「Jet Lag」
症状が顕著な場合には、
「時差症候群」と呼ばれる。
あるいは「非同期症候群」。
私の場合、それほどではないし、
ボケた感じもない。
しかし夕方になると、
ひどく眠くなる。
ビールなどちょっとでも飲むと、
すぐに寝てしまう。
そして早朝3時、4時に目が覚める。
それはそれで、
有益な時間として活用できる。
仕事する。
周囲で発生している外因性リズムと、
身体に刻まれている内因性リズムに、
同期のずれが生じる。
この同期のずれが修正されるまでの期間、
身体に不調状態が発生する。
このずれが解消される期間には、
個人差・地域差がある。
一般的には若い人、体力のある者の方が、
解消される時間は短い。
それから、東から西へ移動した場合は、
西から東へ移動した場合よりも、
2割ほど早く、時差ぼけが解消される。
つまり、米国から帰国するときの方が、
日本からアメリカへ行くときよりも、
2割がた時差ぼけしている時間は少ない。
人間の体内時計は、
24時間を超えた長いリズムに、
対応する傾向があるらしい。
アメリカから日本に帰って来ると、
1日が長くなる。
だから時差ぼけも少ない。
私はもう、若くはない。
しかし体力はある方だと思う。
そしてニューヨークから、
東京、大阪へと移動した。
だから無性に眠くなる以外は、
直接的な被害はない。
明け方の時間に仕事ができるし。
さて大阪マリオット都ホテル。
あべのハルカスの47階の部屋から、
大阪市内を見下ろす。
夜が明けてきた。
7時近くになると、
大阪の全貌が明らかになる。
曇り空。
それでも眺めは素晴らしい。
太閤秀吉がここに城を築いて、
日本の中心にしようとした意味も、
わかる気がする。
風の色束ねて千草の色となる
〈朝日俳壇より 神戸市・藤井 啓子〉
(大串章選評)
風は北から南から強く弱く吹く。
様々な風を束ねて千草の色となった。
今、そんな時だ。
あきばれやそうじせんたくものわすれ
〈同 静岡県松崎町・佐藤 良一〉
(金子兜太選評)ついでに漢字も忘れたか。
試みや良し。
こちらは時差ぼけではない。
朝食を済ませて、
タクシーで東大阪市渋川へ。
㈱万代本社。
今日は万代知識商人大学。
第7回目の今日のテーマは、
Strategic Management。
講義は3月6日に、
ミッションマネジメントから始まった。
そして実質的には今回が最終回。
来月の第8回は、
サンフランシスコへの修了旅行。
これまでの講義内容を、
アメリカで総括しつつ、
アクションプランをつくる。
そして修了論文の提出を経て、
来年の1月に総括講義と修了証授与式。
今回は経営戦略の意味、
そしてそのフレームワークや、
代表的な戦略論などを講義する。
2期生に質問を交えながら、
難しいテーマをわかりやすく、
解説していく。
故井上ひさし。
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
そしてゆかいなことを
あくまでゆかいに
私は林廣美先生直伝。
難しいことを易しく。
易しいことを面白く。
面白いことをより深く。
千宗屋「もしも利休があなたを招いたら」。
わかりやすさというのは
親切なように見えて、
実は非常に不親切なこと
なのかもしれません。
同感。
だからポピュリズムは、
非常に不親切なことなのだ。
第2・第3講義は、
万代の代表取締役副社長のお二人。
万代の経営戦略を改めて講義してもらう。
はじめに不破栄さん。
コーポレート部門トップとして、
内部環境に基づく経営戦略を講義。
不破さんの語り口はソフトで、
そのうえ、実に的確でわかりやすい。
まず、「経営」とは何か。
受講生に質問する。
「経営とは『経』理と『営』業だ」
なるほど。
イトーヨーカ堂創業者の伊藤雅俊さんは、
「算盤と商才」と表現する。
まさに経理と営業だ。
不破さんは、
企業経営の本質から始めて、
現在の万代の取り組みや、
ヤオコーと万代の財務内容の比較、
さらに将来の長期経営計画まで、
90分間の講義。
2期生にとっては、
実に贅沢な講義となった。
昼食をはさんで第3講義は、
下岡太市さん。
営業部門を統括する副社長。
下岡さんは、まず、
消費の変化から市場環境までを整理した。
そのうえで万代が採るべき営業戦略を、
丁寧に事細かに具体的に講義した。
下岡さんは、
社員やパート社員全員の、
名前と顔を覚えている。
そして能力や適性を見極めて、
人事を行う。
これが万代の人づくりの底辺にある。
だから最後に人づくり、商品づくり、
そして売場づくりの方針を説明したあと、
「人づくり」の大切さを強調した。
これこそが万代の長期経営計画の本質だ。
ときに笑いを誘った軽妙な語り口。
下岡さんらしい講義だった。
万代の経営戦略を、
管理部門と営業部門の両副社長が語る。
企業内大学の最も優れた特性である。
引き続いて第4・第5講義は私が担当。
経営戦略立案のための、
代表的な環境分析手法を説明する。
ピーター・ドラッカー、
ヘンリー・ミンツバーグ、
フィリップ・コトラー、
そしてジェイ・バーニーと、
マイケル・ポーター。
さらにW・チャン・キム&レネ・モボリュヌ。
マネジメントの大家たちの理論と、
そのフレームワークの使い方を、
2時間45分の集中講義。
Strategic Managementは、
理解したうえで使ってみて、
さらに試行錯誤しなければ意味がない。
だからわかりやすすぎることは、
不親切だし、危険ですらあるのだ。
3月からスタートした第2期も、
いよいよ佳境に入った。
11月にアメリカの流通を学ぶ。
何を学ぶのか。
Jet Lagなど何のその。
64歳の習近平総書記が、
中国共産党第19回党大会で、
3時間半の長い演説をしたというが、
65歳の結城義晴も4時間の講義ができる。
いつもより、いい出来栄えだったと思う。
最後に事務局の東尾里江さんが、
グループ分けと視察課題を提示。
人事部教育マネジャー。
2期生30名が新たに6班に分かれる。
そして3班ずつが、
松岡組と加藤組に分けられる。
統率するのは、この二人。
松岡俊行さん(左)と加藤健さん(右)。
松岡さんは第3運営部エリアマネジャー、
加藤さんは執行役員第4運営部エリアマネジャー。
これまた、くじ引き。
そして加藤組と松岡組が決まった。
11月のサンフランシスコ視察のあと、
12月にアクションプランの報告会が、
経営幹部の前で行われる。
それを評価し、総評し、
勝敗をつけ、表彰する。
審査員は加藤徹会長・理事長、
それに阿部秀行社長、
学長の結城義晴。
引率する私ももちろん、
東から西への時差ぼけを乗り越えて、
頑張りたい。
万代知識商人大学。
2017年第2期もいよいよ終盤。
阿部社長とともに、
幹部候補生たちの成長を祈念した。
それにしても、
むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをおもしろく
おもしろいことをまじめに
まじめなことをゆかいに
これです。
〈結城義晴〉