昨夜、滋賀県の彦根から帰って、
喉が痛いし、咳も出る。
夏の疲れが出たか。
ほんとうに久しぶりのこと。
季節の変わり目。
みなさんも、気をつけて。
それでも今日は、
朝から横浜商人舎オフィス。
月刊『商人舎』10月号の座談会。
このところ、座談会に凝っている。
一人で考えて、論文など書くのもいい。
取材して記事を書くのもいい。
しかし数人の専門家が集まって議論し、
それぞれの知見をもとに、
協力して結論を導き出すのもいい。
私の隣から反時計回りで、
アイダスグループ代表の鈴木國朗さん。
ブルーチップ㈱取締役の中野茂さん、
第一営業統括部長兼第一開発本部部長、
兼とくし丸事業部長。
同営業企画本部本部長の鍋島丈夫さん。
むこう側の私の隣が、
㈱バウコミュニケーションズの野藤邦彦さん、
東京支社戦略企画部部長兼マーケティング室室長。
同・古川学さん、第2事業部第2営業企画。
3時間も議論して、
実に面白い内容になった。
良いこと、悪いこと、
ああでもない、こうでもない。
語り合うのはいい。
そういえば、
facebookのCEOマーク・ザッカーバーグ。
「いいね」ボタンは気軽に参加できる、
実にいいアイデアだが、
さらに「よくないね」ボタンも導入する方針を出した。
英語で「いいね」は「Like」、
「よくないね」は「Dislike」。
近く、試験運用が始められる。
ザッカーバーグの説明。
「Dislike」ボタンは、
「悲しみなどを共有するためのもの」。
投稿内容をおとしめたり、
否定したりするものではない。
座談会でも、
LikeとDislikeをどんどん連発して、
議論を行ったり来たりさせてよい。
さて、ファストフード業界が慌ただしい。
特に三占の牛丼業界の値引き。
東洋経済onlineに、
「牛丼3社が一斉値引き、
安値競争に逆戻り?」
きっかけは、今や、
マーケットチャレンジャーの吉野家。
「今だけ牛丼並盛300円セール」を、
10月1日から1週間展開する。
吉野家の牛丼並盛は380円だが、
それをきっちり300円にする。
この吉野家のキャンペーンは、
期間限定だけではなく、
地域限定でもある。
西日本地区の235店。
全体約1200店の2割程度。
この期間・地域限定値引きの要因の一つは、
地域会社からの声。
吉野家ホールディングスは現在、
地域ごとの事業運営を推進している。
イオンリテールが、
カンパニー制を敷き始めたのと似ている。
今年6 月には関西吉野家が発足したが、
その中で、西日本地区の各地域会社から、
割引販促の要望が寄せられた。
それに応えたもの。
しかし、吉野家は、
その声を実験に活かそうと考えた。
実験の意図は、
「牛丼300円」の絶対価格は、
存在するのか。
吉野家は昨年12月、
並盛300円を380円に値上げした。
大義名分は牛肉価格の高騰。
しかし客数は、
値上げ後8カ月経過した今年7月まで、
10%以上のマイナス。
河村泰貴社長の7月のコメント。
「“絶対価格”を求める層、
すなわち『牛丼並盛は300円以下』を望む方が
一定数いることがわかった」
今回の値下げは、この「絶対価格300円」の、
テストマーケティングの意味がある。
そこで、吉野家は、
地域限定・期間限定の値引きを、
プレスリリースした。
この吉野家に反応したのが、
マーケットリーダーのすき家。
ゼンショーホールディングスの事業会社。
こちらは興津龍太郎社長が、
9月25日に緊急記者会見。
9月29日~10月8日までの期間限定、
牛丼並盛を税込み350円から290円へ。
60円引きで、300円切り。
全国1960店全店展開。
すき家は吉野家から遅れて、
今年4月に並盛を、
291円から350円に値上げしている。
結果、4月~8月までの既存店客数は10.8%減。
もちろん客単価は11.1%増。
つまり、行って来いで、
既存店売上高は前年同期比0.9%減。
そこに、吉野家のプレスリリース。
すき家はそれに反応して、
翌日、社長の記者会見。
すると、マーケットフォロワーの松屋。
すき家の発表から3時間後、
「プレミアム牛めし」380円を、
10月15日~22日の期間限定で、
50円引きすると発表。
これはいかにも、
フォロワーらしい対応。
しかしそこで、
「3社一斉値引き」の構図ができあがった。
もちろん、背景にあるのは、
米国産ショートプレート部位の値下がり。
昨年秋に1キロ1000円を突破したが、
今年の8月後半から9月上旬は、
500円台後半から600円台前半。
問題は今後の展開にある。
第1に、果たして「牛丼絶対価格」は、
存在するのか。
そして第2に、それが、
300円という価格ポイントなのか。
そして第3に、各社の牛丼は、
コモディティアイテムなのか。
それともノンコモディティとなるのか。
それはテストマーケティングを意図した吉野家が、
結論を出すのだろう。
そしてもし、絶対価格があるとして、
それが300円だとしたら、
吉野家は企業生命をかけて、
ここに挑戦すべきだろう。
その覚悟があるかどうか。
そしてもし、絶対価格を堅持しても崩れない品質と、
その利益構造が出来上がったら、
マーケットリーダーの地位に
戻れるかもしれない。
一方、吉野家に反応したすき家は、
マーケットリーダーらしく、
全方位戦略を採った。
フォロワーの松屋が続いた。
吉野家・河村社長のコメント。
「輸入牛肉は現地相場や為替動向など、
さまざまな要因で決まる」
すき家本部の興津社長は、
「値引き価格を据え置くことはない」と明言。
こちらは期間限定の販促と考えている。
東洋経済の又吉龍吾記者は結論づける。
「恒常的な値引きで
消耗戦を繰り広げるのではなく、
独自性の強い商品を打ち出すことで、
客単価と客数の回復を図るのが本筋」
しかしこれは業界全体からの発想だ。
この発想はマーケットリーダーに味方することになる。
だから牛丼300円戦争は、
吉野家の動静にかかっている。
結城義晴著『message』から、
「一番の人気」。
たいていの場合、幸運とは、
神から与えられるものでも、
自分で勝ちとるものでもない。
相手に恵んでもらうものである。
人気も、敵の過失によって、
ころがり込んでくるものなのだ。
人気を維持すること。逆転すること。
それができるのは、謙虚に、
実力と人気の力関係を知る者だけである。
人気とは、「Like」or「Dislike」。
そこにかかっている。
〈結城義晴〉