結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2017年05月14日(日曜日)

【日曜版・猫の目博物誌 その41】カーネーション

猫の目で見る博物誌――。
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猫の目は季節を読み取る。
そしてイベントもわかる。
梅、桃、桜、ツツジ。
つぎは母の日のカーネーション。

お花の中では
カーネーション
一番好きな花♬

井上陽水。

その陽水ファンの方には、
ちょっと申し訳ないかもしれないけれど、
まったくつまらん詩だ。

子供の頃には何も
感じてなかったけれど
今では不思議なくらい
きれいだな
白いカーネーション♬

二番。

どんなにきれいな花も
いつかはしおれてしまう
それでも私の胸に
いつまでも
白いカーネーション♬

まあ、陽水の歌唱力と、
メロディアスな楽曲で、
ヒットした。
hanasozai.exblog.jp〉
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一方、椎名林檎。

小さく丸めた躯は今
かなしみ隠し震えて
命を表しているのね

重く濡らした瞼は今
よろこび映す日の為
心を育てているのね

かじかむ指ひろげて
風に揺れ雨に晒され
遥か空へ身を預けて
‥生きよう‥

何も要らない私が今
本当に欲しいもの等
唯一つ、唯一つだけ

こちらは作詩も天才的。

そのカーネーション。
英語でもcarnation。

ナデシコ目 Caryophyllales
ナデシコ科 Caryophyllaceae
ナデシコ属 Dianthus
学名はDianthus caryophyllus L.

日本ではオランダナデシコ、
ジャコウナデシコとも。

常緑性多年草。hanasozai.exblog.jp〉
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原産は地中海沿岸。
つまり南ヨーロッパ、西アジア。

17世紀には、
ガーデニングの発達したイギリス、
そしてオランダやスペインで、
300種以上の品種がみられた。

ヨーロッパは花を愛でる。
18世紀、19世紀に、
品種が飛躍的に増えて、
1840年、パーペテュアル系が生まれ、
1857年、マルメゾン系が誕生。

どちらもフランス。

そして現在、
商用カーネーションの時代となる。

日本では、
「カーネーションの父」と、
呼ばれる人がいる。
土倉龍治郎。
明治3年(1870年)生まれ、
昭和13年(1938年)没。
台湾で成功した実業家で、
その後、日本で、
カーネーションの開発に携わる。

近代的栽培技術を構築し、
新しい品種を生み出した。

現在、カーネーションは、
日本の切り花で第4位の産出額。
農林水産省の今年3月の発表で、
第1位はキク632億円、
第2位ユリ214億円、
第3位バラ187億円、
そしてカーネーションが第4位で123億円。

カーネーションは輸入も盛んだ。
52%が輸入品で、その数3億5000万本。
コロンビアが第1の輸入国で66%、
第2は中国の26%。

消費があるから生産がある。
需要があるから供給がある。

カーネーションの需要と消費は、
母の日という爆発点があるから。
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カーネーションの生産額日本一は、
愛知県西尾市一色町。

カーネーションの種類は多い。
3500品種が現在農林水産省に登録。

常緑性多年草だが、
開花期によって二つに分かれる。
一季咲き性品種は4月から6月に開花、
四季咲き性品種はいつでも開花する。

切り花の種類は、
マルメゾン種、ボーダー種、
グルナダン種、ファンテジー種、
マーガレット種、シャボー種、
そしてパーペチュアル種など。

形状で分けるとやはり、
大きく二つに分かれる。
スプレー品種と大輪品種。
後者はスタンダード品種ともいわれる。

スプレー品種は1本の茎に、
小さめの花が複数個ついている。
大輪品種は1本の茎に、
大きめの1個の花がついている。

母の日のカーネーションの由来は、
米国ウェストヴァージニア州に遡る。
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アンナ・ジャービスさんという女性。
アンナの母アンは、
1905年5月に亡くなった。

アンナは苦労をかけた母のために、
追悼会を行った。

1908年5月10日の5月第2日曜日。

このときアンナは、
グラフトンの教会に、
母の好きだった白いカーネーションを、
贈った。

アンナが贈った白いカーネーションは、
参加者に一輪ずつ渡された。

このアンナの母への思いが、
白いカーネーションに象徴されて、
母の日は、瞬く間に広がっていく。

1910年、ウエストバージニア州が、
「母の日」を認定。
1914年、アメリカ連邦議会が、
5月第2日曜日を「母の日」と立法。

1915年、世界で初めて、
Mother’s Dayが祝日となる。

ただし、フランスでは、
ちょっと事情が異なる。
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もちろん「母の日」はある。
5月最終日曜日。

カーネーションは贈らない。

フランスにかぎらずヨーロッパでは、
カーネーションは墓に添える花、
特に白いカーネーションは、
亡くなった人に手向ける花。

カーネーションを贈らない代わりに、
フランスの母の日の一番のプレゼントは、
「顔を見せること」

これはとてもいいと思う。

最後に俳句。

母の日のてのひらの味塩むすび
〈鷹羽狩行〉

母の日や大方の母けふも疲れ
〈及川貞〉

俳句はカーネーションよりも、
母の日のものが圧倒的にいい。

母の日のカーネーション。
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ボクにもかあさんがいます。
名前はミント。
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カーネーションは贈れないけれど、
もう、顔も見せられないけれど、
ありがとう。

(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)

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