猫の目で見る博物誌――。
シロツメクサ、車軸草。
クローバー。
いろんな名前がある。
普通の花です。
シロツメクサ(白詰草)は、
マメ科シャジクソウ属の多年草。
英語でシロツメクサは、
White Clover。
俗称は「クローバー」。
和名では「車軸草」ともいう。
学名はTrifolium repens。
ラテン語の「tres」は3のこと、
そこから「Tri」となった。
一方、「folium」は「葉」。
つまり「三つ葉」という意味。
江戸時代の1846年(弘化3年)に、
オランダからガラス器が献上された。
その梱包はツメクサの詰め物だった。
そこで和名では、
「詰草」と呼ばれるようになった。
原産地はヨーロッパ。
地を這うように茎が長く伸びる。
葉は小さな三葉。
まれに四葉があって、
「四葉のクローバー」は、
幸運をもたらすという。
しかし五葉、七葉のものまである。
花が咲くのは春から晩夏まで。
高さは5㎝から20㎝。
花を支える茎を花柄(かへい)というが、
その花柄の先に1cmほどの花を咲かせる。
小さな蝶形の花が密集して、
球状の花序をつくる。
花序は花の配列のこと。
ツメクサの花の色は、
白、黄色、ピンク、紅色などだが、
一番多い白いツメクサが、
シロツメクサ、White Clover。
日本では、明治以降に、
家畜の飼料用として導入された。
それが野生化した。
つまり「帰化植物」。
マメ科植物には根粒菌がある。
この根粒菌が、
空気中の窒素を吸って成長する。
そして土に窒素養分を供給する。
クローバーやレンゲはそのマメ科植物。
反対に普通の植物は、
土の中から窒素を吸収する。
だから普通の植物をつくる田畑は、
窒素分がなくなる。
そこで窒素肥料を撒いて、
補給しなければならなくなる。
シロツメクサは逆に窒素を供給する。
だから昔から、秋には、
クローバーやレンゲの種を撒いて、
春にこのクローバーやレンゲを、
肥料として使う。
現在は、地球を豊かにする植物として、
緑化資材に用いられる。
つまり「緑肥植物」。
今日はアースデイ(Earth Day)。
「地球の日」にクローバーはよく似合う。
またクローバーは蜜源(みつげん)植物で、
ミツバチが蜂蜜をつくるために、
蜜を集める植物である。
クローバーからの蜂蜜は、
世界で最も生産量が多い。
シロツメクサ、クローバー、
普通の草だが普通とは違う。
普通の三つ葉でも、
クローバーは人間に、
幸せを与えてくれる。
シロツメクサも同じだ。
夕映えの白詰草を
編みゐたり
〈長谷川櫂「果実」より〉
シロツメクサの首飾り。
レンゲの首飾り。
道にして
人に踏まるるクローバーの
伸びがてにして
花の咲きをり
〈高田浪吉 『川波』より〉
道に生えていて、
人に踏まれるようなクローバー。
伸びにくそうにしながらも、
花を咲かせている。
シロツメクサ、クローバー。
四葉のクローバーでなくても、
幸せを持ってくる。
ありがとう。
(『猫の目博物誌』〈未刊〉より by yuuki)