今日も『折々のことば』540。
編著者の鷲田清一さんとは、
なんと波長が合うのだろう。
おんぶに抱っこ
(言い習わし)
「何から何まで他人に頼りっきり、
段取りもみな他人にしてもらうこと」
「でも、おんぶと抱っこでは、
親子の視線のありようはまったく逆」
「抱っこでは子の視線は親に向かう。
親も子の顔色がよくわかる」
「おんぶでは子の視線は
親が見ている対象のほうに向かう」
「子は親の背のぬくもりを感じながら、
その肩越しに、親と同じものを見やる。
まなざしが外へと開かれてゆく」
おんぶのほうが、いいのか。
私がよく使う言葉が、
おんぶに抱っこに肩車。
全部、親持ちの子供状態。
これはいけないが、
子供にとっては、
肩車が一番、気持ちいいい。
さて、セブン&アイ・ホールディングス。
上半期(3~8月)決算発表。
売上高2兆8661億6700万円、
前年同期比4.3%減。
営業利益1814億6600万円、
これは5.2%増、
経常利益1826億1600万円、
これも7.0%増。
セブン-イレブンをもっていると、
この面では強い。
営業面では増益。
そして当期利益334億8000万円、
イオンのように赤字ではないけれど、
前年同期比マイナス60.4%の大減益。
セブンプレミアムは半期で、
20.4%増の5950億円。
年間計画は1兆2000億円だが、
これは「順調」との発表。
ただし、ポータルサイト「omni7」は、
抜本的見直し。
この上期決算以上のサプライズは、
H2Oリテイリングとの資本業務提携。
関西のそごう・西武店舗は、
H2Oに移管承継される。
これはセブン&アイは助かる。
H2Oは関西圏の百貨店ドミナントが、
一応、厚くはなる。
しかしH2Oにとっては、
お荷物にもなりかねない。
だからセブン-イレブン・ジャパンが、
H2OグループのSポイントを、
関西圏のセブン‐イレブン店舗に導入。
H2Oのポイントシステムは、
一挙に巨大化する。
セブン&アイとH2Oは、
それぞれの発行済株式の3%相当を、
相互に持ち合う方向で協議して、
資本提携する。
鈴木敏文さんがCEOだったら、
この意思決定は、どうなったか。
それを想像してしまう。
仮に資本提携が進んだとして前期は、
セブン&アイが売上高6兆0457億円、
経常利益3502億円。
H2Oが9157億円、経常利益231億円。
単純計算で、
売上高7兆8771億円、
経常利益3733億円。
イオンの前期年商8兆1767億円に迫るし、
経常利益1797億円は凌駕できる。
しかし、もともとセブン&アイは、
規模の論理を前面に出す企業では、
なかった。
経営の質を追求した。
H2Oとの資本業務提携は、
アッと驚く話題づくりにはなるけれど、
経営品質はどうなるか。
オムニチャネルをどうするか、
イトーヨーカ堂はこのまま縮小か、
スーパーマーケット群は、
どうするか。
明らかになっていない課題は多い。
意思決定をそれこそ、鈴木敏文さんに、
おんぶに抱っこに肩車でやってきた。
集団志向にだけは、
陥ってはならない。
これだけは言っておこう。
さて、私は神奈川県湯河原。
第10回ミドルマネジメント研修会も、
最終日を迎えた。
台風一過。
秋空の拡がる朝。
そんな戸外とは関係なく
研修会場の大観の間では、
第2回理解度判定テスト。
この2回目のテストを終えると、
ミドルマネジメント研修も最終盤。
オペレーションマネジメントがテーマ。
ムダ・ムリ・ムラをなくす。
そして人時パフォーマンスを、
最大限に高める仕組みづくり。
作業改善からバックヤードづくりまで、
具体的な講義は目からウロコ。
講師は井坂康志さん。
ドラッカー学会事務局長、
ものつくり大学特別客員教授。
ドラッカー・マネジメントの原点から、
フィードバック分析まで、
実に有意義な解説をしてくれた。
恒例のQ&Aでは
3人からの質問。
口火を切ったのは、
㈱ダイナムの野中亮治さん。
人材開発部教育担当。
それから㈱万代の2人。
井坂さんはひとつひとつの質問に、
丁寧に答えてくれた。
少しずつすこしずつ、
上田惇生先生に似てくる気がする。
ありがとうございました。
心より感謝。
サービス・イノベーションの本質を
解き明かしつつ
ミドルマネジメント・イノベーションを、
訴える。
最後の言葉は、
マザーテレサ。
Be careful of your thoughts,
for your thoughts become your words;
思考に気をつけなさい、
それはいつか言葉になるから。
Be careful of your words,
for your words become your deeds;
言葉に気をつけなさい、
それはいつか行動になるから。
Be careful of your deeds,
for your deeds become your habits;
行動に気をつけなさい、
それはいつか習慣になるから。
Be careful of your habits,
for your habits become your character;
習慣に気をつけなさい、
それはいつか性格になるから。
Be careful of your character,
for your character becomes your destiny.
性格に気をつけなさい、
それはいつか運命になるから。
そして最後のメッセージは、
「自ら変われ」
自分の行動を変えよ。
自分の在り方を変えよ、
自分自身を変える必要はない。
自分の強みを伸ばせ。
2泊3日のミドルマネジメント研修会。
長時間にわたるご清聴を感謝したい。
今回の参加者は、
かならずそれができる。
期待しつつ、私は確信していた。
午後3時15分。
事務局が見送る中、
バスが静かにホテルを出発した。
この研修の冒頭で、私は、
「脱グライダー商人」を提起した。
それはおんぶに抱っこの、
サラリーマン根性を否定することだ。
「抱っこでは子の視線は親に向かう。
親も子の顔色がよくわかる」
「おんぶでは子の視線は
親が見ている対象のほうに向かう」
どちらも、いいものだ。
しかし、仕事は、
いつまでもおんぶに抱っこでは、
いけない。
肩車も一番気持ちいいが、
それもいけない。
脱グライダーであらねば。
セブン&アイも、
たったひとりの強いパワーで、
引っ張られる集団であっては、
いけない。
〈結城義晴〉