アメリカにやってきて、
10日が過ぎる。
疲労もピーク。
今日は朝からセミナー。
第12回平和堂米国研修団団長は、
柳本啓之さん。
滋賀大型営業部部長。
米国チェーンストアの大潮流と、
ポジショニング戦略を講義。
競争の構図を、
マーケットリーダー、
マーケットチャレンジャー、
マーケットフォロワー、
そしてマーケットニッチャーで、
説明する。
しかしそこにもう一つ、
新しい競争者が登場している。
その新たな視点を、
アメリカと日本の市場を、
比較して解析した。
セミナーを終えて、
店舗視察へ。
まずホールフーズの店の前で、
全員写真。
ポジショニングを確認するために、
三つのジャンルに分けて勉強する。
第1はオーガニック・ナチュラル型。
御三家の筆頭は、
ホールフーズマーケット。
牛肉を注文し、笑顔の団員。
これが夕食の「調理・試食会」の材料となる。
チーズからベーカリーの売り場。
オリジナル什器のオリーブバー。
ホールフーズの什器開発は、
プレゼンテーションそのもの。
透明な囲いのスープバー。
入口では、
円形ひな壇に並ぶ、
テーブルフラワー。
2番目は
トレーダー・ジョー。
エントランスにはかぼちゃの山。
ハロウィンのシーズンならでは。
こちらはテーブルフラワー。
多段什器に整然と並ぶ。
価格は3.99ドル、5.99ドル、
そして9.99ドルの3ライン。
どこのトレーダー・ジョーも、
必ずバナナが導入部になる。
ケースを斜めに配置する。
これもこの店の特徴づくり。
ポジショニングの構築。
トレーダー・ジョーのチラシは、
フィアレスフライアー。
毎月1回発行されるが、
このチラシに掲載されたアイテムで、
エンドをつくる。
団員は買い物。
トレーダー・ジョーは、
値段を気にせず買物ができる。
それが最大の魅力だ。
3 番目は、
スプラウツファーマーズマーケット。
店舗奥中央が広い青果売り場。
オーガニック&ナチュラルの商品が、
ホールフーズに負けないくらい、
品揃えされている。
今日のオーガニック商品は、
189アイテム。
青果と並ぶ核部門はバルクフード。
レジ手前に広がる。
穀物、コーヒー、菓子までを揃える。
店舗左サイドはバイタミンコーナー。
サプリメントもホールフーズに負けない。
ナスダック上場以来、絶好調。
リーズナブルな価格と、
ベジタリアン向けの豊富な品揃えで、
ホールフーズとトレーダー・ジョーの
間に割って入って急成長。
珍しく前面はガラス窓のつくり。
日差しが差し込む。
いい店舗だ。
第2番目がディスカウント型。
低価格のポジションの中で、
御三家ともいえるフォーマットがある。
その第1が、
ウォルマートマーケット。
店に入ると、
スーパーセンター食品部門そのもの。
天井高、色彩、内装ともに、
ウォルマート。
いま「ネイバーフッドマーケット」を、
「ウォルマートマーケット」に変更中。
入口ではもちろん、
圧倒的なハロウィン販促。
青果部門は、
単品量販を徹底する。
そのうえこのカラーリングの美しさ。
オーガニック商品を強化。
ディスカウント型でも、
オーガニックを扱う。
この分野の競争は、
ますます激しくなってきた。
奥主通路はのこの長さ。
そして整然とした売り場。
2アイテムだけで構成するエンド。
価格だけでなく、
縦陳列のこの訴求力が、
ウォルマートの特徴だ。
エブリデーロープライスと、
ロールバックを半々で提供。
お客を誘引する、
ファーマシー部門。
処方箋の扱い量は全米一。
2番目は、
ウィンコフーズ。
エクストラセービングの
クッキー1ドル98セント。
ウォルマート、クローガー、
そしてアルバートソンより安いと、
価格比較POPでアピールする。
青果売り場でも価格比較のPOP。
いやらしいほどの徹底ぶり。
回転がいいから、
商品の鮮度もいい。
ディスカウント型でも、
ピカピカの床。
ウォルマートが品揃え型なら、
ウィンコは、単品量販型。
だからウォルマートの価格を、
くぐることができる。
広いスペースのバルクフード売り場。
カラフルで美しい。
ベーカリーからデリ、シーフード、
ミートへと続く店舗奥の売り場。
広い広い奥主通路。
