猫の目で見る博物誌――。
ローマの大プリニウスの『博物誌』は、西暦77年。
中国の張華の『博物誌』は西暦300年ごろ。
そしてフランスでは、
ジョルジュ・ルイ・ド・ビュフォンが、
36巻の『博物誌』を1749~89年に執筆。
これはまるで百科事典。
法律を学び、医学、植物学、数学を学んで、
王立植物園の園長となった博物学者、
そして啓蒙思想家。
博物的視点で研究を続けると、
啓蒙思想の本物の伝道師となる。
猫の目はくるくる変わる。
全体視野は230度。
人間は200度だから、
霊長類よりも視野が広い。
そんな『猫の目博物誌』は、
猫の目でいろいろなものを観察する――。
アメリカ合衆国テキサス州ダラス市。
クローガーの店頭に、
消防車が停まっていた。
DFD44。
Dallas Fire-Rescue Department。
その44号車。
車体の正面。
車体の右横には計器類。
後ろ側。
車体の左横側。
写真を撮っていると、
消防士のおじさんが出てきた。
アメリカの消防士は、
Firefighterと呼ばれて、
最も尊敬される職業だ。
車体に書いてある文字は、
“caring, serving, and protecting”
「注意、奉仕、そして保護」
この消防車はホース隊といって、
主に消火活動をする。
車内はこんな散らかりよう。
後ろ側を開けて見せてくれた。
青いホースがぶら下がっている。
そして後ろ側。
ここにもホース。
アメリカ合衆国連邦政府には、
国土安全保障省連邦消防局が設けられている。
大都市には常備消防組織があって、
ダラス・ファイヤー・レスキューもそれ。
アメリカの出火件数は年間約180万件、
消防職員は約26万人、
それに約75万人のボランティア消防隊員。
アメリカでの緊急通報ダイヤルは、
全米どこでも911番。
しかしこのダイヤルは、
警察・消防・救急が、
ワンセットになっている。
このおじさんは、
名誉ある消防隊員。
2001年9月11日。
ニューヨーク世界貿易センタービルで、
同時多発テロが起こった。
このとき、343人の消防士が殉職。
アメリカの誇り「Firefighter」と一緒に写真。
誇りを分けてもらった。
“caring, serving, and protecting”
この三つの考え方が、
人間の尊厳と仕事の誇りに、
結びついている。
知識商人と同じだ。
〈『猫の目博物誌』(未刊)より by yuuki〉