猫の目で見る博物誌――。
猫の目は季節をとらえる。
鮮やかな、色とりどりの花。
桜の前の春の博物誌。
春色の汽車に乗って
連れて行ってよ
煙草の匂いのシャツに
そっと寄りそうから
何故 知りあった日から
半年過ぎても
あなたって手も握らない
I will follow you
あなたについてゆきたい
I will follow you
ちょっぴり気が弱いけど
素敵な人だから
心の岸辺に咲いた
赤いスイートピー
(作詞・松本隆、作曲・呉田軽穂)
歌はもちろん松田聖子。
松本は伝説のはっぴいえんどのドラマー。
呉田は実は松任谷由美。
グレタ・ガルボをもじったペンネーム。
黄金コンビの名曲は、
松田聖子のイメージを飛躍させた。
そのスイートピー。
英語でSweet pea。
和名はジャコウエンドウ(麝香豌豆)。
学名はLathyrus odoratus。
マメ科レンリソウ属の一年草。
昨日の日経新聞夕刊「 彩時季」。
「毒性ある『甘い豆』」として取り上げた。
原産地はシチリア島。
江戸時代に日本へ伝わった。
さやができて、そのなかに豆ができる。
豆は毒性があって食べられないが、
花の香りが甘い。
だから「スイート(甘い)ピー(豆)」
毒の成分はアミノプロピオニトリル、
β-aminopropionitrile。
豆と莢(サヤ)に多く含まれる。
3~5輪の花をつけ、
白やピンク、紫など彩りは豊富。
通常は50センチほどの長さ、
最大で9mほどまで成長する。
出荷量日本一は宮崎県で、
大分県や岡山県でも生産される。
スイートピーの日がある。
1月21日。この花の旬ではない。
1982年に松田聖子のレコードが、
最初に発売された日。
となると、日本のスイートピーは、
松田聖子と切っても切れないことになる。
ただし、真紅の(真っ赤な)スイートピー。
82年当時には存在しなかった。
白色、桃色、紫色などが主力だ。
赤いスイートピーの歌が大ヒットして、
三重県の農家が品種改良して、
約20年かけて量産にこぎつけたとされる。
日本では主に、
観賞用として栽培される。
「ぼくらはみんな生きている」
スイートピーには、
冬咲き、春咲き、夏咲きがある。
春咲き品種は9月下旬~10月中旬、
夏咲きは10月中旬~11月に、
種がまかれる。
種の発芽温度は15~20度。
スイートピーは日光を好む。
観光かながわNOW
地植えの場合は、
日当たりのいい場所。
腐葉土などを混ぜ込んで耕しておく。
中性、弱酸性土壌が適する。
土に深さ2~3㎝の穴を20cm間隔で掘り、
1つの穴に3、4粒の種をまいて、
軽く覆土する。
芽が出たら株元から切って、
1本に間引きする。
鉢植えやプランター植えは、
やはり3、4粒の種をまいて
日当たりのいいところで育てる。
芽が出たら、間引く。
表土が乾いたら、
たっぷりと水を与える。
しかし耐寒性がないので、
冬は水を与えすぎてはいけない。
生長すると巻きひげが伸びる。
支柱やネットを添えて、
つるを巻き付ける。
「誘引(ゆういん)」と呼ばれる。
草丈が20cmほどに伸びたら、
上の部分を5~6節ほど切り取って、
わき芽を伸ばす。
これは「摘心(てきしん)」という。
枝数が増え、ボリューム感が出る。
花が色あせてきたら、
「花がら摘み」をする。
花持ちがよくなる。
「ひつじの国の冒険」
「心に春が来た日は
赤いスイートピー♪」
松本隆の最後のフレーズが、
とてもいい。
Sweet pea。甘い豆。
でも猫は好みではない。
食べたら、毒がある。
だから、ユーキ家にはなかった。
それでも、春の日は、
心を温めてくれた。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)