環太平洋戦略的経済連携協定。
その大筋合意の全容が公表された。
外国との貿易では、
9018品目が対象となるが、
なんと95%が輸入関税撤廃。
日本の関税撤廃率は、
品目数ベース、金額ベースともに、
95%という高水準。
しかし日本以外の11カ国は、
品目数、貿易額ともに99~100%。
日本は12カ国で最も低い。
農林水産品は2328品目あるが、
51.3%が発効後即時、関税撤廃。
最終的には81.0%が関税撤廃。
農林水産品のうちの「重要5項目」は、
日本の「聖域」として交渉が続けられた。
(1)コメ(2)麦(3)牛肉・豚肉、
そして(4)乳製品(5)甘味資源作物(砂糖など)
この5カテゴリーは全体で586品目ある。
そのうちの174品目は関税撤廃。
ソーセージ、パスタ、粉チーズなど、
輸入実績がない品目、
国内生産者への影響がないと判断された品目。
野菜は主要100品目すべて、
関税撤廃。
重要5項目以外の農林水産物では、
31品目の関税が残る。
小豆など雑豆、コンニャク、
さらにシイタケ、ヒジキ、ワカメなど。
農林水産品の撤廃率は、
日本が81.0%であるのに対して、
他の11カ国平均は98.5%。
その面では、12カ国中、
一番の保護貿易国ともいえる。
一方、工業品に関しては、
関税の壁はほとんどなくなる。
日本から環太平洋11カ国輸出では、
99%超で関税がなくなる。
鉱工業品の87%が、
協定発効後すぐに撤廃。
協定発効後30年目までに、
99.9%の品目が関税撤廃。
輸入に関して、工業品は既に、
多くの品目で輸入関税がないが、
発効時に95%の品目で関税撤廃。
最終的にはすべての品目が関税なしとなる。
アメリカはこのTPPのリーダー国だが、
乗用車の2.5%の関税を、
協定発効から25年目に撤廃。
バスの2.5%の関税は10年目に撤廃、
トラックの25%の関税は30年目に撤廃。
化学製品の最大6.5%の関税は、
一部を除いてほとんど即時撤廃。
牛肉やコメにかける輸入関税も、
最終的に撤廃。
環太平洋はすごい勢いで、
関税がかからない経済圏に変貌する。
鎖国を解いた明治維新以降、
日本は一貫して貿易立国である。
これは小学生も学校で習う。
その日本は観光立国でもあるし、
それらをさらに強化して、
国を維持向上させようとする。
つまり生活産業と観光産業が、
基幹産業になるという構図だ。
そのための、
環太平洋12カ国の、
戦略的経済連携協定。
甘利明担当相、
事務方も含めて、
大きな成果を上げた。
社会的ルールの大きな変わり目には、
想像を超えた大きなチャンスがある。
だから商品部の国際化は必須。
その際、ピーター・ドラッカーの
「ポストモダンの七つの作法」。
何よりも「自分の目で見、耳で聞く」
この姿勢で、吟味し、調達する。
商社や問屋への丸投げは、
絶対に避けねばならない。
1品1品、わが社の商品として、
大切に、ていねいに、
それでいてスピードアップして、
育てる。
販促に関しても、
TPP関連の打ち出しは、
頻繁に繰り返されるべきだろう。
顧客たちは心躍らせて、
それを待ち望んでいる。
その際、何度も言うけれど、
丸投げはダメ。
これだけは釘を刺しておこう。
もちろん、コンサルタントへの丸投げも。
さて私は、福岡から帰って、
朝一番で熱海へ。
いつものように、
駅前の機関車の前で写真。
そしていつものニューウェルシティ湯河原へ。
午後1時、
商人舎ミドルマネジメント研修会
開始。
もう第8回になる。
始めの講義は、
結城義晴。
私たちは、知識商人を養成する。
その知識商人は、
脱グライダー商人でなければならない。
。
そして自立・自律の商人たちが、
日本の商業を現代化させ、
基幹産業とする。
私は初めに橋本武さんの言葉を書いた。
灘校の名物教師。
「すぐ役立つことは
すぐ役立たなくなる」
競争が激化し、高度化すると、
この言葉はますます重みをもってくる。
TPPによって、
マーチャンダイジングが変わる。
しかし、それは国際競争が、
われわれの店頭で展開されることを意味する。
そしてその競争は激しくて、高いレベルだ。
オーガニック商品も、
どんどん入ってくる。
日本にオーガニック・ブームがやってくる。
私の講義は、どんな時も、
倉本長治の『商売十訓』から。
古き言葉を、新しく理解する。
倉本長治は、なんと、
ピーター・ドラッカーと、
シンクロしているのだろう。
語りながら、何度も、感動する。
最後は「賢者は歴史に学ぶ」
知識商人こそ、
歴史に学ばねばならない。
1時間ずつの2講座が終わると、
30分のコーヒータイム。
みんな、ちょっと一息。
元気です。
明るい。
打ち解ける。
そして再開。
鈴木哲男講師。
商売をエンジニアリングする。
その日本の第一人者。
月刊『商人舎』にも毎月、
健筆をふるってくださる。
先月はヤオコー特集で、
「鈴木哲男の現場徹底分析」
現場第一主義・商品第一主義・お客第一主義で
ヤオコーの売場づくりとMDを批評する
今月は「鈴木哲男の正論」
「チラシ広告効果なし」の俗論を正す
現場第一主義の記事や評論は、
他の追随を許さない。
そして講義も、
現場主義に貫かれている。
だから極めて有益。
52週マーチャンダイジングは、
本物の先生から学ばねばならない。
そのエッセンス。
鈴木講師は、
プロモーションとストアコンパリゾンまで、
3時間30分の3講座。
ふんだんな資料を基にした講義は、
あっという間に終わってしまった。
しかし中身はこってり。
ありがとうございました。
そして午後8時から夕食。
ウェルシティ湯河原の食事は、
豊富で美味。
疲れ切った頭脳に、
心地よい栄養補給をしてくれる。
食事が終わると、
自習室や自室で、
全員が復習。
午後11時を過ぎても、
ごらんのとおり。
明日の朝、理解度テストがある。
テストを受けるために、
真剣に復習する。
それが一番、学習効果が高い。
もちろん派遣されたメンバーは、
各社の腕利き揃い。
その選りすぐりの腕利きたちが、
この3日間だけは、
集中的に頭を使う。
ピーター・ドラッカーが言い残す。
知識専門家、知識労働者は、
「ブレインズ&ハンズ」を使う。
つまり脳と手。
自分で考え、行動するためには、
基礎的な知識が必須だ。
それを学ぶのが、
商人舎ミドルマネジメント研修会。
濃密な学習とともに、
ひとり一人の夜が、
深々と更けていった。
(つづきます)
〈結城義晴〉