結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2015年08月13日(木曜日)

岩隈久志No-hitterの自分らしさと「出版流通返品4割」の重荷

盆の入り。
DSCN0118-5

空だけ見ていると、
秋の気配を感じさせられる。DSCN0119-5

そんな旧盆のとき、
嬉しいニュースが、
アメリカ・シアトルから届いた。

岩隈久志投手がNo-hitterを達成。
メジャーリーグのシアトル・マリナーズ所属。

No-hitterは、
日本ではノーヒット・ノーランという。
ヒットも打たれなかったし、
点も取られなかった。
つまり、無安打無得点試合。

凄い記録です。

岩隈は日本の楽天イーグルスから、
2012年にマリナーズに入団。

日本人投手のNo-hitterは、
野茂英雄投手以来、
史上2人目の快挙。

そのトルネード野茂は、二度、
ノーヒット・ノーランを成し遂げている。

ドジャース時代の1996年と、
レッドソックス時代の2001年。

岩隈のコメントがいい。
「先頭打者を打ち取っていこう、
自分らしさを出そうと思った」

自分らしさを出す。
まさにポジショニング。

大リーグのような個性豊かな競争社会では、
この自分らしいポジショニングがなければ、
生きぬいていけない。

岩隈は2004年シーズンオフに、
所属していた大阪近鉄バファローズと、
オリックス・ブルーウェーブの、
球団合併を経験している。

パリーグのチーム数が減るため、
楽天イーグルスが新規参入。
大阪近鉄とオリックスの選手たちは、
合併球団と楽天とに分配されることになった。
選手を分配するなど、
ちょっと違和感があるが、
企業が合併で人材を振り分けるようなもの。

岩隈は合併球団に分配された。
しかし労使「申し合わせ」を盾にとって、
これを拒否して、結局、楽天に入団。

岩隈は意志を通した。

意志を通して、
自分らしさを追求する。

その岩隈が自分らしいNo-hitter達成。
すばらしい。

おめでとう。

さて、昨日の日経新聞の『真相深層』は、
「出版、返品4割の重荷」

出版流通業界はかつてない苦境。

昨年秋に取次三番手の大阪屋が経営危機。
楽天や講談社など6社が救済に入って、
総額37億円の第三者割当増資を引き受け、
法的整理だけは逃れた。

そして今年6月、
四番手の栗田出版販売が倒産。
ほとんどの出版社が巻き添えを食った。

出版流通の首位は日本出版販売、
二位はトーハン。

私のいう「複占」状態。
マーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャーの闘い。

そうなると、どちらも減収基調となる。

そしてマーケットフォロワーが脱落するが、
それが大坂屋と栗田。

出版科学研究所の2014年調査。
出版物の推定販売額は1兆6000億円、
ピークの1996年から約1兆円も減った。

ちょうどこのピークのころ、私は、
取締役『食品商業』編集長だった。
そしてこのメディアがこのとき、
商業界の歴史上、最高部数を誇った。

以後、部数は落ちるばかり。

日本全体の期待は、
電子出版市場にかかるが、
こちらはまだ1400億円程度。

㈱商人舎は取次流通を使っていない。

私が社長を務めた㈱商業界はもちろん、
取次から書店へと、
雑誌や書籍を流通させている。

この出版流通が制度疲労を起こしている。
その原因の一つが「返品制度」。

「原則として書店は
一定期間売れなかった本を
取次経由で出版社へ返品できる。
この仕組みによって書店は
在庫リスクを減らし、
多彩な書籍や雑誌を店頭に置ける」

しかし返品の際には、
梱包や物流の費用を、
書店と取次が負担する。

そして返品は増え続けている。

2014年には、
日本全体の雑誌の返品率が、
初めて40%に達した。

チェーンストアの人々からすると、
この返品率は「社会悪」とすら思われるだろうが、
しかしこの4割は一般誌を含めての返品率で、
ビジネス誌や専門誌はもっともっと高い。

私の『食品商業』編集長時代は、
平均20%台前半の返品率で、
ときどき10%台になると、
乾杯した。

いまは、そんな奇跡が起こることもない。

そこで一部出版社は、
「責任販売制」に取り組む。
いわゆる「買い取り制度」。

記事は一石を投じる動きを紹介する。
第一は、角川とアマゾンジャパンの、
取次を介さない直接取引。

最短1日でアマゾンに商品を届ける。

角川は反アマゾンの急先鋒だったが、
それだけに両社の連携は衝撃を与えた。

セブン&アイとファーストリテイリングの、
あの提携に似ている。

角川は、2018年、最大155億円を投じて、
大型物流・製造拠点を設ける。
出版社として異例の規模だ。

対して、第二は、
楽天と講談社の共同改革。
こちらは大阪屋と栗田をバックアップし、
2016年中に経営統合させる。
そしてITに強い取次へと再生させて、
アマゾンに対抗する。

この15年間、国内の書店は8000店以上減少。
今、セブン-イレブンが、最大の書店となった。

出版流通が激変する。

マーケットニッチャーは、
ユニークなポジショニングが必須だ。

私の作戦は「網と紙の融合」。
それも無借金経営の自前主義。

ニッチャーだからこそ、
セグメントを絞り込んで、
ターゲティングし、ポジショニングできる。

思い切ったユニークなことができる。

いわゆる普通の出版社はすべて、
フォロワーにならざるを得ない。

現代らしい競争状況である。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.