型店で、
ローコストオペレーション志向。
すこぶる面白い。
トレーダー・ジョー。
こちらも新店。
進化している。
素晴らしい。
そしてザ・フレッシュ・マーケット。
ホールフーズ、トレーダー・ジョーと比較。
それはちょっと可哀想だが、
ユニークな店づくり。
それは素晴らしい。
アウトドア商品の専門店チェーン。
FORTUNE「働きがいのある企業順位」で、
2015年度58位、2014年度69位。
店員の応対やホスピタリティだけでなく、
そのストアコンセプトとアソートメントが、
働きがいに直結している。
それが素晴らしい。
ダラスの小売業に感動しつつ、
ダラス・フォートワース国際空港へ。
夕方、平和堂2015米国研修団到着。
今回も総勢42名。
私と五十嵐ゆう子さんを入れて、
44名でダラスからサンフランシスコを巡る。
到着後、すぐにリムジンバスで、
ホテルに向かうが、
その途中、セブン-イレブンに立ち寄った。
水、ビール、スナックなど、
買物のため。
44名がどっと押し寄せると、
店員が大喜び。
写真も「いくらでもどうぞ」と言ってくれた。
そこでみんな、また大量購入。
水はプライベートブランド24個入り。
2パックで9ドル、1パック4ドル99セント。
アイスクリームや冷凍食品。
入口のエンドには、
新アイテムのスナック。
レジ前には、ピザ、フライドチキンなど。
そしてグリルメニュー。
レジの対面には、
日本でもスタートしたドーナツ。
これらはみな、
ファストフードとして大チェーンがある。
その売れ筋をラインロビングして、
セブン-イレブンなりの美味しさ、
便利さを提供する。
生鮮食品・デリも随分、充実してきた。
楕円形のレジの裏側には、
コーヒー売場。
品揃えも多彩。
日本のコンビニのコーヒーは1アイテム。
こちらはマルチ・アソートメント。
日本でもコンビニのコーヒーは、
やがてこの方向に行くだろう。
そしてセブン銀行はないけれど、
シティバンクのATM。
団員は喜んで買物した。
アメリカに到着したばかりの時点で、
日本でも馴染みのセブン-イレブンでの買物。
わかりやすくて、便利。
値頃を知り、税金を知り、
店員とのやりとり・交流。
到着直後は、セブン-イレブンがおすすめ。
店員も、ご覧のように、
異常値販売に大満足。
かつてアメリカのコンビニは、
ビールとコーラとタバコの店に、
成り下がってしまった。
そこでセブン-イレブンも、
ローソン、サークルKも、
実質的な倒産状態に陥った。
セブン-イレブンのサウスランド社は、
日本のイトーヨーカ堂に救済され、
それでも長い年月がかかって、
ここまでイノベーションが進んだ。
日本の経営技術の優位性を、
アメリカに、そして世界に知らしめた。
そんな功績がある。
そして宿舎へ。
ハイアット・ハウス。
キッチン付きホテル。
これから2015平和堂アメリカ研修が、
始まる。
ダラスのセブン-イレブンのイノベーションに、
負けてはいられない。
(つづきます)
〈結城義晴〉
Everybody! Good Monday!
[2015vol20]
2015年第21週、
5月第4週です。
日本では、
ゴールデンウィークが終わり、
母の日が過ぎると、
次は父の日の6月第3日曜日。
商人舎magazineの、
「2週間販促企画」が、
ホップ・ステップ・ジャンプを説いている。
アメリカではいま、
メモリアルデーに向けた営業企画が、
満載された売場展開。
戦没将兵追悼記念日は、
5月最終月曜日。
今年は、5月25日。
連邦政府が決めた祝日が月曜日。
必ず3連休になる。
これはとてもいい。
アメリカ人は、
メモリアルデーがやってくると、
夏の始まりを感じる。
そしてレイバーデーがやってくると、
夏の終わりを知る。
こちらは9月第1月曜日の、
労働者の日で、連邦政府の祝日。
今年は9月7日。
その夏のあいだに、
7月4日の独立記念日がある。
7月4日が過ぎると、売場は、
バック・ツー・スクール商戦に入っていく。
そして8月終わりまで続けられ、
レイバーデーにつながっていく。
その意味では、
誰が考えたかわからないけれど、
よくできた構想だ。
日本の祝日は、
ゴールデンウィークが終わると、
次が7月20日の海の日。
そして9月21日の敬老の日。
アメリカは、
メモリアルデーに夏が始まり、
レイバーデーに夏が終わる。
日本は、
そんな区切りがない代わりに、
二十四節気があって、
立夏と立秋が区切り。
ただし、立夏は今年、5月6日、
立秋は、8月8日。
本来の季節感から鑑みると、
