月刊商人舎5月号、本日発刊!!
特集タイトルは、
「レジレス化」の夢と現実
Check-Out Serviceの本質を見いだせ!!
“amazon go”の登場に端を発した、
世界の小売業のレジレス化の波。
その影響とその後の現象を、
つぶさに表現しました。
商人舎magazineの目次をご覧ください。
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月刊商人舎5月号の[Message of May]
削ること・省くことの勇気をもて!
セルフサービスは、
ベターサービスである。
無駄な接客や人的な説明がないことが、
むしろ、より良いサービスとなる。
1916年のアメリカ。
セルフサービス方式は、
クラレンス・サンダースによって誕生した。
「ピグリー・ウィグリー」という店だった。
何かを削ること、
何かを省くこと。
それは大抵の場合、
成果に結びつくことが多い。
しかし削り過ぎたり、
省き過ぎたりすると、
今度は逆に成果は半減する。
いや完全に価値が喪失する場合すらある。
amazon goによって、
衝撃的にお目見えした「レジレス化」は、
一方で人件費を削減することに貢献するが
他方で無形のサービスを削ぎ取ってしまう。
1979年に登場したウォークマンは、
小型テープレコーダーの録音機能を省き
再生機能に特化した新製品だった。
それは機能を省くことで特別の価値を生んだ。
「レジレス化」のコンセプトにも、
それによる特別な価値の創出が必須だ。
その展望がないレジレス化は、
単なる人手不足対策でしかない。
何かを削ること、
何かを省くこと。
勇気がなければできないし、
思考力とビジョンがなければ成しえない。
セルフサービスは、
ベターサービスである。
そしてレジレスサービスも、
ベターサービスでなければならない。
〈結城義晴〉
さて、テキサス州ダラス。
その2日目は、朝から講義。
すでに事前講義を2時間やっている。
そのうえで、アメリカにやってきて、
競争の原理の変貌や、
そのときの戦略論を解説。
難しいことを易しく、
易しいことを面白く。
面白いことをより深く。
それがわたしの講義の基本思想。
全米小売業の最新動向を整理し、
クリティカルマスと範囲の経済、
寡占、三占、複占と、
フィリップ・コトラーの4つの競争原理。
それらに私のロジックを加えて、
どう戦略を組み立てるかを語った。
米国商業統計に見る総合ストアの分類の本質、
日本の総合スーパーの戦略の在り方。
ウォルマートやクローガー、
コストコやAmazonが、
それをどう実践しているか、
ホールフーズやトレーダー・ジョーが、
その中でどんな仕事をしているか。
2時間たっぷりの講義時間は、
あっという間に終わった。
それから今日は怒涛の店舗視察、
インタビュー、調査・観察、
そしてショッピング。
ウォルマート・マーケット。
ウォルマートのスーパーマーケットで、
ネイバーフッドマーケットの店名から変更中。
入り口に「ピック・アップ」の表示と、
フリーWi-Fiの掲示。
オンラインで注文して購買し、
この店の第1番レジで受け取る。
天井はスケルトン、
1200坪の店だが、
広々とした感じがする。
右手にサービスデリの対面コーナー。
ウォルマートならば、どんな店でも、
必ず、このサービスデリはある。
Texans come here for
Low Prices。
ロールバックの嵐となっている。
青果部門の鮮度感は飛躍的に上がっている。
鮮度を保障して、
いつでもだれでも理由なしに、
返金と返品を受け付ける。
黄色と緑の美しい陳列。
黄色のレモンのなかに、
オレンジが2個アクセントで配されている。
店舗奥主通路にはバルーンが施され、
エンドのトップにはロールバックが続く。
エンドゴンドラの左サイドには、
LOW PRICEの文字。
トップパネルは2枚が、
三角型でロールバック。
バルーンをつけてロールバック。
あとでわかったことだが、
今日からダラス地区のクローガーが、
新価格プロモーションを展開する。
それへの対抗策が、
このロールバックの嵐だった。
母の日向けエンドには、
「Celebrate Mom」
ウォルマート・マーケットのカラーは、
黄緑色だが、レジにもその色が使われる。
店頭に掲示があったオンライン販売の、
受け取り場所はここ。
レジスター1番には、
オレンジ色のカバーがかけられて、
とても目立つ。
ウォルマート・コムに、
どれだけ期待が寄せられ、
どれだけ力が入れられているかがわかる。
次にクローガー。
その「フレッシュフェア」。
入り口の空間には、
母の日のプレゼンテーション。
素晴らしい青果部門と惣菜部門。
ナチュラルのゴンドラアイルは、
成長率3割で伸びている。
そして売場のいたるところに、
「Lower Prices」の黄色のパネルやPOP。
ウォルマートはそれへの対抗策を講じたのだ。
ジェシー・フロアーズ店長は、
17歳でこの業界に入った。
アルバートソン、ウィンデキシーを経て、
クローガーに入社。
真剣に聞き入る第15団の面々。
23年間働いて、今は店長だが、
やがてエリアマネジャーになって、
15店舗くらいを統括したいという。
30分以上も丁寧に答えてくれて、
団員にはほんとうに勉強になった。
今日から始まるのが、
「SAY HELLO TO LOWER PRICES」
