2016年ゴールデンウィーク。
今日から5月8日の日曜日まで、
10日間。
その間の平日は、
5月2日と6日。
普通の勤め人が、
この2日に休暇をとれば、10連休。
私の古巣の㈱商業界には、
伝統的にそんな社員も結構いたが、
ごく普通の会社では2日か6日の、
どちらも出勤するか、
あるいはどちらかを休むか。
2日に休暇をとれば7連休。
一般に、このパターンが多いのだろう。
もちろん小売りサービス業は、
書き入れ時。
店は開けておかねばならないし、
だから休みは取れない。
しかしそれがあなたの仕事です。
それがあなたの役目です。
今日も大分で震度5強の地震。
平成28年熊本地震は、
異例の長期化と広域化を記録する。
被災地の人々は、
今も闘っている。
それを支えるのも、
私たちの仕事であり、役目だ。
その連休初日の今日は、
昭和の日。
1988年までは、
昭和天皇の誕生日だった。
1989年1月7日、昭和天皇崩御の後、
一旦、みどりの日となったが、
2007年から「昭和の日」の祭日。
趣旨は、「激動の日々を経て、
復興を遂げた昭和の時代を顧み、
国の将来に思いをいたす」
私は、このネーミングがぴったりだし、
この趣旨が今日にふさわしいと思う。
日経新聞巻頭の『春秋』
作家の関川夏央さんを持ち出す。
「昭和で数えるといまは……と
よく年号を置き換えてみる」
著書『家族の昭和』でいわく
「二〇〇八年は平成二十年ではない。
昭和八十三年だ。
あえてそういいたい昭和人である」
そうすると今年は昭和91年。
2025年が昭和100年。
その年、私は73歳。
まだ、毎日更新宣言ブログを、
書き続けていると思う。
『春秋』は書く。
終戦直後、昭和天皇が、
現平成天皇の皇太子に手紙を書いて、
敗因を率直に語った。
「精神に重きをおきすぎて
科学を忘れたことである」
ここでいう「科学」とは、
「論理」のことであり、
「論理性」のことである。
平成も28年になる現在、
この昭和の失敗の教訓が
忘れられ、薄れているかもしれない。
またまた精神に重きをおきすぎて、
論理の重要性を忘れてはいないか。
さて朝日新聞digitalに、
「世界一貧しい大統領と呼ばれた男」
聞き手は萩一晶さん。
ちょっと長いけれど、
抜き出しつつ引用。
南米ウルグアイ東方共和国の
ホセ・ムヒカ前大統領。
Jose Mujica。1935年生まれの80歳。
左翼ゲリラから農牧水産大臣を経て、
2010~15年に大統領。
80歳を超えた現在も、上院議員として、
国民から「ぺぺ」の愛称で、
熱い支持を受ける。
住まいは首都モンテビデオから車で30分。
畑のわきの小さな平屋。
同じく上院議員の妻と二人暮らし。
愛車は1987年製のフォルクスワーゲン。
いわゆるビートル。
自ら家事をし、畑も耕す。
「いいところだろう。
この国は自然豊かで、とても美しい。
特にこんな小さな村は
年寄りが暮らすには、
もってこいなんだ」
「私はもともと農民の心を持って生まれた。
自然が大好きなんだ。
4階建ての豪邸で
30人からの使用人に囲まれて暮らすなんて、
まっぴらだ」
だから大統領任期中も、
公邸には住まなかった。
当時、給料の9割を慈善事業に寄付。
外遊はエコノミークラス。
どこかの東京都知事とは違う。
「世界で一番貧しい大統領」という称号。
「みんな誤解しているね。
私が思う『貧しい人』とは、
限りない欲を持ち、
いくらあっても満足しない人のことだ」
「私は少しのモノで満足して生きている。
質素なだけで、貧しくはない」
正しい、素晴らしい。
私もそう、ありたい。
「モ ノを買うとき、
人はカネで買っているように思うだろう。
でも違うんだ。
そのカネを稼ぐために働いた、
人生という時間で
買っているんだよ」
人生という時間で買物をする顧客。
私たち商人は、
その人生に応えねばならない。
「生きていくには働かないといけない。
でも働くだけの人生でもいけない。
ちゃんと生きることが大切なんだ。
たくさん買物をした引き換えに、
人生の残り時間がなくなってし まっては
元も子もないだろう」
そして、言う。
「簡素に生きていれば
人は自由なんだよ」
幸せだと感じるとき。
「自分の人生の時間を使って、
自分が好きなこと、
やりたいことをしているときさ。
いまは冬に向けて、ビニールハウスに
トマトの植え替え作業をしているときかな」
「それに幸せとは、
隣の人のことをよく知り、
地元の人々とよく話し合うこと。
会話に時間をかけることだとも思う」
「人間が犯した間違いの一つが、
巨大都市をつくりあげてしまったことだ。
人間的な暮らしには、
まったく向いていない。
人が生きるうえでは、
都市は小さいほうがいいんだよ」
日本についてもコメント。
「効率や成長一辺倒の西洋文明とは
違った別の文化、別の暮らしが
日本にはあったはずだろう。
