明日は大寒。
寒さが最も厳しくなるころ。
しかし、上海の朝は靄っている。
昨日1月19日の朝だけれど。
その19日の夕方、
上海浦東国際空港。
㈱万代社長の加藤徹さんと、
2泊3日の下見ツアーを終えて、
固い握手。
そして6時過ぎの便で、
私は羽田空港へ。
加藤さんは関西国際空港へ。
さて、今朝の朝日新聞『天声人語』
故金子哲雄君を取り上げてくれた。
本当にうれしいことだ。
「流通ジャーナリストの故金子哲雄さんに
『「激安」のからくり』という著書がある」
「安売り店の良しあしをどう見分けるか。
ゴミ箱をチェックする、と書いている」
「ゴミがあふれている店は駄目。
従業員の目が行き届いていない証拠だ。
一事が万事と、金子さん」
CoCo壱番屋のビーフカツ不正転売事件。
ココイチのカツから、マルコメみそ、
さらに生協の「びんちょうまぐろスライス」、
イオンの「チーズの出るソーセージ」、
セブン&アイの「豚バラ蒲焼き」、
そしてローソンの「炭火焼鳥もも」「からあげクン」まで。
これはもうほとんどの企業の廃棄商品が、
転売されたのではないかという疑念を、
消費者に持たれてしまいそうだ。
愛知・稲沢市の産廃業者「ダイコー」から、
岐阜・羽島市の「みのりフーズ」に横流しされ、
その後、卸売業者を通じて、
繰り返し、転売され、
小売店頭で販売された。
もちろん「闇の廃棄食品総合商社」など、
もってのほか。
絶滅すべき存在だ。
しかし、小売流通全体の問題もある。
まずは廃棄を出してしまうという問題。
その廃棄物がいかに廃棄されているかを、
追跡するという問題。
さらに転売されてきた「激安」仕入れ値の商品を、
買って、売ってしまうという問題。
惣菜化が進むと、
こういった問題が発生しやすい。
産業を挙げて、
問題の根底から解決したい。
しかし恐ろしいのは、
商品だけではないことだ。
考え方や理論やノウハウも、
廃棄物並みに平気で転売する輩がいる。
それは淘汰されるに違いないが。
さて、日本政府観光局(JNTO)の発表。
2015年の訪日客数の推定値は1973万人。
日経など「2000万人時代」と煽る。
前年に比べて、47%増。
政府は「20年に2000万人」を目標とするが、
2013年に1000万人を突破して、
昨年が1973万人だから、
もう今年は、2000万人達成確実。
その訪日客のインバウンド購買は、
過去最高の3兆4771億円。
中国からの訪日客数は499万人で前年比2倍増。
韓国は400万人で45%増、
台湾は367万人の30%増。
アメリカも100万人を超えて103万人、16%増。
中国では、
日本という国と、
日本の商品に対して、
異常なくらい関心を見せている。
私たちの上海訪問でも、
それはひしひしと感じられた。
昨日は、朝から、
永輝超市の上海本部を訪問。
創業者でファウンダーの張さんと、
ディスカッションした。
英語表示ではZhang Xuanningさん。
張さんは1970年生まれの46歳。
25歳のとき福建省で、
1500㎡のスーパーマーケットを創業し、
驚くべきスピードで成長を遂げてきた。
現在、永輝超市は全土に400店を展開し、
昨年度の伸び率は26%。
もう1兆円規模の小売業となる。
万代の加藤さんと、
経営者同士の話し合い。
私が間に入って、
日米の最新動向や流通理論を解説した。
張さんは間違いなく、
中国流通業のトップになる人間だ。
話をしていて、それが鮮明に感じられた。
その考え方を、
加藤さんも私も感心しながら聞いた。
徐良富さんは、
永輝超市のストラテジック・パートナー。
日本語堪能で通訳をしてくれた。
アメリカやイギリスの小売業の話では、
ベンチマークする企業など、
互いに認識を同じくした。
1時間半ほどの会談はすぐに終わってしまい、
上海オフィスを案内してもらった。
西安寺を見下ろす絶景の事務所。
その後、同じビル内のレストランで飲茶。
ティンタイフォン。
ここでも加藤さんが質問し、
張さんが答え、
張さんが質問し、
加藤さんが答えた。
私もいくつかの提案をした。
