勤労感謝の日。
毎年、15番目にやってくる国民の祝日。
日本の祝日は、残すところ、
12月23日の天皇誕生日のみ。
つまり16回の国民の祝日がある。
世界の祝祭日で一番多い国は、
インドとコロンビアの18日、
三番目に多いのが16日で、
今年から日本は、
山の日が一日増えて、
この3位グループに入った。
勤労感謝の日の趣旨は、
「勤労をたっとび、生産を祝い、
国民たがいに感謝しあう」こと。
1948年以前は、
新嘗祭(にいなめさい)。
今日も皇居・宮内庁では、
この祭りが執り行われた。
天皇陛下が、
天照大御神はじめ八百万の神々に、
五穀を捧げて豊作を感謝し、
また陛下自らも新穀を食す。
五穀とは、稲・麦・粟・大豆・小豆。
飛鳥時代から延々と続く、
唯一の行事といわれる。
今年9月19日のこのブログにも書いたが、
祝日と祭日は異なる意味を持つ。
「祝日」は、国の記念日。
建国や独立など、
国の歴史的な出来事に由来したり、
功績のあった人物を称えて制定される。
「祭日」は、宗教儀礼上の、
重要な祭祀を行う日。
だから勤労感謝の日は祝日、
新嘗祭は祭日。
皇室のこの祭日そのものは、
日本の伝統として、尊重しよう。
そして日本国民の祝日としては、
自分たちの勤労に感謝しよう。
働くことに感謝する。
ここがいい。
朝日新聞一面の『折々のことば586』
鷲田清一さん編著。
人間の弱さは、
それを知っている人たちよりは、
それを知らない人たちにおいて、
ずっとよく現われている
(パスカル『パンセ』前田陽一・由木康訳)
「おのれの弱さに
向きあうのは難しい。
つい虚勢をはったり、
ものごとを傲慢に言い切ったりする。
自分をそのままで保てないのだ」
「自分の弱さを知る人は、
自分が誰かに支えられていることも
よく知る」
「だから他人の弱さにもすぐ気づき、
すっと手を差し伸べられる」
勤労感謝の日は、
「自分の弱さを知る日」である。
「誰かに支えられていることを知る日」、
「他人の弱さに気づく日」である。
「すっと手を差し伸べる日」である。
さて、ドナルド・トランプ次期大統領。
来年1月20に就任式の予定。
しかしその初日に、なんと、
「TPP離脱を通告する」
その代わりに、
「米国に仕事と産業を取り戻す
公平な2国間の通商交渉」を目指す。
メガFTAでなく、2国間の交渉を通じて、
自国に有利な条件を引き出す。
安倍晋三首相が、
押っ取り刀で駆けつけて、
「信頼できる関係」を築こうとしたが、
あえなく裏切られた。
日経新聞『大機小機』
「トランプ保護主義を阻止せよ」
コラムニスト隅田川さんが、
トランプの表明内容の矛盾を、
ズバリ、分析し、指摘する。
「こうした主張は、
経済学の常識に反し、
時代遅れである」
その理由の第1は、
「輸入を抑制すれば
国内の雇用が回復すると
考えているようだが、これは誤りだ」
「国境を越えてサプライチェーンが
構築されつつある現代において、
輸入の制限はコスト高となり、
かえって米産業の競争力をそぐ」
第2の理由。
「中国や日本が米への輸出を
増やしているのは、為替操作など
何らかの不公正な輸出促進策を
しているからだと考えているようだが、
これも間違いだ」
「日中が対米輸出を増やしてきたのは、
基本的には産業の競争力が米国に
追いつき、追い抜いてきたからである。
この点を理解せず、いつまでも
他人のせいにしていたのでは
米産業の復活は遠のくばかりだろう」
そして第3の理由。
「『メガFTA』と呼ばれる
多国間での自由貿易協定(FTA)は、
今や世界の自由貿易を推進する
重要なエンジンである。
もちろん世界貿易機関のラウンドで
多角的な自由貿易を
推進するのが理想だが、
それが進まないから
メガFTAに期待が集まるのだ」
「米国が消極的になれば、米国自身が
自由化の波に取り残される」
コラムニストは繰り返す。
「トランプ氏の主張は
あまりにも常識外れで、
それがそのまま実現するとは思えない」
しかし、この「思えないこと」が、
次々に起こってしまった。
そんな時代にはやはり、
不変の哲学が見直されねばならない。
人間の弱さは、
それを知っている人たちよりは、
それを知らない人たちにおいて、
ずっとよく現われている
ドナルド・トランプの弱さは、
それを知らないアメリカ国民において、
ずっとよく現れてくる。
「おのれの弱さに
向きあうのは難しい。
つい虚勢をはったり、
ものごとを傲慢に言い切ったりする」
それに安易に同調してはならない。
かといって静観していてもいけない。
「日本が取るべき道」は、
「日本自身が
世界の貿易・投資の流れを
より開かれたものにしていくうえで、
リーダーシップを発揮することだ」
しかし、これまでの与野党。
「相変わらず農産物の貿易自由化に消極的」
「対内投資は対外投資に比べて見劣りする」
「外国人労働力の受け入れに前向きでない」
ああ。
勤労感謝の日は、
「自分の弱さを知る日」
である。
「誰かに支えられていることを知る日」、
「他人の弱さに気づく日」である。
「すっと手を差し伸べる日」である。
〈結城義晴〉