上海二日目。
黄浦江の対岸には外灘。
反対側の浦東にはテレビ塔。
大雪の日本列島に対して、
中国大陸は曇り空。
日経新聞一面トップで、
「逆風の世界経済」の連載スタート。
その第1回は、
「中国不安、震源は製造業」
真っ先に出てくるのが、
セメント会社の華潤水泥。
中国国有複合企業「華潤集団」傘下。
14日には、同社の香港市場の株価は、
上場来の安値。
上海株式市場の総合指数は、
昨年末から18%下落。
「かつては中国の高速成長を支えた製造業」。
いまや「古い中国」を代表する存在。
しかし中国指導部の青写真には、
「新しい中国」の芽も出ている。
インターネット通販だ。
今、3割を超える拡大。
「国内総生産に占めるサービス業の比率は、
1990年代初めの30%台から
足元は50%超まで高まった」
中国は「個人消費や技術革新が
けん引する成長モデルへの道を
探りつつある」
そして「減速したとはいえ、
15年の実質成長率は6%台を維持」
その個人消費を支える小売業。
先の「華潤集団」の小売部門は、
ウォルマートと合弁展開するが、
その総合スーパー21社の株式を、
25~35%保有し、
残りをウォルマートの中国法人が握る。
売却額は33億元(約620億円)。
ウォルマート中国のコメント。
「今回の決定は経営に影響はない」
今後も店舗運営を続ける。
中国の小売市場は年2桁で伸びている。
しかしそれはEコマースの、
想像を絶する成長に負う。
日経記事では、
「実店舗を運営する
従来型の小売業は不振が続く。
なかでも総合スーパーは、
衣食住にかかわる商品をそろえる一方、
品ぞろえなどでネット通販に劣り、
各地で閉鎖が相次いでいる」
果たしてそうなのか。
上海で現場を見た。
まずウォルマートの新店。
入口には春節向けのプロモーション。
食品の什器は木製に変わった。
バルク販売も木製什器。
青果部門もすっきりした。
相変わらずローコストオペレーションを志向する。
しかし、やや高価格帯も併せて品揃えし、
在庫が少なくとも目立たない什器を開発。
それでも低価格を打ち出すのは、
同社のポリシー。
精肉バックヤードは顧客の目にさらす。
鮮魚は中国の販売の特徴で、
氷詰め。
子供服もカラフル。
自転車はアメリカ本国と同じ売り方。
ぬいぐるみの売場なども・・・・。
かわいい。
ウォルマートは可もなく不可もなし。
ドイツのメトロは、
会員制キャッシュ&キャリー。
ドイツの企業らしく、質実剛健。
春節はど派手。
広い店内のラック陳列で、
徹底して低価格・低コスト。
巨大なラックが天井まで伸びて、
在庫をストックする。
食品も単品大量販売。
しかし生鮮食品は一目で、
アップグレードしたことがわかる。
陳列やプレゼンテーションも、
アップスケール。
鮮魚も水槽や氷詰めが、
2年前より進化した。
ローコストなりの進化。
それが重要だ。
調理教室なども設置して、
顧客にインスピレーションを提供する。
一方、イギリスのテスコ。
入口の春節プロモーションは目立つ。
しかし青果は変わらない。
鮮魚も鮮度が悪い。
精肉は相変わらずの、
グロテスクな市場型の売り方。
しかし年末商戦にもかかわらず、
客数が極端に少ない。
日経新聞の記事は、
テスコに関しては当たっている。
そしてフランスのオーシャン。
巨大なハイパーマーケット。
こちらも入口は正月販促展開。
入口付近にプロモーションコーナー。
手前が家電など非食品。
靴売場も上海最大級。
奥のどん詰まりは、
やはりプロモーションスペース。
そこに子供用品売場。
スロープを上がると食品。
主通路沿いに巨大な島陳列。
菓子のばら売り方式は、
中国の特長。
そして青果部門。
このスポットライトは、
他のチェーンでも多用されていて、
商品のグレード感を引き立たせる。
冷蔵冷凍食品が、
ハイパーマーケットの巨大な売場に
マッチしている。
そして鮮魚売場。
精肉と惣菜売場はにぎわっている。
温惣菜は中国の自由市場の雰囲気。
食品フロアのメイン通路。
レジチェッカーは椅子に座っていて、
これはヨーロッパ方式。
オーシャンは、
台湾出身のRTマートと合弁していて、
ハイパーマーケット業態では、
群を抜いている。
オーシャンが低価格路線、
大潤発のRTマートがややアップグレード路線。
それによってマーケットシェアを高める。
その大潤発のRTマート。
やや高級住宅地に立地するが、
客数が他の総合スーパーとは異なる。
ベーカリーからはいい香りがする。
豆製品の品ぞろえも豊富で、
しかもおいしい。
この繁盛ぶり。
青果部門は一段と進化した。
このボリューム感とカラーコントロール。
この売場は絶対に、
ホールフーズをモデルにしている。
こちらはニューヨークの、
ガーデン・オブ・エデンか。
中国人が好む紫色を、
上手に配した売場。
葉物の鮮度感も見事に演出。
精肉はダイナミック。
そして鮮魚売場はどこよりも美しい。
天井に網を張って、
演出効果抜群。
春節飾りは一番、密度ある演出。
衣料品も中国人好みのカラーコントロール。
そして最後に家電売場も、
グレード感を引き出している。
中国経済は低迷を喧伝されている。
しかしGDPは6.3%の成長率で、
国民・市民の生活レベルは、
確実に向上している。
それをRTマートは、
うまくとらえて、売場に表現する。
そんな店は大繁盛。
しかし2年前とまったく変わらない店からは、
生活向上した顧客は去っていく。
日本の報道は、
我が国の輸出入がいかに打撃を受けるか、
といった自分本位ばかりだ。
上海の現地小売業の代表業態は、
やはりハイパーマーケットで、
そこには明暗がくっきりとでてきた。
しかし、生活が向上し、
ライフスタイルが多様化するときには、
それをとらえるマーケティング力と、
イノベーション力が問われる。
段々、日本やアメリカに近くなってきた。
その変化のスピードは、
日本を凌ぐものだ。
〈結城義晴〉