それを突然、全部忘れてしまったような印象が
私にはある」
「簡素な生き方は、
日本人にも響くんだと思う。
子どものころ、近所に
日本からの農業移民がたくさんいてね。
みんな勤勉で、わずかな持ち物でも
満ち足りて暮らしていた」
1960~70年代、
都市ゲリラ「トゥパマロス」のメンバーとなり、
武装闘争に携わった。
投獄4回、脱獄2回。
銃撃戦で6発撃たれ、
重傷を負った。
「平等な社会を夢見て、
私はゲリラになった。
でも捕まって、14年近く収監されたんだ。
うち10年ほどは軍の独房だった。
長く本も読ませてもらえなかった。
厳しく、つらい歳月だったよ」
「独房で眠る夜、
マット1枚があるだけで私は満ち足りた。
質素に生きていけるようになったのは、
あの経験からだ」
「孤独で、何もないなかで
抵抗し、生き延びた」
「『人はより良い世界をつくることができる』
という希望がなかったら、
いまの私はないね」
「人は苦しみや敗北からこそ多くを学ぶ。
以前は見えなかったことが見えるようになるから。
人生のあらゆる場面で言えることだが、
大事なのは失敗に学び再び歩み始めることだ」
独房で見えたもの。
「生きることの奇跡だ。
人は独りでは生きていけない。
恋人や家族、友人と過ごす時間こそが、
生きるということなんだ。
人生で最大の懲罰が、孤独なんだよ」
「ファナチシズムは危ないということだ。
左であれ右であれ宗教であれ、
狂信は必ず、異質なものへの憎しみを生む。
憎しみのうえに、善きものは決して築けない。
異なるものにも寛容であって初めて、
人は幸せに生きることができるんだ」
ファナチシズムとは盲信的熱狂。
異質なものへ闘争心丸出しで挑む。
それでいて「正義」を振りかざす。
それは憎悪を生むだけだ。
ウルグアイは軍事政権から民政復帰。
85年に釈放され、
ゲリラ仲間と政治団体を創設。
89年に現与党・左派連合「拡大戦線」に参加。
日本では昭和が終わった時だった。
その後、下院・上院議員を経て、
昨年までの5年間、大統領。
「貴族社会や封建社会に抗議し、
生まれによる違いをなくした制度が
民主主義だった。その原点は、
私たち人間は基本的に平等だ、
という理念だったはずだ」
「私たち政治家は、
世の中の大半の国民と
同じ程度の暮らしを送るべきなんだ。
一部特権層のような暮らしをし、
自らの利益のために政治を動かし始めたら、
人々は政治への信頼を失ってしまう」
「それに最近の政治家は退屈な人間が多くて、
いつも経済のことばかり話している。
これでは信頼を失うはずだ」
「人生には、もっとほかに大切なことが
いろいろあるんだから。
たとえば、街角で1人の女性に
恋してしまうことに
経済が何の関係がある?」
「いまは文明の移行期なんだ。
昔の仕組みはうまく回らず、
来たるべきものはまだ熟していない。
だから不満が生まれる」
「ただ、批判ができるのも
そこに自由があるからだろう。
民主主義は欠陥だらけだが、
これまで人が考えたなかでは
いい仕組みだよ」
「それに時がたてば、
きっと新しい仕組みが生まれると思う。
デジタル技術が新しい政治参加への
扉を開くかもしれないし」
「ドイツやスイスでも
政治に不満を持つ多くの若者に出会った。
市場主義に流される人生は嫌だという、
たっぷり教育を受けた世代だった」
「米国でも、大学にはトラ ンプ氏とは正反対の
開放的で寛容な多くの学生がいる。
いま希望を感じるのは彼らだね」
「貧乏人の意地ではなく、
知性で世界を変えていこう
という若者たちだ」
素晴らしい。
私たちの世界で言えば、
世界を変えるのは知識商人だ。
「怖いのは、グローバル化が進み、
世界に残酷な競争が広がっていることだ。
すべてを市場とビジネスが決めて、
政治の知恵が及ばない。
まるで頭脳のない怪物のようなものだ。
これは、まずい」
ムカヒさん自身の政治的な立場。
「できる限り平等な社会を求めてきたから
左派だろう。
ただ、心の底では
アナキスト(無政府主義者)でもある。
実は私は、
国家をあまり信用していないんだ」
「も ちろん国家は必要だよ。
だけど、危ない。
あらゆるところに官僚が手を突っ込んでくるから。
彼らは失うものが何もない。リスクも冒さない。
なのに、いつも決定権を握っている。
だから国民は、国家というパパに
何でも指図されていてはいけない。
自治の力を身につけていかないと」
4月5日に来日。
「日本のいまを、よく知りたいんだ。
世界がこの先どうなるのか、
いま日本で起きていることのなかに
未来を知る手がかりがあるように思う。
経済も技術も大きな発展をとげた働き者の国だ。
結局、皆さんは
幸せになれたのですか、
と問うてみたいな」
ムカヒさん、ありがとう。
昭和を経て、平成28年の昭和の日。
「日本人は幸せになれたか」
それを問いながら、
ゴールデンウィークを過ごしたい。
〈結城義晴〉