結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年05月07日(土曜日)

4月ユニクロ1.3%の回復と「家計からの逆襲」

ゴールデンウィークもあと2日。
時間が過ぎるのが早い。
IMG_8185

私は原稿など書きつつ、
ゆっくりと過ごす。

それでもあっという間に夕陽。
DSCN8566-6
明日は母の日。

今週は母と子の1週間。
ヨークベニマルは、
徹底して精肉強化。
肉が売れれば、青果も売れる。
日配も売れるし、グロサリーも動く。

実に見事。

さて、昨日は日本マクドナルドの復活と、
4月の好調ぶりをお伝えしたが、
今日はユニクロの4月実績。

国内既存店売上高は、
前年同月比101.3%。
2カ月ぶりに、1.3%増という回復。
ただし9月の期初からの累計値は98.6%。
〈ファーストリテイリングの決算は8月末〉

客数が同92.8%で、こちらの累計は93.4%。
客数は3カ月連続の前年同月比ダウン。

ユニクロはこのところ客数減。
一般には「2年連続の値上げ」などが理由とされる。

柳井正会長兼社長は、
「わかりやすい価格に戻す」

「値段を下げる」ではない。
わかりやすい価格。

故渥美俊一先生の価格戦略。
低価格には二つある。
第一は、実質的な価格の安さ。
第二は、顧客のイメージとしての安さ。

第一は、企業の総力を挙げて、
仕組みを変えねば実現しない。
第二は、すぐにも実現できる。
安いというイメージをつくり上げる。

柳井さんの言う「わかりやすい価格」は、
その一つ。

ユニクロの商品は、
国際的に比較しても、
品質は高いし、良い。

それが「値上げ」によって、
高いイメージになってしまった。

そのイメージを払しょくするために、
わかりやすい売価にする。

ご名答。

もともとユニクロは、
第一の絶対的安さを生み出した。
第二のイメージの安さで、
ちょっとつまづいた。
それを修正する。

今や国民服に近いユニクロ。
国民からの信頼は厚い。

ユニクロの衣料品が回復基調ということは、
他社の衣料品部門も、努力次第で、
回復することができるということだ。

客単価は109.1%で、累計105.5%。

これは「値上げ効果」も表しているだろう。
必須のアイテムがそろっているから、
家庭在庫における定番の補充は、
確定していることの証。

裾を絞った「ジョガーパンツ」、
裾の広い膝丈の「ガウチョパンツ」。
いまや日本中の女性が何色も持っている。
それが売れた。

だから1人当たり購入点数が増えた。

吸汗・速乾機能の肌着「エアリズム」も、
他を圧しているが、
ゴールデンウィーク前から、
早仕掛けのセールを展開。

インナーはもう、圧倒的にユニクロだ。

ファッション性と経済性。
多様化・個性化と低価格性。

その両立は、
単純な売れ筋集中主義の商売とは、
次元が違う。

ユニクロの海外の旗艦店など見ていると、
その商品開発力には驚かされる。
まだまだ懐の深さを持っているのが、
ファーストリテイリングだ。

4月度の直営店出店は8店舗、
退店は5店舗。

スクラップ&ビルド政策も抜かりない。

熊本地震によって7店舗が被災し、
一時営業停止。

4月末現在では2店舗が営業再開。
いまだ5店舗は営業再開できていない。

お見舞い申し上げたい。

さて朝日新聞の『経済気象台』
IMG_8180
コラムニスト山人氏が、
「格差社会の逆襲」を書く。

「もっぱら労働コストの削減で対応してきた、
日本企業の経営姿勢」

「安倍政権の対応も、
選挙向けのスローガンと、
一時的なバラマキで終わる可能性が大きい」

つまり格差は埋まらない。

「格差社会で割を食う『中低所得層』は、
負け組であり続けなければならないのか。
格差を生み出してきた潮流やメカニズムを
変えることはできないのか」

コラムニストは提起する。

「否」

「われわれは自らの選択によって、
状況や制度を変えることはできるし、
そのような『逆襲』はすでに始まっている」

ここでアベノミクスの批判。
「法人税減税や規制緩和によって
企業収益を増やし、
雇用・賃金への波及を通して
景気が回復することを期待した」

「しかしアベノミクス下の経済成長率は
民主党政権下の半分であり、
足元の景気も一段と停滞感を強めている」

そして最大の誤算は、
「家計消費の低迷」

家計消費の刺激は、
ユニクロをはじめ民間に委ねられているだけ。

「実質消費支出の水準は、
いまなおアベノミクス始動時以下である」

「家計は増えない賃金や不安定な雇用に身構え、
消費を抑制している」

最後に思想家の吉本隆明。
「家計が消費を控えれば、
企業も経済もあっという間に破綻する」と喝破し、
「家計を顧みない経済政策」を痛烈に批判した。

そして結論。
「今の景気停滞は、
家計の逆襲である」

「それに真摯に向き合い、
格差を生まないメカニズムを
考えるときが来ている」

「家計の逆襲」
なるほど…。

だから必須の食品は伸びているが、
ファッションも生活用品も落ち込んでいる。

しかしリーズナブルな低価格を実現する、
小売業、サービス業は、
「格差を生まないメカニズム」に、
おおいに貢献している。

デフレ脱却が至上命題のごとく洗脳された国民。
それは物価の引き上げであり、
中低所得者の生活を圧迫させる。

そして格差社会からの逆襲は、
家計消費からの逆襲となって、
その経済や景気を貶める。

吉本隆明が批判した、
「家計を顧みない経済政策」なのか、
「家計を刺激する経済政策」なのか。

ポリティカルマーチャントが政治を判断するとき、
それは必須のチェックポイントなのである。

イギリスで統一地方選挙があった。
その中核のロンドン市長選では、
野党労働党のサディク・カーン氏(45歳)が当選。
イスラム教徒として、
初のロンドン市長。

カーン氏は1970年、ロンドン生まれ。
父はパキスタン移民の元バス運転手、
母は裁縫師、兄弟は6人。
低所得者向けの公営住宅で育った。

大学に行き、法律を学び、
その後、人権派弁護士として活躍。

2005年の国政総選挙で、
労働党から出馬し、
下院議員に当選。
ブラウン内閣では、運輸相。

イスラム教徒がロンドン市長。

世界を驚かせたが、
カーン氏はロンドン市長として、きっと、
「家計からの経済政策」を実行するに違いない。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.