6月に入って、2日目。
いい季節だと言ったとたん、
南から雨雲の一団が、
日本列島に押し寄せた。
九州南部と九州北部は、
今日、梅雨入り。
明日も雨や雷雨。
西日本、近畿、東海北陸も、
関東、東北、北海道も、
明日は雨模様。
湿度が高く、蒸し暑い日が訪れる。
その明日に、私は、
フランクフルトに向かって飛び立つ。
今日はスーパークールビズで、
月刊『商人舎』6月号の責了作業。
そして6月の商人舎標語。
ダイバーシティ産業の強みを活かそう!
「男並み女を使え!」
故渥美俊一先生の言葉。
「なるほど・・・・・」
全員、目からウロコだった。
しかし結果としてこれは、
男社会を助長させた。
女性を排除した。
多様性を無視した。
時代はダイバーシティ。
いや、時代ではない。
小売業こそ、ダイバーシティ。
サービス業こそ、ダイバーシティ。
もともとダイバーシティ産業だからこそ、
かつてチェーンストアは標準化を強調した。
ダイバーシティ産業だからこそ、
最初はマニュアルが必須だった。
しかしそれは、
レース型競争下のセオリーだった。
コンテスト型競争下では、
ダイバーシティ産業の強みを活かせばいい。
象徴的な目標は、
女性が働きたい店をつくることだ。
女性が働きやすい会社に変えることだ。
女性が活躍する産業を構築することだ。
女性が働きやすい職場は、
誰もが働きやすい。
女性が活躍しやすい組織は、
誰にもそれぞれの活躍の場が約束されている。
女性がドキドキワクワク働く店は、
顧客がドキドキワクワクする。
女性がニコニコ働く店は、
顧客もニコニコする。
こんな店、こんな会社、
そしてこんな産業は、
人間の尊厳に対して、
真摯に向き合うことになる。
〈結城義晴〉
日本一働きたい会社は、
まず女性が、
日本一働きたい、
と思ってくれなくてはいけない。
その意味で、
裏も表もない会社、
言行一致の会社になる必要がある。
さて昨日から、
東京証券取引所が、
上場企業に対して、
「企業統治指針」の適用をスタートさせた。
いわゆる「コーポレートガバナンス・コード」。
その課題は、
社外取締役の選任。
社外取締役というからには、
経営からの独立性がなければいけない。
主要100社の調査では、
9割近くの上場企業が、
複数を選任している。
東証の指導が行き渡った結果だが、
昨年度より2割近くの増加。
社外取締役に占める女性の比率も、
100社中50人で、17%。
昨年が14%だったから、
3ポイントの増加。
私自身、ご指名をいただいて、
社外取締役を務めているが、
私なりのあり方を決めている。
第1に第三者の立場から客観的に、
経営をチェックすること。
そして直言すること。
これは社外取締役として、
当然の役目。
確かな経営者ならば、
励ますことのほうが多くなる。
第2にその際に、
会社独自のポジショニングが、
何よりも重要であること。
従ってそのポジショニングの観点から、
観察し、考察し、監督し、
意見を述べ、提案をすること。
もちろん私の知見は存分に提供する。
この6月から、
新しい時代に入ったことは確かだ。
さて最後に、
日経新聞の『キャリアアップ』に、
井阪隆一さん、登場。
セブン-イレブン・ジャパン社長。
「話すことよりエネルギーがいりますが、
根気よく話を聞くことが
何よりも大事です」
井阪さんの社長室のドアは、
常に開けられている。
「部下からの話を聞かずに
こちらが一方的に話していたら、
誰も情報を伝えてくれなくなる。
情報が入ってこなくなったら
『裸の王様』になってしまう」
「誰でも、いつでも、
話をしやすいように
していないといけません。
それが私の一番の仕事
といっても過言ではない」
その井阪さんの座右の銘。
「飛耳長目」
「ひじちょうもく」と読む。
「遠くのことを聞くことができる耳と、
遠くまでよく見える目を持っている、
つまり、物事の変化に鋭敏で、
情報の収集力にたけていること」
吉田松陰が松下村塾の塾生たちに説いた。
だから松陰自身、ペリーの船に乗り込み、
渡米を懇願する。
弟子たちも後に、イギリスに渡って、
世界最新の情報を得た。
木戸孝充、井上馨、伊藤博文など、
長州五傑と呼ばれた若者たち。
「飛耳長目」は、
石ノ森章太郎『サイボーグ009』で言えば、
003のフランソワーズ・アルヌール。
9人のサイボーグ戦士の、
9つの特徴の一つが、
「飛耳長目」
面白い。
井阪さんに話を戻すと、
「現場にいた時はそこまで
意識していませんでした」
「聞くことを実践するようになったのは
役員になってから」
ミドルマネジメントよりも、
トップマネジメントこそ、
話を聞かねばならない。
「直接会って顔を見て話せば、
相手の反応が見えます」
私はインタビューを、
本業の一つにしているが、
それはまさに、直接会って、
顔を見て、話を聞くこと。
ピーター・ドラッカー先生の、
「ポストモダンの七つの作法」
その第1がやはり、
「自分の目で見、耳で聞く」
井阪隆一、
吉田松陰、
そしてフランソワーズ・アルヌール。
もちろんピーター・ドラッカーも。
社内取締役も、
社外取締役も、
「飛耳長目」は必須である。
〈結城義晴〉