世界中の株価が大幅下落。
今日6日の東京株式市場では、
日経平均株価が瞬間風速で、
1600円を超えるダウン。
大引けは1072円安の2万1610円。
値下がり銘柄数は2000を超えて、
ほぼ全面安となった。
昨日5日の米国ニューヨーク株式市場では、
ダウ平均株価も一時1600ドル近くの下落。
1ドル110円換算で17万6000円のダウン。
過去最大の下げ幅を記録。
終値は2万4345ドル75セントで、
前の週から1175ドル21セントの下落。
これも過去最大の下げ幅だった。
ドナルド・トランプ大統領が、
オハイオ州で演説し、
景気と株価の上昇は、
「自分の功績だ」と自慢した。
そのテレビ映像の下でテロップは、
過去最大の下げ幅のニュースを流した。
ヨーロッパの主要市場でも、
台湾、韓国、シンガポールや、
上海や香港市場でも、
軒並み株価下落の流れ。
このリスク回避のために、
東京外国為替市場では、
円買いが進んでほぼ全面高となった。
ドル・円相場は一時、
1ドル=108円台半ばまで下落した。
この株価下落の発端は、
アメリカの金利上昇にある。
先週金曜日の2月2日、
ニューヨーク市場で10年物国債利回りが、
一時、2.85%と上昇した。
まえにもこのブログで書いたが、
10年物国債利回りが長期金利指標となる。
日経新聞は一面トップで、
「適温経済の持続力が試されている」。
「適温経済」は、
「インフレを起こすほど過熱しすぎず、
不況に陥るほど冷え込みすぎてもいない、
緩やかな成長を維持した
適度な景気状況のこと」
『知恵蔵』の説明。
しかし「適温経済」の継続が、
すべてにわたっていいのかどうかは、
わからない。
適温経済が長く続くと、
金融市場にひずみが蓄積される。
米国連邦準備理事会(FRB)は、
これまで緩やかな利上げで、
「適温経済」を演出してきた。
それがアメリカの株高の要因の一つで、
景気の浮揚はトランプの貢献ではない。
日本のアベノミクスも同様に、
日銀の低金利政策におんぶにだっこ。
国家元首よりも中央銀行総裁のほうが、
株価にとっては大事だということになる。
さてさて。
今日は横浜商人舎オフィス。
夕方、リンゴジュースを飲んだ。
(株)義津屋から贈ってもらった。
ありがとう。
火曜日は日経電子版「経営者ブログ」
(株)IIJ会長の鈴木幸一さん。
日本のインターネットの草分け。
自分の行動パターンを振り返る。
「先走り、構想に溺れて、
無理に無理を重ねてしまう
行動パターンはなくなったのだが、
それでも、『ビジネスは後追いに限る』
といった行動をとることはできない」
「これだけ大きな技術革新であることが
分かっていても、IT分野については、
日本は、後追いに
終始している」
それは、わかる。
「日本の市場だけを考えるのであれば、
リスクを回避して、後追いを続けるほうが
賢明なのだということも
理にかなった行動様式なのかもしれない」
だが、「それだけでは、
なんだかなあという思いは消えない」
日本のスーパーマーケット業界に、
「自ら新幹線を開発する必要はない」との、
議論があったことは確かだ。
「われわれは『私鉄』だ。
それを安全に正確に運営していればいい」
そんな思考回路。
鈴木さんは日本のITに関しては、
それではいけないと繰り返す。
イスラエルのネタニヤフ首相の発言。
「将来の自動車産業の核となる国、
自動車産業を担い、
自動車大国となる国は、
イスラエルである」
現在のイスラエルには、
自動車大工場はない。
しかし「自動車の技術競争の核が、
内燃機関からITになる」
「コネクテッドカー(つながるクルマ)が、
視野に入ってくる時代では、
自動車産業を担う技術も、
ハードウエアの競争ではなく、
まさに、ITの基礎技術の競争になる」
「長いこと自動車産業で働いてきた人間は、
そこへの転換がどうしてもできない」
インテルは米国の半導体メーカーだが、
イスラエルに1万人以上の従業員を抱える。
つまりイスラエルの企業モービルアイを、
昨年8月に買収した。
買収総額は約150億ドル(1兆6500億円)。
イスラエルでは、
年間1000社もの企業が創業され、
100社程度が買収されていく。
すべてIT企業だ。
モービルアイのアモン・シャシュア。
共同創業者兼会長。
そのシャシュアが、
インテルの自動運転事業責任者となった。
そしてその自動運転関連技術は、
イスラエルを中心に展開していく。
リスクを回避して、
後追いを続けるだけでは、
「なんだかなあ」である。
鈴木さんのブログは最後に、
「老子」。
「為學日益 為道日損 損之又損
以至於無為 無為紫而無不為」
学を為すは日に益す。
道を為すは日に損ず。
之を損じて又損じ、
もって無為に至る。
無為にしてしかも
為さざるはなし。
〈老子道徳経の四十八章より〉
分かりやすい書き下し文は、
井筒俊彦著・古勝隆一訳。
「学問を追究する人は、
(知識)が日に日に増えていく。
〈道〉を追求する人は、
(知識が)日に日に減っていく」
「減らして、そして、
さらに減らしていけば、
しまいには無為の状態にいたるのだ。
無為の状態にいたったならば、
なされぬままのことは、何もない」
この後に続くのは、
「なすべきことはなにもない」
これを実践することで、
一つの帝国すら手に入る。
「なすべきことがある」にこだわれば、
一つの帝国を手に入れることは、
決してない。
「帝国を手に入れる」とは現代では、
事業を成功させるといった意味。
鈴木さんの述懐。
「何十年も、折に触れて
老子を読むことがある」
「無為の状態にいたったならば、
なされぬままのことは、何もない」
といった、謎のような言葉について、
「理解が及んだことはない」
だから鈴木さんにも、
「なすべきことが山のようにある」
「凡人には、あくせくしたまま
日々を過ごすほかないようだ」
謙虚だが、
私も同感。
ご承知のように私も、
ときどき「老子」を引用する。
老子は中国の春秋戦国時代の人。
諸子百家のうちの代表的な哲学者。
「道家」は老子を始祖とする思想。
私もいつも、
老子の「無為」に突き当たって、
自らを凡人となす以外になくなる。
現在の中国指導部にも、
老子の「道」を学んでほしいところだ。
もちろんトランプも安倍晋三も、
文字通り、まだまだ、
「帝国を手に入れる」ことはできない。
〈結城義晴〉