結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2016年05月31日(火曜日)

将棋名人戦・羽生善治の「投了」と魯迅『故郷』の「希望という道」

2016年5月最後の日。

いい季節です。

さて、山形県天童市。
第74期将棋名人戦七番勝負第5局が、
天童ホテルで指されていた。
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18時44分、夕食休憩直後、
羽生善治名人が投了。
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挑戦者の佐藤天彦(あまひこ)八段が、
通算4勝1敗で名人位を奪取。
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佐藤は28歳。
羽生はもう45歳。

投了した後、感想戦が行われ、
この一局を互いに振り返る。
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このとき羽生は、
佐藤の指摘に対して、
「へーっ!」「へーっ!!」を連発。
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時代が変わったかもしれない。
そんな感慨を抱かせた。

パソコンで原稿を書きながら、
ネットで投了の瞬間まで、
見ていたのでした。

しかし私は、この福岡出身の棋士が、
羽生世代をひっくり返すかもしれないと、
期待している。

あだ名は、なぜか「貴族」。
NHK将棋講座テキストの連載エッセイも
タイトルは「貴族天彦がゆく」

それでも、将棋は、
礼に始まり、礼に終わる。
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将棋の世界に、新しい風が吹いた。
それが2016年5月の最後の日。

一方、日経新聞『私の履歴書』も、
中原誠の巻が、今日で終了。

ご存知、将棋十六世名人。
永世十段・永世棋聖・永世王位・名誉王座。

将棋の世界は、
その時代の第一人者が支配する。

第十五世名人大山康晴の時代、
十六世の中原誠の時代、
十七世の谷川浩司の時代。
それから羽生善治、森内俊之など、
いわゆる羽生世代。

その中原誠が、
5月の1カ月間、『私の履歴書』を連載して、
この第74回名人戦の対局を、
盛り上げる趣向だった。

しかしここまでうまくはまるとは、
誰も考えなかった。

名人戦は七番勝負。
第五局で決着がつけば、
中原の連載最終回と重なるが、
第六局、第七局ともつれると、
それはズレてしまう。

日経新聞はしてやったりだろう。

しかしその中原の連載。
意外に低調だった。

中原は1947年9月2日生まれ。
私よりもぴったり5歳上。

宮城県塩釜市出身で、
「自然流」といわれるスケールの大きな棋風。

誕生日が同じということで、
私は自分の高校時代から応援していた。

けれどこの『私の履歴書』には、
はっきり言ってがっかりした。

中原が自分で書いてはいないだろう。
日経の記者が代筆したはずだが、
その筆が中原のスケールを描けなかった。

もちろん1998年の個人的スキャンダルが、
歯切れの悪さを生み出したかもしれない。
2008年に中原を襲った脳出血・大腸がんが、
語りをあっさりさせてしまったのかもしれない。

中原は中川一政画伯のことを述懐する。
神奈川・真鶴の港を約20年、
毎日のように描いた画家。
「よほど天候が悪くない限り、毎日である。
仕事とはいえ、世の中には
すごい人がいると思ったものである」

中原は決意する。
「できることをする。それを積み重ねる。
そして新たな人生を生きる」

「病気に打ちかつことは難しい。
しかし、共存して生きていくことは
決してむずかしくない、と思っている」

中原誠の存在が、
羽生善治と佐藤天彦の名人戦の背景に、
クラシック音楽のように流れていた。

さて今日は午前中に来客2件。

まずは午前10時から、
商人舎主催セミナーの打ち合わせ。
第9回ミドルマネジメント研修会。
来週の7日・8日・9日。
火曜・水曜・木曜。

神奈川県湯河原市の、
ニューウェルシティ湯河原。

受講者のみなさん、
待ってます。

今日の来客の二番目は、
UAゼンセン流通部門のお二人。
そう、世界最大の労働組合の、
その最大の部門。

木暮弘さんと久保田龍輔さん。DSCN7280-6
木暮さんは流通部門事務局長、
マイカル(旧ニチイ)出身。
久保田さんは流通部門総合政策部長、
高島屋出身。

8月26日(金曜日)に、
東京ドームホテルで、
第4回UAゼンセン労使懇談会が、
開催される。

UAゼンセンは、
2012年11月6日に発足。
旧UIゼンセン同盟とサービス・流通連合が、
統合して誕生。
「原点を見つめ、未来を拓こう!」がスローガン。

この世界では「産別」と略すが、
産業別労働組合組織。

当時は組合員141万人の組織だったが、
現在は2449組合、157万2921名。

組織は主に三つに分かれる。
第1が製造産業部門、
第2が流通部門、
そして第3が総合サービス部門。

第1の製造業は1056組合、22万6295名、
第2の流通業は534組合、91万2311名、
第3のサービス業は817組合、43万4291名。

91万人が流通部門。
もうすぐ100万人。

そのUAゼンセン労使懇談会。
基調講演とパネルディスカッション。
第1回は私がコーディネーターを務めたが、
今回も私がその役目を担う。

その企画内容の相談と打ち合わせ。

タイムリーで、
なおかつ大きなトレンドをつかんでいて、
労働者と経営者が共有できるテーマを、
突っ込んでディスカッションします。

自信がある。

ご期待ください。

最後に朝日新聞一面『折々のことば』
希望とは
本来あるとも言えないし、

ないとも言えない。
これはちょうど
地上の道のようなもの
〈魯迅〉

中国の小説家、翻訳家、思想家。
その8000字ほどの短編『故郷』。

青空文庫で、井上紅梅訳が公開されている。
『故郷』

編著者の鷲田清一さんが要約。
「20年ぶりの故郷で、かつて
兄弟のように遊んだ友と再会する。
が、友はかたくなに
元使用人の息子の立場を崩さず、
それぞれの願いも遠く隔たっていた。
が、希望を絶やさずにいれば、
歴史が切り分けた二つの希望も
いつか交わるやも」

そして短編小説の最後の有名なフレーズ。
「地上に本来、道はないが、
歩く人が多くなると、道ができる」

中原誠も、羽生善治も佐藤天彦も、
自分で歩いて、切り拓いて、
道をつくってきた。

そうしてそれぞれに、
希望という新しい道がつくられた。

UAゼンセン流通部会も、
「歩く人が多くなると、
希望という道ができる」

〈結城義晴〉

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