最後に張さんと加藤さんが固い握手。
私も握手。
「これからも応援してください」
張さんはそう言った。
「もちろん」
私は答えた。
永輝超市の最新フォーマットは、
ブラボー。
生鮮食品の鮮度と品質は、
上海や中国の小売業として、
ずば抜けている。
それを安く売る。
消費が向上している中で、
「良いものを安く売る」
だから顧客から絶賛される。
しかも永輝超市は、
スーパーマーケットを基本にしている。
グロサリーも良いものを安く。
顧客が群がっている。
ハイパーマーケットでは、
台湾系の大潤発。
スーパーマーケットでは、
福建省出身の永輝超市。
バルク売場のこのカラーコントロール。
店長と二人の副店長に案内してもらって、
感謝。
若い人材ばかりの永輝超市。
全員で写真。
一方、一昨日は、
正大集団を訪問。
正大集団はタイのCPグループの中国企業。
そのCPはタイ最大のコングロマリットで、
農業や食料品加工、食品小売業を中核とし、
通信、不動産など8分野で事業展開。
ASEAN各国や中国を中心に世界13カ国、
ロンドン証券取引所上場企業。
周さんは上海CPのCEO。
英語ではJoe Zhouさん。
中国のウォルマートでCMOを経験し、
この会社ではCEO。
CMOはチーフ・マーケティング・オフィサー。
まずビデオでCPの実力を見せてもらった。
それから会談。
周さんは、日本のいい商品を、
何とか仕入れたいと積極的に詰め寄ってきた。
加藤さんと私はそれを聞いていた。
私は「コールドチェーンの充実」が、
中国流通業にとって、
何よりも重要課題だと指摘した。
周さんも大いに納得。
最後に三人で写真。
そして全員集合。
今回は伊藤忠商事と日本アクセスのみなさんに、
本当にお世話になった。
感謝しておこう。
その後、周さんにご案内いただいて、
オフィスの下の店舗へ。
ロータス(卜蜂蓮花)。
ハイパーマーケットを展開してきた中国のロータス。
2012年オープンの5000㎡の店舗で、
外食とスーパーマーケットの融合型。
永輝超市はミドルクラスをターゲットにしたが、
ロータスは高級志向。
むしろこちらの方が中国では当たり前。
寿司の商品化は凄い。
魚のプレゼンテーションも。
惣菜も対面方式で充実。
積極的に試食を展開。
冷凍食品売場は洗練されている。
天井はスケルトン。
そしてレジ。
流通業の発展途上は、
まず百貨店と市場の時代が第一期。
第二期にはかならずハイパーマーケットが発達する。
総合スーパーである。
これは百貨店の大衆版。
ディスカウント・デパートメントストア。
その後、第三期に至って、
食品スーパーマーケットが遅れてやってくる。
それが今の中国だ。
その先頭を永輝超市が走っている。
ロータスもそれを追っている。
その両トップと会談。
その若さ、エネルギー、理論。
ちょっと驚かされた。
日本も「闇の廃棄食品総合商社」などに、
一喜一憂している暇はない。
そんなものはさっさと根絶して、
未来を見なければいけない。
つくづくとそれを感じた。
最後に、二日目の夜の話を少し。
焼き肉レストラン。
上海一の印刷会社XinXinを経営する吴さんのお招き。
卵の茶わん蒸しにキャビア。
はじめから美味。
伊勢エビ。
これはフレンチ風。
ナマコは中華風。
そしてフォアグラにキャビア。
調理長が直接、担当してくれて、
「料理の鉄人」並み。
これも厳選されたワインで楽しんだ。
食後は、バースデーケーキ。
JTB西日本の小阪裕介さんの誕生日。
みんなで、ハッピーバースデーを歌って、
お祝いした。
小阪さんは商人舎USA研修でも、
いつも新しい提案と素晴らしい配慮で、
成果を最大化してくれる。
おめでとう。
ありがとう。
10年といわず、
2020年までに、
中国流通業は日本に迫ってくる。
いや、追い越しているかもしれない。
特に永輝超市の張さんの発言は、
実にそのことを物語っていた。
詳細は月刊『商人舎』で紹介しよう。
3月号になるだろうか。
まだまだ、会わねばならない人間が、
世界にはたくさんいるのだ。
〈結城義晴〉