青果部門マネジャーのカルロスさん。
「5人でプロデュース部門を動かしている」
ジェシー店長を囲んで、
全員写真。
その後、この店のデリを買って、
ランチタイム。
さらにクローガーを訪問。
こちらはマーケットプレイス。
非食品強化の大型店。
入り口には花の売場があって、
顧客を出迎える。
そして自慢の青果部門。
店舗左サイドは、デリ、ベーカリー。
チーズはショップ形式で、
ニューヨークのチーズを提案。
精肉&シーフードは、
ひとつの部門である。
「Hi, I’m your LOW PRICE」
巨大な非食品強化型スーパーマーケット。
その奥主通路も長い。
冷蔵ケースにシンプルトゥルース。
プライベートブランドの牛乳と卵。
もちろんオーガニック商品だ。
店舗右サイドのアパレル部門。
ファッション・エッセンシャル。
かつては家具を非食品の柱にした。
しかしそれは失敗だとわかった。
そこでアパレルに切り替えて実験中。
しかしうまくは、いっていない。
ファーマシーとHBCの売場は見事。
ウォルマート・マーケット、
クローガー。
両雄がマーケットリーダーと、
マーケットチャレンジャー。
そのためにマルチフォーマット戦略を採る。
それ以外のニッチャーが、
ホールフーズマーケット。
店頭にはレンタサイクルが。
入り口付近の花売場。
やはり母の日は花でお祝いする。
しかし青果部門はちょっと力が落ちた。
残念なことだが。
その青果部門の中に精肉の平ケース。
オーガニックのパック野菜。
バーベキュー売場から、
精肉対面コーナーへ。
「BUTCHER」と名付けられた、精肉対面売場。
惣菜のパック商品は、
リーチインケースで縦陳列。
商品のフェースがこちらを向いている。
そしてセルフデリ。
デリの味も落ちてはいない。
中2階のイートインスペースから、
下の売場とレジを望む。
グロサリー部門は広大である。
午前中の訪問なので、
ちょっと差し引かねばならないが、
それでもホールフーズは、
全体に客数が落ちている。
その理由の一つは、
マーケット全体がオーガニックを品揃えし、
ホールフーズの独自性が薄れたこと。
さらにAmazon傘下に入って、
ホールフーズの商品を、
オンラインで買うことができるようになった。
だから店舗への客足が落ちた。
そこで現場の人員を減らした。
するとまた客足が引いていく。
何とも悩ましい問題だ。
一方のトレーダー・ジョー。
入り口に母の日プレゼンテーション。
こんなパネル。
右手の花売場は華やか。
エンド陳列はいつも、
どの店もきちんとしている。
デモンストレーションのコーナー。
そして乳製品売場。
冷蔵ケースのエンドでは、
顧客のダイエットに協力する企画。
トレーダー・ジョーの大きな変化。
それがこのエンド。
自慢のプライベートワイン。
「チャールズ・ショー」に、
新アイテムが加わった。
それが3ドル99セントの3アイテム。
その結果、1ドル99、
2ドル99と3ドル99の商品ラインとなった。
それはオーガニック・チャールズショー。
ワイン売場の真ん中にも、
島陳列で展開。
オーガニック原材料が7割使われた商品。
大ヒット間違いなしだ。
スプラウツ・ファーマーズマーケット。
こちらも絶好調。
店舗の真ん中にオーガニック野菜・果物。
ナチュラル&オーガニック。
奥に向かってひな壇式の売場。
今日のオーガニック商品は、
191アイテム。
奥壁面のボリューム陳列。
右手にはサンドイッチのデリ売場。
ボアーズ・ヘッドを入れている。
その隣にサービスデリの鮮魚・精肉売場。
店舗中央にバルク売場。
そしてバイタミン売場。
トレーダー・ジョーが好調なら、
スプラウツは絶好調。
レジの後ろにコンセプトが謳われている。
「Healthy Living For Less」
健康な生活をより安く。
続いてアルディ。
1万平方フィートの小型店。
品揃えを限定して1300SKU。
そしてプライベートブランド比率95%。
アルディもオーガニックを強調している。
さらにLOCALを取り入れ始めた。
テキサス州の商品をアピール。
牛乳は1ドル99セント。
相変わらずレジにはスタッフが1人だけ。
アルディの小型店は、
これからも伸びる。
そしてダラーストアの雄、
ダラーゼネラル。
1ドルを中心に、
10ドルなどの価格帯の商品も扱う。
軽衣料もとにかく安い。
ジャンクフード販売も何のその。
そして人員は店に2人。
いくら客が並んでもチェッカーは1人。
それでもダラーゼネラルは、
1万4609店舗で年商234億7100万ドル、
2兆3471億円の大チェーンだ。
最後の最後は、
トータルワイン。
全米20州に176店舗を展開するリカーショップ。
世界中から仕入れた8000種のワイン。
3000種のスピリット、2500種のビール。
妥当な価格の商品から、
高額で希少なロングテール商品まで、
幅広くて深い品揃えが特徴。
種類が多いからテースティングして、
味を知ってもらわねばならない。
ワインスクールから、
地域コミュニティの集合場所まで、
さまざまに活用できる部屋。
レジは9台でスーパーマーケット並みだ。
平和堂第19団のダラス研修2日目。
とびきりの企業のとびきりの店舗を訪れ、
見て、聞いて、感じて、買って、
収穫は大きかった。
それにしても、
トレーダー・ジョーの新ワイン。
オーガニックチャールズショー。
バカ売れするに違いない。
(つづきます)
〈結城義晴〉