ちょっと早い。
しかしこれは「早仕掛け」に持ってこい。
顧客に立夏、立秋を訴えて、
早仕掛けをする。
ただし、本当の季節感で言えば、
二十四節気の小満が5月21日、
処暑が8月23日で、
これを目安に、
夏の初めと終わりを設定してもいい。
もちろん衣替えは、
6月1日と10月1日。
これも衣料品にとっては、
ひとつの区切りだし、
6月1日から夏が始まり、
8月31日に夏が終わってもいい。
衣替へて風のきれいな日と思ふ
〈朝日俳壇 東京都・鈴木節子〉
そろそろ、その季節だ。
三鬼言ふ君等が夏を連れて来し
〈同 高崎市・菊池王雄〉
これは俳人・西東三鬼の本句取り。
おそるべき君等の乳房夏来る
本句の方が断然いいが、
どちらも立夏を詠む。
さて、私はラスベガスから、
ダラスへ単独行。
ダラスに着いたらすぐに、
ネブラスカ・ファーニチャー・マートへ。
5月7日にテキサスにグランドオープン。
5万3000㎡、2フロアの世界最大級店舗。
3月28日のこのブログで取り上げたNFM。
ミセスBがつくった会社は、
とんでもない飛躍を見せて、
このテキサス州ダラスに登場した。
そしてイーチーズの本店。
ここで今夜の食事メニューを買い揃えた。
最後にザ・フレッシュ・マーケット。
この店もアップスケール型で、
ユニークだ。
これからダラスでの私の活動が始まる。
一方、商人舎USAベーシックコースの52名は、
すでに帰国。
その帰国前日の報告を、
しておかねばならない。
朝8時半から、
各チームの商品調査研究の発表。
各チームが主力カテゴリーの主力商品を調査。
8店舗のPFグラフを作成し、
各社の政策を分析する。
AからJまで合計10チームが、
5分の持ち時間で、
次々に発表していく。
そのプレゼンの仕方も評価ポイントになる。
評価するのは私と事務局全員。
Aチームはドライグロサリー担当。
トマトケチャップを調べた。
発表ごとに、
グラフの作り方から、
分析の仕方まで、
私が注意点を指導する。
Fチームが調査したのは、
デリ部門のサンドイッチ。
三角サンドイッチとトルティアロールの2つを、
調べてくれた。
プレゼンごとに質疑応答タイムをとる。
私自身も質問し、
時には調査の仕方の不備を指摘し、
宿題としてやり直しを求める。
Gチームは、
カップ入りのオリジナルカットフルーツ。
青果部門の主力カテゴリーだ。
各チームがそれぞれのスタイルで発表する。
あっという間に持ち時間が過ぎていく。
それだけ中身の濃い内容のプレゼンが続く。
内容を精査し、
4チームを優秀賞として表彰し、
記念品を贈呈。
準優勝は、Bチーム。
星条旗を指し棒にした独自のプレゼンが光った。
そして最優秀チームは、
牛乳を調べたIチーム。
㈱ヨシヅヤの村井清人さん、寺西数芳さん、
㈱ユニバースの達中寿博さん、
㈱エレナの生田重利さん、
日穀製粉㈱黒岩大輔さん、
おめでとう。
そして前日に行われた理解度テストで、
S評価を獲得した6名も表彰。
左から㈱ヨシヅヤの小山真一さん、
関西スーパーマーケット㈱の山村隆徳さん、
㈱マツモトの三宅勝也さん、
㈱なとりの丸晃祥さん、
亀田製菓㈱の古泉明男さん、
そしてマツモトの松本幸男さん。
おめでとう!
発表・表彰で大いに盛り上がった後は、
座学では最後の講義となる、
私の第4回目のセミナー。
話したいことは山ほどあるが、
皆の自由研修を邪魔したくない。
だからきっちり12時に終了。
発表時点で、
私に宿題を出されたチームは、
研修が終わっても会議室に残り、
PFグラフを仕上げてくれた。
このグラフは帰国後、
全員に送り、
全員で共有する。
そうすると、
青果部門、ミート部門、乳製品部門、
冷凍食品部門、デリ部門、ベーカリー部門、
加工食品部門、菓子部門、
日用雑貨部門、HBC部門、
全10部門の調査結果を手にすることができる。
全員で共有したい。
それが私の願いだ。
かくて2015商人舎ベーシック研修会は、
最後の自由研修へと進んだ。
各自、各グループ、各社ごとに、
自分でまとめの研修をする。
もちろん夜は、
ショーやカジノやディナーを楽しむもよし、
議論しあうもよし。
私は空港までのバスの中で、
最後の最後の講義。
それで全て終了。
今回のラスベガス研修も、
最高に充実していた。
いつもいつも最高のレベルを目指し、
最高のレベルを実現させる。
ありがとう。
コミュニケーションの重要点は、
「経験の共有である」
(ピーター・ドラッカー)
では、みなさん、今週も、
Good Monday!
〈結城義晴〉