結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年03月04日(金曜日)

樹原涼子「ピアノランド」とSteve Jobs「Stay hungry!」

熊本に宿泊して、
4月並みの暖かさを味わう。

なんだか、ずいぶん得した気分。

損得より先に善悪を考えよ。

それでも、得した気分は、
いいもんだ。

夕方のANA便で、
羽田に帰る。
IMG_7922-66

窓の外は靄っている。IMG_7923-6

しかし、羽田空港についたら、
今度は急遽、予定変更で、
再びANAに乗り換えて、
大きな天秤を振るように、
岡山空港へ向かう。

アメリカをあっちこっち、
行ったり来たりしているような感じだ。

さて、一昨日、感心したこと。
日経新聞『旬の人時の人』
樹原涼子さん。

ピアノ教本「ピアノランド」作者。
音楽之友社刊。
index

出版25周年を迎えて、
シリーズ発行部数は、
なんと180万部を超える。

1年に7万2000部を25年間続ける。
凄い発行物だ。

私も独学でおさらいしたことがあるが、
世界のピアノ教則本は、
何といっても「バイエル」。
楽譜柄ノート・子供のバイエル1
それを発行部数で抜いた。

そして、今、
ピアノ教本の新定番の地位を得た。

「なんで、教えてくれなかったんだ」
そう思えるくらいだ。

とはいっても、私の場合、
50年以上も前のことだから、
「ピアノランド」は存在しなかった。

樹原さんの動機は、
「バイエル」中心のレッスンへの疑問。

それがピアノを教え始めた時の思いだ。

教則本「バイエル」は、
フェルディナント・バイエルによって、
1850年に発刊されたとされる。
ドイツの作曲家でピアニスト。

作曲家としての評価はあまり高くはない。
しかし教則本は特に、
日本や韓国で圧倒的に使われている。

全部で106曲と予備練習曲。
それぞれの曲に題名はない。
番号があるだけ。

最大の問題点は、
このいかにも「教科書然」としたところ。

曲数は多いし、番号の連続で、
途中でどうしても、
モティベーションが失せる。

右手が主旋律、左手が伴奏、
このパターンが多い。

最初の関門はバイエル16番。
ハ長調。

右手は、
ドミレファミドレー ドミレファミレドー
レミドソファミレー ドミレファミレドー

左手は、
ドーソードーソファ ミドファレソードミ
ファソミーレドソファ ミドファレソード

懐かしいなあ。

アメリカやヨーロッパでは、
バイエルは少数派。

樹原さんは感じた。
音楽は古い。
なにより、子どもたちは、
楽しんで学んでいない。

「日本の子どものために
日本の作曲家が作らなくてどうするの」

始めから両手を使う。
タイトルと歌詞がある。
連弾の伴奏がついている。
クラシック以外のジャンルもカバーする。

さらに「ピアノランド」の本づくり。
イラストレーター岡久留実さんをはじめ、
エディターとデザイナーの4人で、
Beansというチームを組んだ。

このチームで、
「絵本のように美しい曲集」をつくった。

さらに音楽之友社からの出版が決まり、
全国を回ってピアノランドのセミナーをした。
セミナーでは弾き語りをした。

そうしたら、瞬く間に、
ベストセラーになった。

このプロセスは、
「ポジショニング戦略の要件」そのものだ。

まず、「自分が欲しい本を
自分で作ってしまおう」という発想。

曲がよいというだけでなく、
絵本のように美しく楽しい。

店や売場も、
「ピアノランド」でなくてはいけない。

それからレッスン曲ごとのタイトルと歌詞。
部門ごと、コーナーごとの、
タイトルやキャッチフレーズ。

まるで阪急オアシスやエブリイの店のようだ。

さらに生徒がメロディーを弾いて、
先生が伴奏する。

顧客とのコラボレーション。

「ピアノランド」という教則本を、
セミナーを開いて告知する。

「バイエル」はマニュアルのようなものだ。
モダンの思想の中にある。

「ピアノランド」はポスト・モダンである。
だから絵本を見るように楽しみながら、
どんどんレベルを上げていくことができる。

「ピアノランド」はいまや、
音楽大学でも使われる。
これで学んだ生徒の中から、
コンクール出場の演奏家も続々と登場。

「バイエル」が悪いというわけではない。
しかし「ピアノランド」が、
それを凌駕してしまった事実。

樹原さんは述懐する。
「誰も見たことのないものが、
みんなの欲しいものだった」

そう故スティーブ・ジョブズの言葉。
アップル創始者。
sjindex

2005年のスタンフォード大学の卒業式。
スティーブ・ジョブズは、
歴史に残るスピーチをした。

「本当に満足する唯一の方法は、
素晴らしいと信じる仕事をすることです。
偉大な仕事をする唯一の方法は、
あなたのする仕事を愛することです」

「心の問題と同じで、
見つけたときはわかります。
そして、素晴らしい関係のように、
年を重ねるごとによくなっていきます。
だから、見つかるまで探し続けること。
止まっ てはいけない」

このスピーチの最後に、ジョブズは、
”The Whole Earth Catalogue”の話をする。

「全地球カタログ」
「とんでもない出版物」
「同世代の間のバイブルの一つ」
ジョブズはそう絶賛する。

60年代後半、製作者はスチュアート・ブランド。
「彼の詩的なタッチによって、
誌面は、実に生き生きと、
仕上げられていました」

パソコンやデスクトップ印刷が、
現在のように普及する前の時代。
「この媒体は全て、
タイプライターとはさみ、
そしてポラロイドカメラで、
作られていました」

けれどそれはまるで、
「グーグルのペーパーバック版」

グーグルが登場する35年前の時代に、
「使えるツールと偉大な概念が、
理想に輝きつつ、
それこそページの端から溢れ返っている。
そんな印刷物でした」

”The Whole Earth Catalogue”
「最終号の背表紙には、
まだ朝早い田舎道の写真が
1枚ありました」

写真の下に書かれていた言葉。
「Stay hungry, Stay foolish.」
「ハングリーであれ、愚かであれ」

「それからというもの私は常に自分自身、
そうありたいと願い続けてきました。
そして今、卒業して、
新たな人生に踏み出す君たちに、
それを願って止みません」

樹原さんのポスト・モダンの教則本。
”The Whole Earth Catalogue”。
そしてスティーブ・ジョブズ。

「素晴らしいと信じる仕事をしたい」
巨大な天秤の振り子のようなフライトの中で、
私はそう思った。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.