猫の目で見る博物誌――。
猫の目は季節の変化を読み取る。
もう夏の終わりを予感させるスイカの話。
ともだちができた
すいかの名産地♬
なかよしこよし
すいかの名産地♬
すいかの名産地
すてきなところよ
きれいなあの娘の晴れ姿
すいかの名産地♬
高田三九三作詞『すいかの名産地』
原曲はアメリカ民謡『ゆかいな牧場』
〈worldfolksong.comより〉
スイカは漢字で「西瓜」
西の瓜と書くように、
ウリ科スイカ属のつる性一年草。
その果実。
西方から伝わった瓜。
英語では、ウォーターメロン。
すなわち水のメロン。
日本の瓜、西洋のメロン。
メロンは瓜に含まれる。
スイカは日本では瓜の仲間、
西欧ではメロンの仲間。
メロンの学名は、
「Citrullus lanatus」
もちろん学名はラテン語。
原産は、熱帯アフリカ。
サバンナや砂漠で自生していた。
野生のスイカは、ほとんど甘みがない。
しかし水分は大量に保有する。
だから乾燥地帯の野生動物が、
水分を摂取するために、
スイカの果実を食べる。
水分ごと種子を飲み込んで、
糞とともに排泄し、
それが種子散布になる。
おもしろい。
人間もはじめは、
水分摂取のためにスイカを食べた。
同時に種子も食用にした。
種子は脂肪と蛋白質を含む。
果肉は、水分が90%以上。
一般に果肉は紅色。
スイカの生産地。
2013年の国別統計。
1位、中国 7294万3838t。
圧倒的に多くて、一桁違う7000万トン台。
2位 イラン 394万7057t
3位 トルコ 388万7324t
イランとトルコが300万トン台。
4位 ブラジル 216万3501t
5位 エジプト 189万4738t
6位 アメリカ 177万1734t
7位 ウズベキスタン 155万8301t
8位 アルジェリア 150万0559t
9位 ロシア 141万9953t
10位 ベトナム 116万2554t
日本の収穫量は世界で26位。
その日本の収穫量上位10都道府県(2013年)
1 位、 熊本県 5万1000トン[16.74%]。
5万トンを超えて日本一は熊本。
熊本県植木町には、
スイカ栽培のプロが集まる。
2 位、千葉県 3万8800トン[12.73%]。
富里市と八街市が主産地。
毎年6月下旬に市民マラソンが開催される。
「富里スイカロードレース大会」
給水所ならぬ「給スイカ所」が名物。
ゴール後はスイカ食べ放題。
3 位、山形県 2万7600トン[9.06%]。
尾花沢盆地が主な産地。
尾花沢スイカは糖度11%以上。
夏の尾花沢は、朝晩が涼しく、
甘いスイカが育つ。
4 位、鳥取県 1万9300トン[6.33%]。
西日本を代表するスイカの名産地。
かつての大栄町の大栄スイカは有名。
以下、
5 位 新潟県 1万8800トン[6.17%]
6 位 長野県 1万6800トン[5.51%]
7 位 茨城県 1万5600トン[5.12%]
8 位 北海道 1万4100トン[4.63%]
9 位 石川県 1万2600トン[4.14%]
10 位 愛知県 1万2300トン[4.04%]
現在はスーパーマーケットで、
二つ割り、四つ割り、
六つ割り、八つ割りなどで売られるが、
もちろん丸売りも。
昔は丸西瓜を、
井戸に投げ込んで冷やした。
スイカの種類は、
たとえば大玉種と小玉種。
大きさによる分類。
赤肉種と黄肉腫。
これは果肉の色で、
一般的な赤いものと、
黄色、橙色などもある。
球のかたちで、一般的な球形と、
ラグビーボールのような長楕円型がある。
日本の西瓜は球形が多いし、
アメリカのウォーターメロンは楕円形。
表皮の模様でも分類される。
一般的には縦縞模様。
しかし模様がほとんど無い緑色のスイカ、
独特の細かい模様が入ったものもある。
黒皮種の「でんすけ西瓜」もある。
スペインのメルカドーナで、
甘いスイカを食べた。
スイカは欧米のホテルの朝食でも、
メロンとともにカットして、
食べさせてくれる。
アメリカのウォーターメロンには、
「スイカの名産地」の陽気さがある。
しかし日本的な西瓜には、
井戸の中で冷やした、
懐かしさがある。
正岡子規の句に、
それがよく表れている。
敲けばか西瓜は赤し肺わろし
西瓜は赤い、肺は悪い。その西瓜を敲く。
ものもいはで喰ひついたる西瓜哉
ものも言わず、食らいつく西瓜。
君來ばと西瓜抱えて待つ夜かな
君が来るのを西瓜を抱えて待つ。
そんな夜。
梅雨が明けたあとの桃と西瓜。
夏真っ盛り。
桃は三つほど若返る。
赤ん坊のような若さがある。
西瓜はみずみずしいけれど、
どこか哀愁がある。
夏の終わりを予感させるから、
かもしれない。
それでもどうぞ召し上がれ?
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)