結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2018年03月02日(金曜日)

将棋界の一番長い日と「AI時代に望まれるサービスの仕事」

今日は、「将棋界の一番長い日」。
名人挑戦権を争うA級順位戦の最終日。

11回戦の5局の会場は、
静岡市葵区の料亭「浮月楼」。

今期はまれに見る混戦で、
10戦して7勝の棋士がいない。

超のつく天才たちの最後の闘いは、
深夜まで続く。
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肝心の名人挑戦者を決める一局は、
久保利明王将と深浦康市九段戦。

私は仕事しながら、
全5局の棋譜を深夜まで追い続けた。

決着は明日になってしまう。

そうしたら、今夜は満月だった。
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AIが世界を覆いつくすかに見える現在、
将棋や囲碁、チェスなどの天才たちは、
AIにない人間らしい闘いを見せてくれる。
すべての人間を勇気づけてくれる。

今日の日経新聞朝刊、
「グローバルオピニオン」
「AI時代に望まれる仕事は」
クリストファー・ピサリデス教授。
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス。
2010年ノーベル経済学賞受賞。
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人工知能やロボットなどの新技術が、
雇用を破壊するのではないか。

それに対して、
「私は基本的に、楽観している」
ありがたい。

天才棋士たちを見ていると、
それも実感できる気がする。

「新技術によってなくなる仕事は
もちろん多くあるが、
なくなる分を上回るだけの
雇用を生み出す力が、
経済には備わっていると
見ているからだ」

楽観主義者か。
しかしノーベル経済学者。
理論的であるはずだ。

その課題は何か。
「仕事を失った人びとが良い仕事を
なるべく早くみつけられるようにする
環境づくりだろう」

そこで政府がやるべきこと。
「技能習得の訓練は、
公的部門でやるよりも、
実際に必要な仕事のニーズに合わせて
民間部門で実施するほうが効果的だ」

私もそう思う。

さらに重要なこと。
「今後増えるのは人が人に接したり、
感動を与えたりするような
サービス分野の需要」

AI時代には同時に、
サービス業の需要が
増える。

「自動化の一層の進展などで
製造業や一般の事務作業の生産性は
一段と高まり、
経済や生活水準を全体として
押し上げるのに貢献するだろう」

「しかし、雇用を創出する力という点では、
こうした分野にあまり期待できない」

その半面、
「人びとはモノよりも
娯楽や教育、健康、介護といった分野に
カネを使うようになる」

よく言われることだ。

「もちろん、
サービス分野の職といっても
低技能のものは
新たな雇用をうみ出さないし、
賃金も低い水準にとどまる」

悪いけれど「清掃などの仕事」は、
「機械にとって代わられる可能性がある」

「だが、質の高いサービスを提供する仕事は
簡単には機械に置き換えられない」

「質の高いサービスを提供する仕事」

ここでいう「サービス」には、
4つの特性がある。
フィリップ・コトラーの整理。

第1は、無形性。
形のないもの。
第2は、非分離性。
その生産と消費は同時に行われ、
分離することができない。
第3は、変動性。
提供者、時間、場所によって変わる。
第4に、即時性。
すぐに消滅する。

ピサリデス教授は、
重要なことを言う。
「創造力を必要とする仕事はもちろんだが、
人の気持ちを理解する社会的な能力が
必要な仕事なども同じだ」

「人の気持ちを理解する社会的な能力」

例えば介護の仕事。
例えば接客の仕事。
例えば教育の仕事。
例えばマネジメントの仕事。

だから逆に無人レジなどは、
人間らしいサービスがないから、
よろしくないことになる。

しかし悩ましいこともある。
「サービス分野の質の向上は
数字でとらえにくいことである」

「人びとがサービスに満足し、
幸せを感じても、
直接は生産性の上昇に結びつかない。
国内総生産(GDP)統計にも反映されない」

だから求められるのは、
「介護からホテル、レストラン業まで、
サービス分野の仕事が社会のなかで
もっと評価されるようになることだ」

その通り。

AIの時代はサービス業の時代なのだ。

「質の向上に、
対価が払われるようになり、
賃金が対価に合わせて
増えるのが望ましい」

さらに、サービス時代には、
「GDPとは異なる物差しを持つこと」

GDPは、
市場で売買された価値しか測らない。

そして「AIなどの技術革新の活用を、
ためらうようなことがあってはならない」

それは、
「経済の成長を鈍らせ、
かえって雇用の創出を
遅らせることになるからだ」

AIと人間のサービスは、
反対のように思える。

デジタルとアナログ。

しかし、デジタル時代だからこそ、
アナログが貴重なものになる。

残念ながら日本の経済学者に、
ノーベル賞受賞者はいない。
ピサリデス教授の見解はうれしい。

最後は3日連続で今日も、
ウィンストン・チャーチル卿の言葉。
index
A pessimist sees the difficulty in every opportunity;
an optimist sees the opportunity in every difficulty.
悲観主義者は、すべての機会の中に難題を見つけ出す。
楽観主義者は、あらゆる問題の中に機会を見い出す。

ピサリデス教授は、
チャーチル卿と同じオプティミストだ。
もちろん私も。

〈結城義晴〉

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