猫の目で見る博物誌――。
猫の目は季節の変化が大好き。
夏のくだもの、スイカとモモ。
これは猫も大好き。
そのモモ(桃)。
バラ科モモ属の落葉小高木。
果実はジューシーでスウィート。
学名は Amygdalus persica L.。
英語でpeach、フランス語でpêche。
ドイツ語でpfirsich、イタリア語でpesca。
春には3月下旬から4月上旬頃、
薄桃色の花を咲かせる。
五弁または多重弁で、
多くの雄しべを持つ。
夏には7月から8月に、
球形で縦に割れた果実を実らせる。
水分が多くて甘い。
糖分、カリウムなどを多く含んでいる。
未成熟な果実や種子には、
青酸配糖体のアミグダリンを含む。
原産地は中国西北部、
黄河上流の高山地帯。
なるほど、「桃源郷」か。
紀元前4世紀頃に中国から、
シルクロードを通って、
ペルシャに伝わり、
それがヨーロッパにもたらされた。
だから英語のpeachなどは、
すべて語源は「ペルシャ」。
学名の種小名persicaは、
「ペルシャの」という意味。
日本では縄文時代から自生していたが、
弥生時代後期に中国大陸から、
栽培種が伝来した。
平安時代から鎌倉時代には、
祭祀用途にも用いられた。
江戸時代に全国に広まって、
明治時代に水蜜桃が輸入された。
現在、日本で栽培されている実桃品種は、
この水蜜桃系を品種改良したものばかり。
果実の収穫前に「袋掛け」が行われる。
害虫や鳥の食害に合うため、
それを防ぐ必要がある。
食用の桃の主な品種。
白桃(はくとう)。
「本白桃」ともいわれる、
日本の桃の元祖。
明治時代から岡山県で生産。
果皮と果肉はオフホワイト、
甘味が多いが、その甘味の中に、
わずかに渋みもあって、上品な味わい。
サイズは250~300gくらい。
8月上旬から出荷。
果皮がピンク色の無袋栽培もある。
白鳳(はくおう)。
「白桃×橘早生」として、
神奈川県から1933年(昭和8年)に登場。
果肉は白い。
やわらかな口当たり。
酸味は少ないが、多汁。
収穫時期は7月中旬~8月上旬。
出荷量は日本一。
あかつき。
白桃と白鳳の交配品種。
1979年(昭和54年)に商標登録。
糖度は高くて、歯ごたえがある。
収穫時期は7月下旬。
作付面積は日本で一番広いが、
出荷量は白鳳に次いで二番目。
ゆうぞら。
白桃とあかつきを交配した品種。
1983年(昭和58年)に登録。
果肉は緻密で糖度が高く、
日持ちにも優れている。
晩生種で8月下旬頃から出荷される。
川中島白桃。
長野市の川中島で偶然誕生した品種。
1977年(昭和52年)に命名。
重量は約250~350gと大きめ。
果肉はやや硬く、歯ごたえがあるが、
糖度は高い。
日持ちもよい。
8月上旬頃から収穫。
作付面積は日本で三番目。
日川白鳳。
1973年(昭和48年)に、
山梨県日川で発見され、
1981年(昭和56年)に登録。
7月上旬から収穫される早生種。
糖度は11~12度で、果汁が多い。
果肉はほどよいかたさ。
大きさは250g前後。
作付面積は日本で4位。
清水白桃。
1932年(昭和7年)に、
岡山県の桃園で偶然の発見。
岡山県や和歌山県で生産されている。
果皮も果肉も白っぽい。
果肉は柔らかく、多汁、甘味も強い。
果重は250~300gくらい。
7月下旬~8月上旬に収穫。
さらに黄桃(おうとう)系。
果肉が黄色い桃で、
缶詰に加工されることが多い。
生食用では「黄金桃(おうごんとう)」、
あるいは「ゴールデンピーチ」。
2016年の都道府県別収穫量、
ベスト10。
山梨県、福島県、長野県など、
降水量の少ない地域の盆地で栽培される。
1位 山梨県3万9900トン(前年比103%)
2位 福島県2万9300トン(110%)
3位 長野県1万6100トン(101%)
4位 和歌山県9870トン(105%)
5位 山形県9180トン(112%)
6位 岡山県5460トン(84%)
7位 新潟県2680トン(108%)
8位 香川県1050トン(95%)
9位 岐阜県728トン(103%)
10位 愛媛県314トン(102%)
山梨県が圧倒的に多くて、
二番目が福島県、そして長野県。
2016年の伸び率は、
山形県が前年比112%で一番高く、
岡山県がマイナス16%。
その岡山から贈られてきた桃。
白桃や匂ふばかりの嬰(やや)の頬
〈久保恵子「狩」より〉
そしてもう一句。
白桃を食べ三つほど若返る
〈中村房枝「六花」より〉
梅雨のサクランボ。
梅雨が明けると桃。
夏真っ盛りです。
桃はジューシーでスウィート。
三つほど若返ることができるらしい。
どうぞ、どうぞ、召し上がれ?!
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)