サンフランシスコ最後の日。
私の2週間の旅も、
そろそろ終幕に近づいた。
ニッコーホテル25階。
いつものセミナールーム。
ダウンタウンの街並みを見下ろす。
ダラスで1度、2時間の講義をして、
その後も毎日、バスの中で講義。
それらを総括する講義。
ポジショニング戦略の復習をして、
それからマーチャンダイジング戦略。
全員が集中して、
平和堂米国研修第12団は、
よくまとまっている。
その平和堂にとって、
ニチリウにとって、
何が商品面の課題なのか、
何を問題解決しなければならないのか。
そして一人ひとりが、
どう行動しなければならないのか。
最後は具体的な提案や行動提起となる。
2時間の講義が終わると、
リムジンバスで最後の視察へ。
ドライバーはいつもの杉さん。
まずはダウンタウンの北へ。
ゴールデンゲートブリッジ。
サンフランシスコ湾に、
アルカトラズ島が浮かぶ。
ほんのわずかの観光。
しかし気分は爽快。
バスに乗り込んで北へ。
シアーズの店舗。
1990年まで、
米国小売業の王者として君臨。
かつては絶対的なステータスを有した。
しかし現在は、
見るも無残。
顧客は人っ子一人いない。
店員も見当たらない。
出入り口のそばで、
たった一人で、
クリスマスデコレーション作業。
2005年にKマートと企業統合されて、
シアーズホールディングスの傘下に。
2016年1月決算は、
売上高251億4600万ドル、
2兆5146億円。
前年比マイナス9.2％。
Kマートとの合計額。
純損失が11億2900万ドル。
つまり1129億円の赤字。
それでも1672店舗ある。
エドワード・ランパートCEOは、
名うての投資家。
しかし小売企業再生に関して、
その能力はないし、
その気もない。
かくて、シアーズとKマート。
顧客への貢献もないし、
ショッピングセンターにとっては、
お荷物状態。
この先の展望はない。
それからバスを走らせて1時間。
バカビル市。
ナゲットマーケット。
現在14店舗で年商280億円。
働きたい企業ランキングの16位。
会社の規模は小さい。
しかし働く意欲のある社員が集まる。
入口の一丁目一番地。
全エンドの中で、
この日最強の商品を並べる。
そしてファンタスティックな売り場へ。
アクチュアリーロープライス。
つまり店はファンタスティックだが、
価格は実質的に安い。
右手はサービスデリ売り場。
ウェグマンズ並みの味とQuality。
そして世界に名がとどろく野菜売り場。
この曲線の売り方。
この美しさを堅持しつつ、
売り場を完璧に維持する。
商品陳列、床、什器。
息を呑むほど美しい。
まさにファンタスティック。
それでいて、クレート陳列も採用。
スポットライトの使い方がうまい。
プレゼンテーションの技術として、
スポットの研究は必須だ。
自転車を使った島陳列。
惣菜の対面売り場は、
味で勝負。
いつもランチを食べるが、
本当においしい。
青果と惣菜が向かい合っていて、
このコンビネーションがいい。
続いてシーフード売り場。
ダンジネスクラブも品揃えされ、
ローカルを重視している。
シーフードからミートへ。
店中の床がピカピカ。
このピカピカで、
ポジショニングを構築している。
ワインの品ぞろえは深い。
決して安くはないけれど。
シーフードとミートが、
ワインと向かい合う。
ホールフーズは、
チーズとワインだが。
奥壁面沿いのコンコース。
この壁面の商品力が、
インディペンデントの弱みのひとつだ。
エンドもアイルも、
美しい。
この単品ボリューム陳列。
側面の細かいところまで丁寧だ。
そして冷凍食品売り場は、
真ん中に平ケース、
両サイドがリーチインケース。
床はピカピカ。
商品力が弱いところは、
床のピカピカで補う。
店舗左サイドのコーナーは、
この湾曲陳列のノンフード。
エンドもボリューム感満点。
ウォルマートやウィンコの価格は、
14店舗ではとても出せない。
ならば、陳列と床のピカピカで、
アクチュアリーロープライスを演出する。
｢ホメオパシー」のエンド。
つまり「立証されてはいないけれど、
効果があるかもしれません」
オメガ3やチアシードが並ぶ。
レジ前のスペースも床がピカピカ。
顧客は満足しつつレジに向かって、
このファンタスティックな店を楽しむ。
石鹸の売り場はバスタブを利用。
そしてレジ前に、
バルク売り場。
最新のパターンは、
青果とバルクが一体となっているが、
ナゲットのこの店はまだ、
バルクが離れている。
写真奥がキッチン用品。
手前の島陳列は非食品の特売。
最後にハロウィンの島陳列。
レジには若い人材を配置して、
活きのいいサービスをする。
ナゲットとシアーズの対比。
小さくても働き甲斐のある企業が、
今は一番いい。
帰りのバスで最後の講義を1時間。
それからいったん解散して、
自由研修時間。
私は部屋に戻って、
ブログを書いたり、
カードに言葉を書いたり。
再集合して、
フィッシャーマンズワーフへ。
いつものメリーゴーランド。
そしていつものレストラン。
窓からアルカトラズが、
まるで絵のように見える。
サンフランシスコ湾に、
夕日が沈んでいく。
ゴールデンゲートブリッジが、
夕日にかすむ。
そして最後の晩餐。
柳本啓之団長の挨拶。
滋賀大型営業部部長。
西野伊佐男副団長が、
乾杯のあいさつと音頭。
アルプラザ城陽支配人。
ビールを飲んで、
ディナー。
まずサラダとクラムチャウダー。
そしてサンフランシスコ名物の、
ダンジネスクラブ。
静かに食べるうちに、
夕日は沈んだ。
食べ終わったら、
班ごとに決意表明。
みんな、素晴らしい内容だった。
そのあと、
10月に誕生日を迎えた5人のお祝い。
バースデーケーキのロウソクを、
5人で吹き消し、
一人ひとりにカードのプレゼント。
このカードの言葉は、
｢勇気とは、
未知なる世界に一歩、
目隠しで踏み込む
心のあり方だ」
(結城義晴)
その後、再び団長、副団長、
そして営業統括本部の夏原陽平さんが、
この研修を総括しつつ、
それぞれに抱負を述べた。
最後に藤森正博さんが、
アメリカに学ぶものを伝授。
帯同してくれたコーディネーター。
そして私がしんみりと、
平和堂の強みを語って、
幕を閉じた。
最後の最後は、
全員で円をつくって、
夏原さんの音頭で、
一本締め。
月も美しかった。
フィッシャーマンズワーフ名物のカニも、
踊っていた。
それから全員で、
ケーブルカーの駅まで歩く。
貸し切り状態で乗り込んで、
ユニオンスクエアまで。
ビールとワインでほろ酔い。
夜風に当たって、
気持ちよかった。
あっというまに終点。
ケーブルカーは夜もいい。
5泊7日は、ほんとうに、
あっという間に過ぎていく。
｢この一瞬の積み重ねこそ、
君という商人の全生涯」
倉本長治の言葉が、
ずっと頭の中にあった。
(つづきます)
〈結城義晴〉
