猫の目で見る博物誌――。
猫の目は変わらぬものを見分ける。
そんな目で見る博物誌――。
Merry Christmas!
今日こそ、クリスマス。
そしてクリスマスツリー。
もちろん立教大学。
クリスマスのイルミネーション。
クリスマスキャロル。
もみのき もみのき ときわに あおき
もみのき もみのき ときわに あおき
くさもえる なつも ゆきしろき ふゆも
もみのき もみのき ときわに あおき
〈小学校教科書、野口耽介作詞〉
ドイツ民謡。
日本語の歌詞は、いくつもある。
樅の木 樅の木 生いや茂れる
木蔭をさまよい 語りし思い出
樅の木 樅の木 いなまお恋し
〈並木祐一訳詞〉
もみの木 もみの木 いつも緑よ
もみの木 もみの木 いつも緑よ
輝く夏の日 雪降る冬の日
もみの木 もみの木 いつも緑よ
〈中山知子作詞〉
おおタンネンバウム
おおタンネンバウム
ときわのみどり
おおタンネンバウム
おおタンネンバウム
ときわのみどり
夏の山路には 枝をさしのべて
清がしき木陰に われをいざなう
〈早川義郎作詞〉
ちなみにコーネル大学の校歌も、
この歌のメロディー。
樅は、マツ科モミ属の常緑針葉樹。
学名Abies firma。
北半球の寒冷地から温帯に分布。
日本に自生する樅は、
北端は秋田県、南端は鹿児島県屋久島。
樹高は40mにも達する。
樹形は円錐状で、
クリスマスツリー形となることが多い。
枝は、幹の同じ高さから、
輪を描くように四方八方に出る。
輪生(りんせい)という。
樹皮は茶色がかっている。
葉は針状。
細くて固い。
先端はふたまたで、
鋭くとがっている。
マツ科の植物は雌雄異花。
樅の雄花は、
小さなラグビーボール形で、
多数群生する。
雌花は、枝の先端に、
上向きに形成され、
受粉後上向きに立ったまま、
果実になる。
果実は「球果」と呼ばれ、
木化した鱗片状の葉が、
球状に集まってできている。
球果の大きさは10~15cm。
若い球果の色は緑色、
成熟すると灰褐色に変わる。
熟すると樹上で、
鱗片が剥がれ落ちて分解し、
種子を散布する。
『樅ノ木は残った』は、
山本周五郎の歴史小説。
江戸時代前期の「伊達騒動」が題材。
仙台藩伊達家で起こったお家騒動。
主人公は国家老の原田甲斐。
従来の解釈では、
悪人とされてきたが、
山本周五郎は、
幕府による取り潰しの画策から、
伊達藩を守るために尽力した、
忠臣として描く。
その原田甲斐が、
自邸の庭に立つ樅の巨木を語る。
「私はこの木が好きだ。
この木は何も語らない。
だから私はこの木が好きだ」
樅の木のイメージは、重い。
樅の木は永遠に青い。
草萌える夏も、雪白き冬も。
だからクリスマスキャロルになった。
くるくる変わるものは、
永遠の存在にはなりえない。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)