猫の目で見る博物誌――。
猫の目はちょっとだけ、
色が見えにくい。
モノクロームの世界。
そんな目で見る博物誌――。
けむり、ケムリ、煙。
物が燃えるときに立ちのぼるもの。
むつかしくいえば、
有機物が不完全燃焼するときに、
もくもくとでてくる気体。
固体、あるいは液体の微粒子が、
浮遊している状態。
工場の煙突などから出てくる。
かまどなどから立ちのぼるものも、
煙という。
木や油脂のような有機物を、
不完全燃焼させると、
灰色や黒色の煙がでる。
これは酸素過剰の状態から生まれる。
もしくは逆に酸素不足の状態から生じる。
そんな不完全燃焼が生みだす煙の正体は、
大半は炭素だ。
すなわち「すす」
木材や紙などのセルロース、
または純度の高い炭化水素、
例えばメタノールやガソリンなど燃える。
白い煙が出る。
この白い煙の成分は水滴。
燃えるものに含まれる水素が、
燃えるときに空気中の酸素と結びつく。
Hが2個とOが1個で、H2O。
つまり水ができる。
工場の煙突からでるのも、
たいていH2O。
いろいろな煙がある。
忍者の投げ玉でできる煙。
航空ショーの煙。
舞台芝居の煙はドライアイス。
けれど、広い空に、
もくもくと上がっていく煙。
悪くはない。
「人を煙に巻く」
これはあまりよろしくない。
煙、もく、もく。
もく・もく・もく・もく。
もく・もく・もく・もく・もく。
もく・もく・もく・もく。
もく・もく・もく。
もく・もく・もく・もく。
もく・もく・もく・もく・もく・も・くも・くも・くも。
くも・くも・くも・くも。
くも・くも・くも・・くも。
雲。
煙、もく、もく、は、
雲になるのかな。
猫は、空を見るのが好きだけれど、
でも、煙、もく、もく、は、
曇り空にしかならない。
みんな、はい色、ネズミ色の曇り空。
ああ。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)