結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2017年11月23日(木曜日)

勤労感謝の日の「複眼&補助線」と「サービス業の生産性」

勤労感謝の日。
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「勤労に感謝する日」と、
安易にとらえてしまいそうだ。

「祝日法」第2条の趣旨は、
「勤労をたつとび、生産を祝い、
国民たがいに感謝しあう」

まことに玉虫色。

1948年(昭和23年)に公布・施行。

それ以前は「新嘗祭」(にいなめさい)。

飛鳥時代の皇極天皇の時代には、
神々に五穀の収穫を祝い、
収穫物に感謝する行事だった。

いわば収穫感謝祭。

アメリカのサンクスギビングデーと、
ほぼ趣旨は同じだった。

勤労感謝の日が制定された1948年、
日本は占領米軍の占領下にあった。

そのマッカーサーの占領軍は、
神道から発した新嘗祭を危険視し、
しかし新嘗祭の祝日は残すために、
Labor DayとThanksgiving Dayを折衷し、
「Labor Thanksgiving Day」を考案。

その和訳が「勤労感謝の日」。

だから米国9月第1月曜日のLabor Dayと、
11月第4木曜日のThanksgiving Dayが、
日本の「勤労感謝の日」の母親と父親だ。

まるで日本国憲法のようなもの。

しかし、「働く」ことに「感謝」するのは、
収穫物に感謝するよりも、
むしろ哲学的でいいと思う。

朝日新聞「折々のことば」
鷲田清一さん編著。

われわれは
確実に知ることも、
全然無知であることも
できない
(パスカル)

「私たちの存在はじつに中途半端」。

「世界を知ろうにも
世界はあまりに複雑で、
とてもその全体を
理解することはできない」

「だがまったく
知らないでいることもできない」

「だから世界を少しでも
正確に捉えたければ、
他人の考えによく耳を傾けて
複眼を得るか、
問題を解くための補助線を
一つでも多くもつことが必要となる」

実は鷲田さん、昨年も今日は、
パスカルの「パンセ」を引用している。

複眼をもつ。
あるいは補助線をもつ。

「勤労」と「感謝」の折衷。

その意味で複眼だし、
補助線のひとつではある。

日経新聞「大機小機」。
テーマは、
「サービス業の生産性」

「日本のサービス業は
米国のそれと比べ、
生産性が低いといわれる」
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このサービス業には、
小売業も含まれる。

さらに、この指摘が鋭い。
「日本のサービスの価格が安すぎることが、
低生産性の原因として、
指摘されることが多い」

「だが本来生産性は、
サービスの実質的価値を
比較すべきものであり、
価格の高低は無関係なはずだ」

じつにその通り。

「価格の高低が生産性の水準に
影響を与えるのであれば、
その『生産性』の測り方が間違っている」。

「生産性」は、
生産物を投入量で割って
計測する。

たとえ話は、自動車生産。
「生産台数を投入人員(マンアワー)で
割った数字が労働生産性だ」

「一定量の生産物(実質額)を、
より少ない資源投入で生産するほど
高い生産性になる」

そして、
「自動車価格や賃金率などの価格は
生産性に無関係である」

その通り。

「問題はサービスの生産量(特にその質)を
測ることが困難な点である」

「宅配便の生産性を
配達数量だけで測ると、
配達回数を減らして、
玄関先に放置するような米国の宅配便は
日本より生産性が高くなる」

「しかし宅配サービスの生産性は
配達個数だけでなく、
その確実性やダメージの少なさなどを
考慮する必要がある」

「質と量を勘案した生産数量指数を、
投入人員や設備の物量で割って
その生産性を計算すべきだ」

これもその通り。

「しかし生産性の国際比較では、
質的側面を無視することが多く、
高品質の日本のサービスの生産性が
見かけ上、低くなる」
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しかし小売業に関しては、
アメリカにもヨーロッパにも、
日本以上の「サービスの質」を、
創造する企業が出てきた。

「質の異なる財やサービスの
生産量を計算するためには、
品質を調整して、
生産数量を計算する必要がある」

これは業態間の生産性比較にも、
場合によっては企業間の比較にも、
当てはまる。

もちろん企業内で、
店ごとに部門ごとに比較するときには、
それぞれが提供するサービスの質を、
現場で観察しているはずだから、
間違いは少ないだろうが、
数字だけでそれを評価してはならない。

つまり生産性を、
複眼で見なければならない。
生産性に関する補助線の見方を、
持っていなければならない。

労働生産性や人時生産性至上主義は、
だからとても怖いのだ。
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日本独特の「勤労感謝の日」だから、
それを指摘しておこう。

最後に結城義晴著『メッセージ』より、
「働くこと」

「働くこと」への
深い理解が求められている。

働くことの中身。
働くことの実態。
働くことの動機。
働くことの目的。
そして働くことの喜び。

どんな環境の中で働くか。
どんな時間帯に働くか。
どんな制度の中で働くか。
どんな会社で働くか。
そこからどんな働き甲斐が
生まれてくるのか。

私たちは、
誰もが、
このことに対して、
自分なりの回答を
用意しておかねばならない。

それなくしては、
企業活動も、
組織運営も、
日常生活も、
まっとうできない。

経営者は従業員に、
上司は部下に、
会社はパートタイマーに、
明快な「働くこと」の
意味を示さねばならない。

そして従業員は経営者に、
部下は上司に、
パートタイマーは会社に、
同じように明快な「働くこと)の
意思を伝えねばならない。

「働くこと」を通じた意思疎通は、
「労働」への
深く、謙虚な
理解から
生み出されるのである。

〈結城義晴〉

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