日経夕刊の『ウォール街ラウンドアップ』
ニューヨーク特派員の佐藤大和記者が書く。
「ウォルマートとヒラリー氏の因縁」
アメリカ上場小売業の1月期決算発表。
真っ先はウォルマート・ストアーズ。
「エブリディ・ロー・プライス」を実現して、
世界最大の小売業、
さらに世界最大の企業に成長した同社。
「株価もEDLP」と皮肉る。
「2015年通年で28%下落し、
ダウ平均採用銘柄で30番目の不振」
ダグ・マクミランCEOが、
「アソシエ―ツの士気を高めて
顧客サービスを改善する」と、
時給1ドルアップの賃上げを断行。
全米120万人の従業員を対象に、
「社内最低賃金」を10ドルに引き上げる。
昨年4月の9ドルへの引き上げに続く第2弾。
このブログでも
Daily商人舎でも報道した。
しかしそれが利益を圧迫する。
それが他社に影響を与えて、
賃上げの流れが広がる。
それは今秋の大統領選挙で、
与党・民主党には有利。
つまりヒラリー・クリントン候補には、
追い風のはず。
しかしさかのぼれば、1986年から6年間、
クリントン女史は
ウォルマートの取締役だった。
「有能な弁護士としての手腕も買われ、
同社初の女性役員に抜てきされた」
しかしそのウォルマートは昔も今も、
「反労働組合」の急先鋒。
日本の連合もウォルマートを敵対視する。
クリントン女史は、
バーニー・サンダース上院議員に、
激しく追い上げられていて、
その意味では「労組の固定票」がほしい。
だから表立って、
ウォルマートとの関係を主張すると、
クリントンの労組票が逃げていく。
ウォルマートが大統領選に絡む。
おもしろい。
さてラスベガスの二日目。
砂漠の街に朝日が昇る。
ストリップのホテルがオレンジ色に染まる。
朝8時集合で、ホテル前の全員写真。
「やるぞ」という気合が出てくる。
その後、第1回講義。
第3回目のマルトの研修会。
基本的に同じストーリーで語る。
それによって、、マルトの幹部から、
店長、チーフまで、
一貫した考え方となる。
それでも、みな、選ばれたメンバー。
実に真摯に聞いてくれた。
講義が終わると、
ウォルマートのネイバーフッドマーケットへ。
同社が今、最も力を入れているフォーマット。
1100坪の食品スーパーマーケット。
星条旗が下がっている。
入口右手はデリ売場。
そしてピカピカの床の青果部門。
エブリデーロープライスが基本。
ネット販売の「ピック・アップ」カウンター。
amazon対策にも怠りはない。
レギュラーレジとセルフレジの併用。
このあたりはオーソドックス。
株価の状況が悪いのはいつものこと。
しかし店頭が悪いのは絶対に許されない。
一応のレベルではある。
次にトレーダー・ジョー。
待ちに待った訪店。
入口を入ると、
トレーダー・ジョーのあの雰囲気。
いいねえ。
ワイン売場は整理され、
アップグレードアイテムが増えた。
レジは相変わらず込んでいて、
それでもフレンドリー。
もう1店、トレーダー・ジョー。
こちらも個店対応ではあるが、
標準化が行き届いている。
ワイン売場も同じように、
脱チャールズショー戦略。
キャプテン・ブランドンにインタビュー。
グッドクェッション連発で、
キャプテンも満足そうだった。
マルト社長の安島浩さんと握手。
私も握手。
いまやホールフーズの天敵の観があるのが、
スプラウツファーマーズマーケット。
ここでもバックヤードで、
トッド店長にインタビュー。
ボンズから8年前に転職してきたが、
この会社の成長ぶりに、
大いに満足して、
リーダーシップを発揮している。
ランチはシェイク・シャック。
メニューはニューヨークと変わらず。
注文を受けてから、
製造に入る。
店内はシック。
このハンディターミナルがなると、
商品を受け取りに行く。
そして私はシェイク・スタック。
チーズバーガーとシュルームバーガーの、
マッチングアイテム。
全員満足でした。
午後は、ラスベガスの単独店へ。
グレイザーズ。
米国東部で、
スーパーマーケットを経営していたのが、
グレイザーさん。
引退してラスベガスに住んだが、
やはり血が騒いで、
1店舗だけ店を出した。
だからニューヨーク・デリが売り物。
単独店だが、1500坪の大型店。
売り物は生鮮食品。
そしてサービスデリの対面売場が並ぶ。
単独店でも、
違いを出すことで、
堂々と競争する。
それがコンテスト型競争。
今日はスーパーマーケットの、
コンテスト型競争と、
ポジショニングを学ぶ日。
最後はウィンコフーズ。
なぜか店頭には半旗。
それでも店は相変わらず、
安くてきれい、
安くてフレンドリー、
安くて良い。
入り口のウォールオブバリュー。
お買い得品の壁。
そして青果部門。
7900㎡の広大な売場。
倉庫型スーパーマーケット。
スーパーウェアハウスストアと呼ぶ。
ゴンドラはレジに垂直に設置され、
右端から左端まで見通せる。
そしてレジ前の圧倒的なパン売場。
レジはサッカーサービスはしないけれど、
安さが実現されていて、
顧客は誰一人不満を言わない。
スーパーマーケットにも、
さまざまなフォーマットがある。
その違いこそが、価値を生む。
中道で凡庸な店は、
見向きもされない。
それを学んだ1日だった。
朝の講義の内容が、
店を訪問することで、
肌でわかる。
それがマルトの研修会だ。
ストリップに戻ってくると、
もう暗い。
ディナーはベネチアンのイタリア料理。
他との差異をつくる。
それが実に気持ちいい。
自分らしさを発現させることができるからだ。
アメリカの競争がコンテスト型になって、
誰よりも顧客たちが喜んでいる。
それが消費大国アメリカを支えている。
(つづきます)
〈結城義晴〉