露の世は露の世ながらさりながら
〈小林一茶〉
一茶、56歳。
初めて授かった長女を亡くした。
そのときの一句。
さてこの年末年始商戦。
日経新聞によると「全般に堅調に推移」した。
まず百貨店はほとんど2日が初売り。
高島屋の2・3日の売上高。
前年実績を1.1%プラス。
やはりインバウンド消費に牽引された。
なにしろ免税品の売上高は、
前年比50%増加。
福袋の売上げは2%増。
三越伊勢丹は今年から、
初売りを3日にした。
伊勢丹新宿本店は、
昨年の初売り初日2日と比べ9%増。
だから3日初売りは成功。
ポジショニングが確立された店は、
1日に初売りしようと、
2日にしようと、3日にしようと、
影響はない。
イオンはグループの国内約2500店、
元旦から初売りをして、
その1・2・3日の売上高が、
前年同期比で2桁の伸び。
昨年から力を入れた食品部門は絶好調。
福袋やおせちなどの季節商材がよく売れた。
話題のイオンモール岡山。
一昨年12月オープン。
3日の撮影だが、
福引には長い行列。
イオンスタイルの食品売場には、
福袋コーナーがつくられ、
各種の福袋が賑やかしく並んだ。
お菓子の福袋。
お茶の福袋。
元旦から営業開始するならば、
福袋はどんどん新しい工夫を入れねばならない。
イトーヨーカ堂も食品の売上高は5%増、
いなげやも総売上げは7%伸びた。
ただし、変調の兆しもある。
ヨドバシカメラ新宿西口本店。
1日元旦の初売りで、
訪日客の来店が昨年比で減じた。
藤沢昭和社長のコメント。
「昨年秋くらいから中国人の購入額が減っている」
中国経済減速の影響を注視する。
日本空港ビルデング鷹城勲社長の言。
羽田空港などで免税店を展開。
訪日中国人の消費に関して、
「化粧品は好調だが、昨年10月以降は
高級ブランドは売れ行きに陰りが見える」
商売は「顧客の変化」に対応すべきもの。
中国の経済も中国人の消費・購買も、
変わってきて当たり前。
ただし、この店しかないとなれば、
日本人も中国人も、
この店に来る。
ポジショニングだ。
新宿伊勢丹には強烈なそれがあって、
ビックカメラや免税店には、
それが希薄だということだ。
さて、アメリカ小売業ホットトレンド。
昨年暮れにワシントン・ポスト紙が、
5つの予測。
私なりに順番を変えて解説しよう。
第1は、小規模小売業の成長。
それも年商5000万ドル(60億円)以下企業。
例えばアパレルでも、
アバクロンビー&フィッチやコーチなど、
これまでの有名ブランドが敬遠され、
ユニークなニッチ・ブランドが好まれる。
つまりマーケット・ニッチャーが伸びる。
第2は、「ハイパー・パーソナライズ」が、
グロサリーの新しい販売戦略として登場する。
ミレニアムの年長世代を中心に、
高価な外食を避ける傾向が強い。
かといって、マクドナルドなどファストフードは、
健康志向によって避けられている。
つまり需要と供給に食い違いが出ている。
スーパーマーケットは、
このニッチにフォーカスして、
新しい商品やサービスを提供。
例えば「ハイパー・パーソナライズ」。
グルテン・フリー、ヴィーガン、
DNAベース・ダイエットなどが対象となる。
外食産業は小売業の水先案内人だが、
すでにこういった顧客を対象に、
シークレット・メニューを提供するレストラン、
常連客だけの秘密の入口を持つレストラン、
などが登場している。
第3に、ダイナミック・プライシングの普及。
小売業大チェーンは、過去数年、
電子コマースの改善に投資してきた。
そのテクノロジーを実店舗に役立てる。
例えばリアル・タイムのプ ライシングで、
需要や在庫状況に応じて、
瞬時に売価を調整するシステムなど。
既にオンライン販売では、
当たり前になっている。
しかし実店舗での応用は難しかっ た。
それがEコマースでのイノベーションによって、
実店舗の生鮮食品販売などで、
最初に取り入れられる。
販売期限残り日数に応じた売価設定、
こんな技術が登場する。
もともと生鮮食品の見切り販売などは、
日本の技術がより高度で、
これはアメリカが日本を、
真似ることになるかもしれない。
ただし彼らは絶対、
システマチックに迫ってくる。
そこに学ぶところがあるかもしれない。
第4は、モバイル・ペイメントの普及。
携帯電話をモバイルというが、
スマホやタブレットを使った支払い・決済のこと。
米国では昨今、
クレジットカードの情報漏洩問題が頻発した。
そこでチップ付きクレジットカードが普及。
日本のFelicaと同じような機能を有するものだ。
しかし、このカード処理は、
従来のカードのスワイプ方式に比べて、
数秒余分にかかる。
それを嫌う消費者も多い。
それがモバイル・ペイメント普及のきっかけの一つ。
ウォルマートやターゲットが、
モバイル・ペイメントを導入していて、
それに拍車をかける可能性がある。
最後に第5は商品問題だが、
「シラチャ・ソース」の大ヒット。
シラチャ・ソース(Sriracha sauce)は、
タイ王国のチリソースのような調味料。
とうがらし、酢、ガーリック、砂糖、
さらに酸味料、増粘剤、調味料を原材料とする。
シーフードの味付け調味料として開発されたが、
今ではタバスコ代わりにも使われ、
用途が広がっている。
タイ王国チョンブリー県に、
シー・ラチャ郡(Si Racha)があるが、
それがネーミングの由来。
フイフォン・フード(Huy Fong Food)社のブランド。
そこでハインツは、
シラチャ・フレーバーのケチャップを発売、
タコ・ベルやピザ・ハットでは、
シラチャ・ソースのメニューを加えている。
今年はさらに大ブレークする。
アメリカの5つのトレンド。
当たるも八卦というよりも、
「すでに起こった未来」と見た方がいい。
日本の三が日の反省は、
素早く済まして、
明日に向かいたい。
〈結城義晴〉