猫の目で見る博物誌――。
猫の目の全体視野は280度。
斜め後ろも見える。
両眼視野は130度で、
距離感を正確につかむ。
中空を素早く飛び行くツバメも。
「ルナールの博物誌」から、
ボナールの絵。
ツバメの学名はHirundo rustica。
英語でSwallow。
スズメ目ツバメ科ツバメ属の鳥類。
背は藍黒色、腹は白色。
喉と額が赤色。
尾は長くて、
切れ込みの二股形。
だからこの形の服装を、
燕尾服という。
スズメ目スズメ科スズメ属のスズメとともに、
日本人になじみ深い鳥。
スズメは1年を通して日本国内で生活する。
ツバメは暖かい地方に渡って冬を越す。
つまり、「渡り鳥」
渡り鳥には二つある。
第1が、冬を日本国内で越冬する渡り鳥。
第2が、暖かい地方へ渡って行く渡り鳥。
ツバメは「夏鳥」
3月から4月ごろの春先に、
日本に渡って来る。
そして日本で生活し、
4月から7月に巣をつくり、
卵を産み、子育てをする。
そして9月から10月に、
日本を飛び立って越冬する。
越冬する個体もあって、
「越冬ツバメ」と呼ばれ、
歌にもなっている。
巣乙鳥の目を放さぬや暮の空
〈小林一茶〉
ツバメの巣は、自分たちでつくる。
泥と枯草を唾液で固めて、
ほとんど人工物に造巣する。
多摩カントリークラブのクラブハウスの巣。
産卵期は4月から7月。
一腹の卵数は3から7。
卵を抱いて温める期間は13日から17日。
その後、巣の中で育雛される。
その期間は20日から24日。
動物の雄と雌の一組みを、
「つがい」といい、「番」と書く。
ツバメは基本的に一夫一妻。
雄が先に繁殖地に渡来し、
雌は遅れて渡来する。
今来たと顔を並べる乙鳥哉
〈小林一茶〉
先に到着した雄が、
他の雌に先に出会うと、
その個体と繁殖を開始する場合もある。
その後、昨年と同じ雌が遅れて到着すると、
繁殖を同時進行する。
しかしツバメのヒナは、
かわいい。
元気でうるさい。
飛翔する昆虫などを、
空中で捕食する。
そしてヒナの口に与える。
ヒナたちは、
我先にと口を開けて待つ。
ツバメ親子の愛。
口を開けるヒナ。
えさを与えては飛び立つ親ツバメ。
越冬という大事業をひかえて、
子育てに励む。
ヒナは6月ごろから巣立ちを始める。
そして秋に越冬する。
越冬は、平均時速55~60kmで、
1日5時間、300km以上飛ぶ。
彼らにも厳しい試練が待っている。
日本では「益鳥」として、
大切にされてきた。
コメづくりの際、
穀物を食べず害虫を食べるから。
「夏鳥」
「渡り鳥」
「益鳥」
ツバメはなんだか、
しあわせそう。
カラスとは大違い。
スズメとも違う。
それは、いつもいつも、
身近にいないからだと、
猫は思う。
〈『猫の目博物誌』(未刊)より by yuuki〉