そこに斜めに平ケースを配置する。
これもポジショニング構成要件。
ディスカウント型でも
これだけのプレゼンテーション。
ポークの平ケースでは、
固まり肉を販売。
ここでも価格比較をして、
どれだけ節約になるかを訴求。
牛乳1ガロン1.19ドル。
1リットルで31セント。
なんと31円。
ラック什器に並ぶ水。
上部は補充在庫となる。
まさに倉庫。
むき出しの天井と採光窓、
そして空調ダクト。
ローコストの建造物でも、
快適な店内空間だ。
ウィンコは従業員持ち株会社。
それがファサードに謳われている。
An Employee Owned Comany。
ウィンコの強みがここにある。
3番目は、
アルディ。
トレーダー・ジョーの兄弟会社で、
ドイツのアルディのアメリカ版。
1ガロン牛乳1.09ドル。
ウィンコよりも安くて29円。
私、これまでのアメリカ経験で、
一番安い牛乳に出合った。
プライスリーダーは、
やはりアルディだ。
バックルームから、
カートのまま補充する。
それでも前面の商品は、
全部売れている。
グロサリーはすべて段ボール陳列。
その段ボールがカラフルで、
陳列すると美しい売り場になる。
オーガニック商品も、
ずいぶん増えた。
ディスカウント型でも、
オーガニックは必須の商品群だ。
オーガニックのポークチョップス。
肉厚の3枚で4.87ドル。
いつも感心させられるが、
見事な商品だ。
青果売り場。
回転がいいから、
鮮度もよくなってきている。
高い天井と
ローコスト設計。
レジは座って精算する。
しかも驚くほど速い。
ディスカウント型も、
それぞれのポジショニングを、
確立している。
ただ安さを競う、
レース型競争の時代ではない。
最後に、マルチフォーマット展開。
クローガーフレッシュフェア。
クローガーの都市型スーパーマーケット。
やや小ぶりな1500坪型で、
その名の通り、
生鮮とデリを強化している。
華やかなフラワー売り場。
クローガーはいつも、
花でお客を出迎える。
花から青果売り場へ、
そして右がデリ。
中2階のイートインから見下ろすと、
この店の美しさが満喫できる。
日本の企業のモデルにしていい店舗だ。
手づくりピザのコーナー。
実演販売をして、
試食をお勧めしてくれる、
笑顔のスタッフ。
フレッシュフェアは都市型で、
やや価格帯が高くて、
生鮮とデリを強化する。
そのうえホスピタリティも。
最後の最後に、
クローガーマーケットプレース。
クローガーのノンフード強化型大型店。
もちろんウォルマート対策店舗。
この店もバルーンと花。
これがクローガーの定石。
入口の青果部門は、
市場スタイル。
高い天井からの採光で、
気持ちのいい店内。
かご盛りのフルーツを、
多段什器に並べる。
クオリティ感が倍増する。
ニューヨークスタイルの、
クラシックチーズケーキ。
クローガーのクオリティブランド、
「プライベートセレクション」
ハム・ソーセージやパテも、
プライベートセレクション。
ハムソーの対面売場は、
ボアー・ヘッドのブランド。
人気ブランドを専属契約で導入して、
プライベートセレクションとの、
二本立て作戦。
ハロウィンプロモーションコーナー。
クローガーはバルーンを多用する。
そして懸案のアパレル売り場。
「ファッションエッセンシャルズ」と、
コーナー化された
アパレル売り場は、
家具売り場を撤去して設けられた。
食品と家具よりも、
食品と衣料品のほうが、
親和性が高い。
それが根拠。
インタビューすると、
「伸びている」と答えるけれど、
売り場を見る限り、
クローガーの衣料は道半ば。
これでウォルマート対抗型として、
機能するのか。
レジはセルフ、セミセルフ、
通常の3レーン。
そしてお客を並ばせない。
クローガーのサービスの考え方が、
ここに表れている。
今日は8店を巡った。
小売業のポジショニングを学ぶため。
「ポジショニング戦略10の決め手」より。
変化に慎重になること。
「変化が激しくなるほど
変わらないものの価値は上がる」
それに応えてくれる店舗群だった。
ダラス・フォートワースの商人に、
感謝しておこう。
(つづきます)
〈結城義晴〉