フランスのフランソワ・オランド大統領。
「不確実性ほど悪いことはない」
中国の李克強首相。
「世界の不確実性が増した」
イギリスのEU離脱で起こる現象。
「『不確実性』という言葉が飛び交っている」
毎日新聞巻頭コラム『余禄』が指摘する。
「市場でよくいう『リスク』は
確率を計算できるが、
不確実性はリスクの計算もできない。
先行きが読めぬ不安は
しばしば人を不合理な行動にかりたてる」
「不確実性の時代」
ジョン・ケネス・ガルブレイスが書いて、
日本では1978年のベストセラーになった。
カナダ出身の経済学者。
1943年から1948年、
『Fortune』誌の編集者、
1949年、ハーバード大学経済学教授就任。
私は大学のころ、
『経済学と公共目的』を原書で読まされた。
申し訳ないとも思うけれど、
当時、無頼派の生活を送っていた私は、
まともには読んでいない。
『ゆたかな社会』
『新しい産業国家』
そして『経済学と公共目的』が三部作。
そのあとで、
『不確実性の時代』が、
爆発的なブームになった。
アダム・スミスから始まって、
経済思想はどう変遷してきたか。
経済学者でありながら、
ジャーナリスティックな視点をもつ。
名文家としても名高い。
ガルブレイスが指摘したのが、
「拡大する不確実性」
それが今、再び、
流行語のようになってきた。
ああ。
今日は朝から、東海道新幹線。
梅雨空に天候は「不確実性」いっぱいだが、
日本の水田の美しさには「確実性」がある。
新大阪に着いて、すぐに、
アゴーラリージェンシー堺へ。
万代ドライデイリー会総会。
今月の14日から17日まで、
中国は上海を訪問して、
勉強会を開催。
10班に分かれて、チームごとに発表。
それぞれに学習した内容を、
ディスカッションしてまとめた。
発表が終わると、
結城義晴の総括講演。
私は中国流通小売業の、
スピードとエネルギーと、
イノベーションを、
高く評価した。
オムニチャネル経済圏を形成し、
Eコマースが先導しつつ、
新しいフォーマットやビジネスを生み出す。
「後進の先進性」などと高を括っていると、
追い越されてしまう。
真剣に聞いてくれた。
ご清聴を感謝しよう。
最後は、
イノベーションの「創造的破壊」
伸び率が鈍ったといえど、
中国の消費パワーは衰えない。
世界の経済と消費を量で牽引する。
それが質に変わるときも迫っている。
遅れていた者ほど、
思いのほか障害を低くして、
最新の技術を導入することができる。
それはむしろ既存の進んだ者よりも、
先進的ですらある。
「後進の先進性」などと
高みから評価していると、
実はその通りになってしまう。
リアル店舗は成熟化のプロセスにある。
それを待たずに
インターネット先進国となった中国。
日本がガラパゴス型流通世界を
つくりだしたように、
中国小売業はグローバル経済の中で
特異な市場を生み出した。
すなわち小売業を超越した
「オムニチャネル経済圏」の形成である。
その「不思議な経済圏」のもと、
「新たなビジネスモデル」や
「新フォーマット」が創造される。
そしてリアル店舗にも
イノベーションが起こってくる。
一方、日本の商品とサービスに
中国人消費者と中国企業は、
高い評価と高い関心を寄せ続ける。
「爆買い」現象はその内容を変えつつ、
継続される。
ヨーゼフ・シュンペーターは指摘する。
「イノベーターだけが真の利益を生み出す。
ただしそのイノベーターの利益は
常に短命である。
イノベーションとは『創造的破壊』である。
それは、昨日の設備と投資を陳腐化させる。
馬車を何台つなげても汽車にはならない。
馬力を機関車のエンジンに代える
『新結合』が必要である」
中国小売流通業に
シュンペーターのイノベーションが
起こっている。
それを支えるのは
旺盛な消費意欲であり、
市場原理である。
〈結城義晴〉
そしてドラッカーのイノベーション。
私のあとは、
万代取締役の黒田久徳さん。
コーネル大学ジャパン実行の三期生。
実に上手なアメリカ解説。
感心した。
その後、ドライデイリー会懇親会。
開会のあいさつと乾杯は、
副会長の寺町豊さん。
日本アクセス執行役員近畿エリア統括。
そして懇親。
万代の阿部秀行新社長には、
人が集まった。
そして中締めは、
副会長の木村敏弘さん、
加藤産業常務取締役。
そして阿部秀行社長。
月刊商人舎6月号から引用して、
「歩数計にとってかわったスマホ」の話。
それが「顧客満足」と「顧客創造」の違い。
「万代は顧客創造をしていきたい」
いい話だったし、
今の万代には「確実性」が満ちている。
その後、恒例の大阪締め。
私も今回は、壇上に上がった。
最後に加藤徹会長と三人で握手。
ホテルロビーでは、
万代知識商人大学一期生たちに、
囲まれて写真。
そこに加藤さんも加わって、
またまたポーズ。
彼らの未来の社会には、
不確実性があるかもしれないが、
彼ら仕事する人間たちには、
不確実性は見当たらない。
それがこの世界の救いの一つだ。
〈結城義晴〉