アメリカにやって来て、
9日が経過する。
到着した当日、
ドナルド・トランプ候補が、
大統領選挙の一般投票で勝利し、
実質的な第45代大統領に決まった。
そのトランプ次期大統領、
ロシアのウラジミール・プーチン大統領や、
中国の習近平国家主席と、
電話連絡を取って、
関係改善に努め始めた。
正式な大統領就任式は、
来年1月20日。
まだ、2カ月以上も先の話だが、
どうも違和感を覚える。
英国フィナンシャルタイムズは、
プーチン、習、トランプを、
「ストロングマン」の系譜だと指摘したが、
その強権的な国家指導者たちが、
すんなりとつながったことは、
わからないでもない。
そのフィナンシャルタイムズ、
Andrew Hillの論説を掲載。
二つのリーダー像を紹介する。
指揮統制型のリーダー、
自己陶酔的なリーダー。
フランス経営大学院インシアード、
そのジャンピエロ・ペトリグリエリ教授の説。
前者の指揮統制型は、
スティーブ・ジョブズやヘンリー・フォードなど、
いわゆるビジネスの天才型。
後者の自己陶酔型が、
ドナルド・トランプ。
人々のムラ意識に訴えかける。
「我々は善人で、あいつらは悪人だ」
「だが、度が過ぎると、
ナルシシズムは、
指導者の効果を妨げる恐れがある。
不要なリスクを取ることを
けしかける可能性さえある」
ここでビジネス社会に対する警鐘。
トランプの成功を受けて、
「多くの経営幹部が、
いざトップに上り詰めるときに
組織運営という
本質的だが困難な課題を無視し、
権力への近道として
トランプ氏の自己肥大を
まねる気になるのは確実だ」
本質的で困難な課題、
それに取り組むのが、
経営幹部の役目なのに。
そして「経営者候補として、
「見かけや気質において
トランプ的要素が少ない人々は
単に、トップを目指さなくなる」
これほど恐ろしいことはない。
インテグリティは、
ピーター・ドラッカーが重視した姿勢。
トランプにはそれが感じられない。
残念なことだが。
朝日新聞『折々のことば578』
鷲田清一編著。
名をのこさなくてもいい。
「ぼうず、いい手をもて」
(いせひでこ作・絵本「ルリユールおじさん」から)
1949年生まれの絵本作家。
夫はNHK出身のノンフィクション作家・柳田邦男。
「大好きな植物図鑑が
ついにばらばらになり
途方に暮れる少女が、
やっと一人の製本職人を探しあてる。
そして丹念な作業の一つ一つを
目を丸くして見つめる」
「本の修復にとりかかった老職人は、
昔、父親が言っていたのを思い出す」
名を残さなくてもいい。
いい手をもって、
いい仕事をせよ。
トランプの影響で、
名を残すことだけ考える人間がふえる。
それが困ったことなのだ。
職人の寡黙が松の手入れかな
〈朝日俳壇より 今治市・横田晴天子〉
名を残すより、
いい手をもつ。
〈同 浜田市・田中由紀子〉
さてサンフランシスコの2日目。
宿はホリデーインの、
ゴールデンゲートウェイ。
今回の講義は、
コモディティ化現象からスタートして、
商品論の基礎から応用、
高度な理論まで、
一気に語りつくした。
今回のメンバーは、4月から、
万代知識商人大学で学んできた。
それをアメリカ視察の中で、
観察し、考察し、自分なりに、
総括する。
自分の目で見て
自分で考える。
それが知識商人として大事なこと。
講義を終えるとすぐに、
専用バスでバークレー地区へ。
バークレーボウル1号店。
日系のヤスダ夫妻が、
1999年に開設。
全米一の青果部門をもつ大繁盛店。
青果の導入部は、
全部、オーガニック売場。
有機栽培の新鮮な野菜や果物が、
全米一の品揃えで並ぶ。
リンゴはこんなに種類があるのか、
そう思わせるほど多品種が揃う。
野菜の種類も実に多彩で、
バークレーボウルにしかない商品もある。
しかも鮮度は抜群で安い。
シーフードとミートの対面売り場、
鮮魚は生で食べられるほど鮮度がいい。
これも全米有数。
日系経営者だけに、
手づくりのいなり、
おにぎりを品揃えする。
これが実においしい。
たった2店舗のスーパーだが、
とても模倣はできない。
これぞマーケットニッチャーだ。
そして隣はバルク売り場。
この店の特徴は
壁面のデザインにある。
それぞれのコーナーごとに、
壁面デザインと商品が
完璧にマッチングして、
それが秀逸。
奥壁面に設けられた
シー&ランド。
シーフードとミートを、
部門ごと合体した、新しい試み。
デアリー売り場。
フレームの細い、
独自のリーチインケース。
可視率が高い。
だからガラスをしっかりと磨く。
売り場の横、
店舗左翼にはカフェスペース。
アレグロコーヒーは、
焙煎まで行う。
私も朝のカフェオレで一服。
バークレーボウルの影響で、
青果部門を縮小したギルマン店だが、
完全に「第三の場所」となって、
ホールフーズの存在感を確保している。
だからこそ、デザインの洗練度は、
必須条件なのだ。
次に、アラメダショッピングセンターへ。
ライフスタイルセンターで、
核店舗の一つは、
トレーダージョー。
そしてフレンドリーなレジ。
トレーダー・ジョーにぶれはない。
もう一つの核店舗は
セーフウェイ。
トレーダー・ジョーと隣り合わせで、
棲み分けしている。
セーフウェイの新フォーマット、
ニューライフスタイルストア。
木目調の什器とスポット照明で
商品を浮かびあがらせる演出をほどこす。
売場のいたるところに、
バルーンが使われている。
これで遠くからお客を誘導する。
店舗右サイドの入り口には、
クリスマスのデコレーション。
全米に約2200店の企業。
そのなかでもトップクラスの店舗だ。
そのアラメダのセーフウェイは、
トレーダー・ジョーと隣接して、
競争する。
競争は商人を磨く砥石である。
セーフウェイも、
トレーダー・ジョーに磨かれている。
アラメダを後に、
サンフランシスコ市街に戻る。
湾沿いの高速道路。
あいにくの曇り空だが、
それでも橋を渡りつつ眺める景色は、
すばらしい。
クリスマス仕様の犬のぬいぐるみ。
ターゲット・ロゴの目がいい。
おもちゃ売り場は、
ホリデーシーズンの目玉。
ターゲットもこの店は繁盛している。
日が陰りだしたころ、
スプラウツ・ファーマーズマーケットへ。
青果売り場とレジの間には
バルク売り場。
穀物や木の実などを量り売りする。
サンフランシスコ2日目も、
充実した視察研修だった。
とんがりの店。
アウトスタンディングなポジショニング。
それが生き残りと成長の、
唯一のカギを握る。
そこで働く人たちは、
みんないい手をもっている。
(続きます)
〈結城義晴〉