朝日新聞『折々のことば』
鷲田清一編著。
「私の折々のことばコンテスト」開催。
それくらい、人気のコラム。
明るみに出ていることの裏にも
重要な事実があり、
原則には例外があり、
できごとには背景がある。
〈高坂正堯(こうさか まさたか)〉
1996年に62歳で亡くなった政治学者。
元京都大学法学部教授。
現実主義の論客。
その京都弁は穏やかで上品だが、
語ることの中身は鋭い刃物のようだった。
1968年の著書『宰相吉田茂』は秀逸。
あの高坂さんより年をとってしまって、
いまだ、こんな状態だなんて、
恥じ入るばかりだ。
「ものごとはすべて条件附きのものである」
だからピーター・ドラッカー。
「基本と原則を補助線として使う」
鷲田さんが、言葉を添える。
「そこに十分に深く
測鉛を垂らすことのできない思考は
だから、甘く一面的になる」
情報の氾濫に振り回された者は、
二つの態度しかとれなくなる。
「混沌のなかに当惑して立ちすくむ」か、
「事態を誤って単純化する」か。
つまり、
「懐疑に沈むか
熱狂に走るか」
これこそ、扇動する者の狙うところだ。
私は2007年10月31日のこのブログで、
高坂さんの言葉を引用している。
「成功は長期的には
失敗の種子を内包している。
それが現実化するのは、
あらゆる原則には例外があることを、
成功が忘れさせるからだ」
(『世界史の中から考える』から)
「山の日」からお盆へ。
連休の間の平日。
東横線も南武線も武蔵野線も、
車内は比較的、空いている。
電車を乗り継いで、
横浜・妙蓮寺から、
東京・新小平まで。
今日は第一屋製パン㈱の取締役会。
第1四半期は、おかげさまで増収増益。
ポケモンGOの影響が、
売場や品ぞろえにも反映され始めた。
取締役会が終わってから、
小平工場を見学。
上から下まで、見学衣装。
ご案内は、北村二郎さん。
生産本部小平工場製造部長。
まず手を洗う。
衣服からも入念に、
異物やほこり、ごみをとる。
眉毛にも粘着テープをつけて、
毛が抜け落ちないようにする。
そしてマスク。
署名。
アルコールで消毒。
日めくりの「本日の重点ルール」
「ヒヤリハット」報告一覧。
第一屋製パンの製造部門には、
トヨタ自動織機のコンサルタントが入って、
徹底的に「トヨタ生産方式(TPS)」を導入した。
それがこんなところにも表れている。
いざ、工場へ。
第一屋製パンの小平工場は、
1974年に完成。
1986年にバターロールラインが増設された。
1階に和菓子ラインと商品管理施設。
2階がロールパンと菓子パンのライン。
バターロールラインとペストリーラインが、
量産自動化工程となっている。
そのほかに菓子パン各種は、
丁寧に適量の生産体制を組む。
「トヨタ生産方式(TPS)」導入に、
時間をかけたが、
それが成果を上げて、
品質管理と生産性、
そして安全性の実現に貢献した。
見学が終わって、
前川智範社長、北村製造部長と写真。
パン工場の視察は初めてだったが、
いい勉強になった。
酒蔵には酒の匂い、
パン工場にはパンの香り。
お客さんにも、
小売業の経営者やバイヤーにも、
もっと公開してほしいと、
要望を出しておこう。
市場に出ているパンの裏にも、
重要な事実としての工場がある。
明るみに出ていることの裏にも
重要な事実があり、
原則には例外があり、
できごとには背景がある。
そこに真実があるのだ。
〈結城義晴〉